【閑話】パーソナル・アシスタントの一里塚: ナリッジナビゲータ

 1987年、Appleは当時のCEOジョン・スカリーが作成した著書をもとに、自社が目指すパーソナルコンピュータの未来を示すプロモーションビデオ「ナリッジナビゲータ(KnowledgeNavigator)」を公開した。筆者がこのビデオを観たのは、1992年ごろで、こんな時代が近づいているとワクワクしたのを覚えている。Appleが提供したHyperCardやMachintalk(音声合成)はその布石だったし、その後のiPadやSiriにつながる技術や製品を着実に実現してきた。




 開くとすぐに起動するノートサイズのパソコン、口パクする蝶ネクタイをつけたアシスタントが常駐し、音声認識で要望を聞き、流暢な音声合成で応答、音声とタッチパネルで操作する。ビデオ中で、大学教授のマイケル・ブラッドフォードが、友人のジル・ギルバート教授とアシスタントを介してコミュニケーションしている。


●「ナリッジナビゲータ」から抜粋


登場人物:
 教授: マイケル・ブラッドフォード教授
 KN: ナリッジナビゲータ・アシスタント
 ジル: ジル・ギルバート教授

教授:「前期からの講義ノートを見せてくれ」
教授:「まだ読んでいない最近の論文を出してくれ」
KN:「専門誌からですか?」

KN:多くの論文の中から、友人の論文をレコメンドして自動的に要約を読み上げる。

教授:「ジルに連絡してくれ」
KN:「連絡しましたが、ただいま席をはずしています」
  「先生から電話があったというメッセージは残しておきました」

教授:「フレゼン博士とかいった人が、5年ほど前、ジルの論文に反対していた論文を発表していたと思ったが」
KN:「~大学のフレミング博士です」と言って、該当する論文を紹介する。
その後、教授は論文中のデータ部分の表示を依頼

ブラジルの過去30年間の森林伐採率のマップ動画表示を依頼し、
ジルが、過去20年間のサハラ地域のシミュレーションを見せる。
教授が両方のデータをリンクして、その変化を同期して動画表示する。
さらに森林伐採量を年間10万エーカーに減らして影響を確認する。

KN:「先生のお話中にお母さんから「バースデーケーキを忘れずに』という電話がありました。」


●ナリッジナビゲータの前提となる技術


1)アシスタントとの対話による情報検索:①④

 アシスタントと対話しながら、情報を探し絞り込む。

 バックにある技術:
 ・連続する対話での情報絞込
 ・すでにアクセスした情報を把握
 ・曖昧検索
 ・情報の要約との情報マッチング

 スマートスピーカーには、まだこのレベルの絞り込みができる機能はない。有料アドオンでいいのでぜひ提供してもらいたいものだ。できれば音声で読み上げるのではなく、iPadやPCと連動して情報を表示もしてもらいたい。

2)情報のレコメンド:②

 いくつもある論文の中から、興味があるだろうものを自動的にレコメンドする。

 バックにある技術:
 過去に教授が読んだ論文を記憶して、同じジャンルの論文に絞り込み、以下の優先順でレコメンドする。
 ・過去に注目していた著者が書いた最近の論文をレコメンド
 ・過去に注目していた論文を読んでいる人達が最近注目した論文

3)データ表示とデータ比較:④⑤

 論文に記述されているグラフから元となるデータを得るのは難題だ。Webを自在にあやつる現代でも、論文は「紙」メディアに依存しているからだ。
 さらに、異なる場所で作成されたデータ群と、誰かが作成したシミュレーションを連結したり値を変えてみたりということは、技術的には難しくないにもかかわらずなかなか浸透しない。
 複数の学会が協力して、論文や公開情報のデータのフォーマットを統一する有用性に気づくことだけで実現できるはずだ。

