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相互作用の連鎖の重なりが宇宙をつくる


1章 相互作用の連鎖の重なりが宇宙をつくる

<ポイント>本章では,初期のネットワーク形成とそのリズムの繰り返しを感じることに注目する。現代そして未来につながるネットワークの歴史は,より軽い元素の相互作用による原子ネットワークへの記憶と,元素の集団がつくる圧力の変化,離合集散による新たな元素の創造の繰り返しとして描かれる。やがて,さまざまな元素がでそろうタイミングと場所で誕生した地球が分子ネットワークの実験場となり,最初に岩石が集まり,次に水が加わると分子の相互作用の活性化により複雑な分子ネットワークの形成を加速して,ついに自己複製する高分子化合物を誕生させる。


1.ビッグバンとともに誕生した4つの相互作用

138億年前,宇宙は超高温高密度のエネルギーの塊から一瞬にして膨張して火の玉宇宙の膨張=「ビックバン」が始まる

膨張とともに冷えていくなかで,集合-分散を繰り返しながら少しずつ宇宙の物理法則とそのかたちをつくっていく。宇宙の膨張・冷却という環境変化とともに質量をもつ素粒子(陽子,中性子,電子)や重力・電磁気力などの相互作用がつくられる。

過去から未来に向けて連鎖するネットワークのもとは4つの相互作用であり,138億年のときをかけて宇宙を,星を,生命を,ヒトを,社会をつくりあげていく。

学生のころに習った「力」や「相互作用」は,この世界を説明するものとしてすでに存在していた。宇宙誕生からの歴史をひもとくと4つの相互作用によって集散を繰り返し,創造のもととなる環境を,互いに影響をおよぼす相互作用を,自身を構成する仕組みを創りながら徐々に世界を組み立てていく様子が見えてくる。

【解説】宇宙をつくる4つの相互作用
我々の知覚する宇宙は4つの相互作用によりネットワークを形成し,断片化,連結・再集合を繰り返すことにより,宇宙の構造をそして生命をより複雑な仕組みへと導いていく。

1)重力相互作用(宇宙創生から10-44秒後)
リンゴが落ちるときにはたらいている相互作用。あらゆる粒子にはたらくけれど力は非常に弱いが,マクロなレベルでは重力だけで語られる。質量に比例するので,極端に小さい原子や分子のレベルではほとんど影響しない。

2)強い相互作用(宇宙創生から10-44秒後)
陽子,中性子,原子核を形づくる相互作用。「電磁気相互作用」より強いが,原子核程度のきわめて狭い範囲にしか働かない。「強い相互作用」がなければ,2つ以上の陽子が核内に共存できない。つまり,原子核は「電磁気相互作用」の反発力と「強い相互作用」の引力の均衡の上になりたっている。

3)弱い相互作用(宇宙創生から10-11秒後)
原子核の種類を変えてしまう錬金術な相互作用。原水爆,原発,恒星内の核反応に関係する。水素の原子核=陽子からヘリウムの原子核,逆に中性子となるときに働く。「弱い相互作用」がなければ,周期表に記載される元素のバリエーションは存在しない,すべての元素のもとは水素ということ。

4)電磁気相互作用(宇宙創生から10-11秒後)
我々が普段経験する重力以外のすべてにはたらいている相互作用。地震,雷,磁石,化学反応,物を移動する,木を折る,ボールを投げる,そして電子と原子核を結びつけて原子をつくる。我々が体験できる重力以外のすべては,電磁気相互作用によっているという万能・ビックリな相互作用。

2.初めての元素の作り方

最初の元素が誕生するまでの宇宙はあまりに熱く,水素とヘリウムの原子核,光子と電