 バックにある技術:
  ・データフォーマットの標準化 (特に論文、技術情報)
  ・ウェブなどでの標準フォーマット・データの連係表示機能

4)アシスタントを仲介するコミュニケーション:③⑥

 ヒトとヒトのコミュニケーションをアシスタントが仲介する方法は、2つ考えられる。

 バックにある技術:
 ・アシスタントどうしでのメッセージ交換
  ③でアシスタントは、ジルのアシスタントに向けて自動的に、「不在だったので電話をかけなおして欲しい」旨を伝言する。ヒトが伝言メッセージを残すコストを省略できる。

 ・第三者の音声を理解し、要約して伝える
  ⑥でアシスタントは、母親からの電話にバックグラウンドで応答、音声認識、要約を記憶し、教授の時間が空いたときに伝える。教授は、母親のメッセージを直接聞くことなく、アシスタントからの要約だけ聞くことができる。

  アシスタントによるコミュニケーションの仲介は、星新一の「肩の上の秘書」で登場する
 インコ・ アシスタントが秀逸だ[1]。時間の無駄遣いに本人たちが気づいていないのがオチだ。
  営業:「~社のものだ。電気グモを買え」
  営業インコ:(商品の丁寧な長い説明)
  顧客インコ:「自動式の孫の手を買え、と言っています」
  顧客:「いらないわ」
  顧客インコ:「すばらしい~、とてもそんな高級品をそなえるほどの余裕が、ございませんもの」

 論文の検索でもそうだが、ナリッジナビゲータ・アシスタントはしばしば先読みして行動し、バックグラウンドで音声応対もこなす。ヒトは、マルチタスクでジョブをこなすことはできないが、アシスタントがサポートしてくれれば、ある程度マルチタスクを扱えるようになるだろう

 SiriやAlexaは、まだパーソナル・アシスタントの入り口でしかない。今後はヒトの時間をいかに圧縮できるかが課題であり、「ナリッジナビゲータ」は今後もその一里塚を示し、向かうべき方向をナビゲートするだろう。

参考書籍:
[1] 星新一(1971), "ボッコちゃん", 新潮文庫

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ミラーワールドをけん引するメディア:スマートグラス

 本節では、次節で「未来を読み解く」ためのベースとして、各企業などで計画されている未来について紹介する。

4.1 計画されている未来のコンセプト
実世界と虚像が共進化する世界:ミラーワールド
計画されている未来サービス
ミラーワールドをけん引するメディア:スマートグラス

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 未来の変化は、電話、ラジオ、TV、コンピュータ、インターネット、iPhoneがそうであったように、時代を変えるインパクトを持ったメディアとヒトとの共進化が引き金となる。当初は、ごくわずかな利用者しか注目せず、周囲のほとんどの人たちにはなぜそれを欲しがるのか理解できない。ところが一旦普及すると、手足と同じように手放せない存在となる

 そして、

      「未来を変えるヒントは必ず今ここにある」。


 バーチャル世界と実世界を繋げるメディアとして、「今ここにある」のメディアはAR・VR機能を備えたメガネ、スマートグラス(AR/VRメガネ)だ。スマートグラスを、iPhoneのように常備するようになったとき、時代が大きく動き出す。

スマートグラスnorth-focal
          Googleが買収を決めたNorth社のFocals
    (https://www.digitaltrends.com/smartglasses-reviews/north-focals-review/#/6)


●iPhoneの振り返り


○iPhoneが使われるようになるまで


 我々は、すでに忘れてしまっているが、iPhoneの発売から数年間は一部のマニアのデバイスであり、大多数がスマホを使いたいとは考えていなかった。iPhoneにつながる携帯メディアの略歴をふりかえってみよう。

・情報端末を持って歩きたい: ノートPC (東芝DynaBook, 1989年)
・いつでもどこでもコミュニケーション: 携帯電話(DoCoMo設立, 1991年)
・手帳代わりのメモや手帳: 電子手帳(ZAURUS, 1994年)

 筆者にとって思いついたアイデアを移動中に書き留めたいというノートPCへの思いは強く、1986年には7.7kgほどのMac Plusを専用リュックに入れて移動していた。仕事でThinkPadを使うようになったのは、1997年ごろからだ。
 携帯電話は、無線通話だけでなくi-modeによる情報検索(1999年)、写メ(2002年)、GPS(2007年に搭載義務化)を合わせた統合携帯マシンとなった。方向音痴の筆者にとって、GPSはまさに手放せない存在だ。
 電子手帳の歴史は古いが、手帳として欲しいと思ったのはappleのnewton(1993年)からであり、初めて手にしたのはZAURUS(1994年)からだった。
 携帯音楽はウォークマン(1979年)がルーツであり、iPod(2001年)、iPod touchとiPhone(2007年)へと至る。iPodの成功がなければiPhoneが生まれることはなかったかもしれない。
 さらに、最近気軽に使われているTV電話(ビデオ通話)は、「2001年宇宙の旅(1958年)」で強烈な印象を残し、1970年の万国博覧会で多くの人たちが体験したが、電話会社が何度もトライするも普及のきざしはいっさいなかったのだ。

○iPhoneを使うきっかけ


 筆者と妻を例に、iPhoneを使うきっかけを例示してみよう。

■筆者(2009年、iPhoneが日本に上陸した翌年)
 電話、メールやGPS地図は携帯で十分だったし、重くなる、お財布携帯が使えないというデメリットがあったが、何よりWebを今ここで利用できること、電子手帳として使え、沢山あるCDをいっきに整理できる総合端末を持ち歩けるというのが魅力だった。

■妻(2014年)
 このころからスマホが一般層に広がり、従来の携帯を淘汰し始める。妻の初期のモチベーションは、なんといっても娘とLineができること。2020年からApple Watchも使いこなしている。

 新しいメディアを使うきっかけは様々だが、そこから思わぬ世界に牽引していく。スマホの普及は、人々の生活を一変させたのだ。


●スマートグラス(AR・VRグラス)の

ブレークスルーを考える


 2013年にGoogleグラスが開発者用に発売されてから、消費者向けの発売は未定のままだ。現在ARグラスが苦戦してい様子は、電子手帳のそれを想起させる。

 障壁となっているのは、メガネをかけているだけで撮影できてしまうプライバシー問題だが、現在のスマホのように撮影時には音を出すなどいずれ突破できるだろう。大多数が必要だと思っていないというのは、たいした問題ではない。

 マニアが使う初期段階では、Apple Watchの需要を取り込み、スマホと連携できるタイプをAppleやGoogleが発売する時がきっかけとなる。重量は、今のメガネと変わらず、必要な時にメガネにオーバーレイして表示する。

スマートグラスの初期スペック:
 ・AR/VR表示
 ・ジョギング中の健康情報AR表示などApple Watchの拡張機能を搭載し、音楽を聴くことができる
 ・現在位置を地図ARで確認、方角を矢印で表示する
 ・全国の建物や観光地のAR情報と、ポケGOのようなゲーム、室内の家電やスマートスピーカとの連動をキラーアプリとして標準搭載する

 すでにスマートリングが発売されているので、軽量化に課題はない。

スマートリング機能:
 ・スマホの着信通知の取得
 ・通話、音声アシスタント
 ・スマホの操作
 ・健康管理機能(心拍数、体温、睡眠段階、呼吸数など)
 ・キャッシュレス決済
 ・鍵の開閉

 さらに大きなブレークスルーとなるのは、近視・乱視・遠視、ブルーライトカット、サングラスといったメガネ機能をソフトウェアで自由に変更・調節できるうようになる時だ。網膜照射レーザーにも期待したい。  


●今考えられているバーチャル世界


 バーチャル応用サービスは、電脳コイル、マイノリティ・リポート、アイアンマン、レディ・プレイヤー1のようなSF世界を目指す。専門分野では、AR/VRゴーグルが先行して利用される。

電脳コイルNetflix
          ARグラス電脳コイル(Netflixより)
          (https://www.netflix.com/jp/title/81299264)

・屋内でのAR/VRゲーム、eスポーツが牽引し、
・屋外:
 - 建物、バス停、景色に重ねてAR情報と広告を表示
 - ジョギング中にコース、心拍数や代謝、歩数や距離を確認
・医療:
 - バーチャル空間上での創薬、スクリーニング
 - 手術中にホログラムなどサポート情報を表示
・研究、教育:
 - バーチャル実験、シミュレーション
 - 病院、家からの遠隔通学
・ディスプレイ:
 バーチャル空間上でTV、映画、PCディスプレイ、書籍を表示
・体験、冒険:
 - 旅行、家具配置、ファッション・化粧品の試用
 - 宇宙空間、深海、秘境を探検
・生体機能拡張:
 - 顕微鏡、望遠鏡、超高速、超低速、俯瞰
・技術者育成:
 - 習熟者による新人教育
・遠隔オフィス:
 - 3次元TV会議、多地点オフィス連結


●クリティカルマスを突破すると、

 別次元の使い方が創造される


 従来なかったメディアの登場は、人とメディアの共進化により、人々の生活を考えてもいなかった方向に牽引し、世界中の時空間距離をいっきに圧縮、ゼロ距離社会を誕生させる。
 例えば、皆が見ている映像をつなげ合わせて、リアルタイムの全方位3D空間をつくり、高速3Dストリートビューで実際に歩いているように海外を散歩できる。そのまま、店に入って現地価格で購入できる。今見ている景色の夜景や、紅葉を観るタイムシフトも可能となる。
 全世界中のすれ違う人と、自動翻訳で会話もできる。そんな度胸がない人に向けて、Lineのようにショートメッセージでの会話。その場所で行ったパフォーマンスを、設置して、世界中で共有する動画メッセージなど新しいコミュニケーションが次々と誕生する。

 スマートグラスの普及は、デジタルツインと実世界をつなげ、スマートグラスのバーチャル・ネットワークが新しい時代のインフラとなり、その上に新たなメタコミュニケーション・ネットワークを複合的に構築してゆくこととなる。ヒトが瞬時にそこに存在できる、ゼロ距離社会が誕生する。




参考書籍:
[1] ケヴィン・ケリー(2019), "Mirror World :デジタルツインへようこそ", 松島倫明訳, Wired, Vol.33
 参考:https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform/
[2] 川口信明(2020), "2060 未来創造の白地図 :人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる", 技術評論社

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計画されている未来サービス

 本節では、次節で「未来を読み解く」ためのベースとして、各企業などで計画されている未来について紹介する。

4.1 計画されている未来のコンセプト
実世界と虚像が共進化する世界:ミラーワールド
計画されている未来サービス
ミラーワールドをけん引するメディア:スマートグラス

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 ヒト、クルマ、ロボット、都市、工場、家、家電、家具、産業(交通・クルマ、輸送・物流、金融、製造、医療、不動産・建設、小売、エネルギー、農林水産業)がミラーワールドに組み込まれていく。計画されている未来サービスの例を示し、それがもたらす変化を概観する。

ミラーワールド小2

         ミラーワールドとサービスネットワーク


●スマートシティ


 スマートシティはトヨタが静岡で実験都市を建設するなど、すでに具体化が進みつつある。今、スマートシティは人流や交通流をデジタル化し、サービスネットワークにフィードバックして動的適応し続ける未来サービスの提供を目指す。



         Toyota: Woven Cityイメージビデオ



○人流・交通流をリアルタイムにフィードバックする


 都市の建物や道路の上でヒト、クルマ、ロボットが移動し、ヒトの購入、観覧などの行動が常にモニタリングされる。リアルタイムの移動・行動、環境変化を把握し、次の移動先を予測して、店舗、ヒト、モノにフィードバックする。

街:
・熱環境変化と人流に合わせて、快適性(風、日陰、放水など)をコントロール

店舗:
・冷暖房の効率化
・顧客の誘導、接客準備、商品のレコメンド
・店舗への「いいね!」、需要予測

ヒト:
・ウェアラブルデバイスとの連携で、ヒトの興味や体調似合わせて、店舗紹介、喫茶店での休息、自販機、図書館、涼しい場所などをレコメンド

クルマ:
・ヒト、クルマの流量に合わせて、信号制御、制限速度を動的に変更
・イベント地域、車線数、車道と歩道を動的に変更

広告:
・デジタルサイネージ、掲示板での広告・情報提供

○環境情報をもとに快適性をコントロールする


・街の環境情報(をもとに): 大気質、CO2排出量、熱環境(土地の機構、気温、湿度、気流、熱放射、地表面温度など)
・快適性コントロール: 風、日陰、放水、植物・断熱材・熱伝導などを設置・制御
・交通制御: 交通流の制限、迂回路の案内

○移動手段を連携する


・自宅から目的地までの移動手段をつなげる
 無人バス・タクシー、シェアリングカー、レンタカー、既存の交通手段を連携・連動して、自宅付近に呼び出し、目的地まで効率の良い移動を提案、予約 
⇒クルマの個人所有を減少

○都市情報把握、シミュレーションにより都市をマネジメントする


・生活と都市環境での人流、交通流を観測し都市計画、観光戦略に反映
・物流の効率化
 

○災害に備える


・災害対策の事前シミュレーション
・災害時の動的状況をフィードバックし、避難誘導

○複数の都市で分業する


 隣接する異質な都市インタフェースの正規化・標準化によりネットワーク接続し、生活、教育、仕事、娯楽、研究を連携

分業都市の例:
・コンパクトシティ(行政や学校も含めた生活環境をコンパクトに近接)
・研究、ベンチャー企業などのクリエイティブ・クラスター
・巨大生産拠点
・自然や季候など快適性を重視した都市
・娯楽・テーマパーク など


●スマートファーム


 スマートファームは、労働力をロボットに代え、環境情報や農作物・畜産物の状況をリアルタイムに把握し、農作業にフィードバックする遠隔管理システムを構築しつつある。さらに、作物の育成から宅配までの一貫したサプライチェーン・コントロールを目指す。

○大規模植物工場をロボットで遠隔運用する


・ネットワークでつながりあった規格化された屋内外ロボット工場でプロのノウハウと育成データを分析・共用して誰でも無農薬で熟して、味が良く、栄養豊富な作物を育成
・ドローン、ロボットで遠隔監視、遠隔制御で、栄養、環境(温度、湿度、炭酸ガス)、土壌(灌水、栄養、菌)、病気、作物の播種、移植、収穫、出荷調整まで一貫して管理
・食材宅配、ロボット調理器、プロのレシピと連携して流通から調理完成までの流れを連結
・さらにノウハウ共有ネットが発展すると、環境条件に合わせて最適な飼育方法を調整する最適条件コントロール、絵を描くように品種改良


●ロボットへの分業


 今後、AIの名のもとにさまざまなサイズのロボットが陸海空そして体内まで進出、ヒトの一部や全部のルーティーンを学習、代替してサポートし、労働人口の減少、高齢化する社会を支えるインフラとなっていく。

メルティン

          メルティンMMI (https://www.meltin.jp/news/168/

・パーソナル・ワークボット:
 - 個人用の安価な作業ロボット
 - 農作業、安価な試作・製造、ロボットとの共同作業

・ウェアラブル・ロボット:
 - スポーツコーチング、eスポーツ
 - 高齢者、障がい者サポート、義手・義足、搬送支援、自動走行車椅子

・サポート:
 - 介護、家政婦、医療(手術、遠隔手術)

・ナノ・ロボット:
 - 体内で健康状態を監視・記録、遠隔診断、体内回診、予兆医療、緊急通知

・遠隔分身ロボット:
 - 海外旅行、遠隔勤務、遠隔作業、宇宙・深海作業、病院から通学
 

 計画されている未来サービスの一例を列挙した。スマートシティ、スマートファーム、スマートファクトリー、スマートオフィス、スマートホームなどの各分野において、ヒトの活動をロボットやサービスに分業し、その利用履歴を収集、分析・解析してサービスにフィードバックする情報循環、動的適応制御が、今後の共通する傾向となってゆく


実世界と虚像が共進化する世界:ミラーワールド
ミラーワールドをけん引するメディア:スマートグラス 

参考書籍:
[1] ケヴィン・ケリー(2019), "Mirror World :デジタルツインへようこそ", 松島倫明訳, Wired, Vol.33
 参考:https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform/
[2] 川口信明(2020), "2060 未来創造の白地図 :人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる", 技術評論社

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実世界と虚像が共進化する世界:ミラーワールド

 本節では、次節で「未来を読み解く」ためのベースとして、各企業などで計画されている未来について紹介する。

4.1 計画されている未来のコンセプト
実世界と虚像が共進化する世界:ミラーワールド
計画されている未来サービス
ミラーワールドをけん引するメディア:スマートグラス

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 Google検索、iPhone、Google Earth、 ストリートビュー、ポケモンGOが示した道筋の延長に、今後数十年の壮大な未来が計画されている。超高速ネットワークの上に多層に重なって広がるバーチャル・ネットワークをベースとして、実空間におおいかぶさり巨大に広がるamazonモデル。大量のサービス支援を通して、ヒトとモノ、モノとモノをつなぎ、あらゆる行動履歴をトレースして、分析・モデル化した情報を実生活に循環させる。 

 現実世界とデジタルツインが情報とメタ情報を循環し、相互に影響を与え合いながら動的に適応、変化し続ける。

●社会環境の変化と影響


超グローバル化とフラット化:
 グローバル世界からの人材参入が、大国資本主義を脅かす。仮想世界が現実世界の大規模な分断・分散化を促し、世界規模・国家規模でフラットなネットワークでつながる社会を広げる。

超高齢化:
 先進国の高齢化による労働人口の不足が、動的に適応する柔軟な組織へと企業のあり方を変える。10数人程度の小さなチームが動的に連携する企業、複数のチャネルで社会につながる個人、共同組合で助け合う企業なき労働形態など多様なコ・ワーキングが世界を変えてゆく。

バーチャル化:
 グローバル化とフラット化、コ・ワーキングの浸透により、物理的な実態を持たないバーチャル国家、バーチャル企業が誕生し、物理とバーチャルの両方に拠点を持つ、マルチチャネル型のワーカー、生活スタイルが国家、企業、地域社会という概念の見直しを迫る。

※コ・ワーキング:
 事務所スペース、会議室、打ち合わせスペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイルを指す。一般的なオフィス環境とは異なり、コワーキングを行う人々は同一の団体には雇われていないことが多い。
 ウィキペディア(2021/5/21)より
  https://ja.wikipedia.org/wiki/コワーキング


●ミラーワールドとデジタルツイン


ミラーワールド小
       
                     ミラーワールドの構成イメージ

 書籍や商店だけでなく、ホーム、教育、都市、マネーや企業、国家までも巻き込んで、リアルとデジタルが混在する世界が構築されようとしている。現実世界にあるすべてのヒト、場所、モノをデジタル世界=デジタルツイン(デジタルの双子)に投影するミラーワールドでは、合わせ鏡のように現実世界とデジタルツインが相互作用し、爆発的なスピードで共進化を繰り返す。  
 今後、生まれる様々な用途向けのサービス -- 交通、輸送・物流、金融、製造、医療、不動産・建設、小売、農林水産業、エネルギーなどのあらゆる産業支援、人びとの生活支援 -- がネットワークで接続・連携していく。「サービスネットワーク」を通して相互に情報交換・融合・複製し、連携・協調・組み合わせて編集しながら、「分析・モデル化ネットワーク」によりデジタル情報に変化して現実世界をデジタルツインに取り込み、「情報抽出ネットワーク」によりデジタルツインから各サービス毎の用途に応じて情報を選別して抽出し、現実世界にフィードバックする


●ミラーワールドにおけるフィードバックループ


 当初、ミラーワールドはモデルサービルや新規ビジネスとして、個別に構築される。現実世界に向けたサービスネットワークが利用者やモノの情報を収集し、デジタルツインに記憶し、デジタルツインから必要な情報を引き出し、サービスネットワークを通して利用者への支援を通してフィードバックされる。サービスの利用と、それを通した情報のフィードバックループが、現実世界とデジタルツインの共進化をうながす

ミラーワールド
  
   ミラーワールド:現実世界とデジタルツインが共進化する世界


○収集する: デジタルツインへの情報収集


 現実世界からデジタルツインへの情報収集は、多様なサービスのネットワークを経由して集められる。

サービスネットワーク例:
・各種産業やインフラ、危機管理のために配置される監視カメラやセンサーのネットワーク
・金融・株式・経済指標などの経済情報ネットワーク
・ウェアラブルデバイス情報ネットワーク(ヒトの位置、健康管理、写真・動画)
・電子製品と家電のネットワーク
・自走カーを含む、支援ロボットとロボット連携のネットワーク
・環境情報(気温、湿度、騒音、....)ネットワーク
など

 現実世界をそのままデジタル化しても、情報量が膨大すぎてサービスにフィードバックして活用することはできない。現実世界の情報は、その用途毎に分析・モデル化ネットワークによりモデリング、デジタル情報化してデジタルツインへ送り込まれる。

分析・モデル化ネットワークでのモデリング例:
 ・統計処理、特徴量を圧縮
 ・シミュレーション
 ・イメージ化、パターン認識
 ・機械学習
 ・ヒトの利用傾向として圧縮(ヒトとヒト、ヒトとモノの距離など)

 デジタルツインは、モデル間でかわされる相互作用(情報交換、相互演算)により、より複合的なものへと変わっていく。



○記憶する: デジタルツインへの記憶


 現実世界にあるものすべての場所(地図、道路、建物、部屋、...)やモノ、ヒトが情報化され、デジタル情報としてデジタルツインに投影される。

デジタルツインへの記憶の例:
・地形、植生、道路、建物、部屋、家具や家電の配置などの3次元地図
・リアルタイムのヒトやクルマ、ロボットの移動、移動先の予測
・リアルタイムの環境情報(気温、湿度、CO2濃度、...)
・社会、経済状況
など

○引き出す: デジタルツインからの情報の引き出し


 デジタルツインの記憶はサービス毎にあつかいやすく加工されるが、それでも膨大な量を扱わなければならない。膨大なデジタルツインの記憶から、目的に応じて情報を選別して引き出す技術が、用途毎に構築される。

情報抽出ネットワークによる情報の選別例:
・検索、フィルタリング
・マッチング
・レコメンド


○支援する: 未来サービスとサービス連携


 未来サービスは、当初は用途毎に個々に発生するが、互いに情報交換・連携することにより統合サービスへと変わっていく。

・リアルタイムに情報を提供・予報する
 各地の気象、災害情報の提供と予報

・自動化する、ロボット化する
 スマートシティ、スマートファーム、スマートファクトリー、スマートオフィス、スマートホーム、スマートカー

・ロボットでサポートする
 医療、高齢者、障がい者、遠隔分身、ナノロボット

・シミュレートする
 都市デザイン・予測、社会生活デザイン・予測、実験、創薬

・バーチャルとリアルを連携する
 職業訓練、手術補助、創薬、実験、旅行、リアルに重ねてAR情報表示

・ウェアラブルで健康を管理する、ライフログを記録する

 ミラーワールドは、個別の目的で徐々に構築され、しだいに相互連携して浸透していく。

 ・モデル都市、自動運転カー
 ・情報・商品売買プラットフォーム
 ・スマートホーム、ウェアラブルデバイス
 ・スマートファーム、スマートファクトリーなどの作業自動化と遠隔管理
 ・スマートオフィス、コ・ワーキング

 分断されていた各サービスの協調と競合を共進化させるエコシステム、共通基盤プラットフォーム、相互インタフェースの規定と連携がブレークスルーとなり、ある瞬間を境にミラーワールドが現実世界と切り離せない存在となってゆく



参考書籍:
[1] ケヴィン・ケリー(2019), "Mirror World :デジタルツインへようこそ", 松島倫明訳, Wired, Vol.33
 参考:https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform/
[2] 川口信明(2020), "2060 未来創造の白地図 :人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる", 技術評論社
[3] リンダ・グラットン(2012), "ワーク・シフト :孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉", 池村千秋訳, プレジデント社

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プロフィール

佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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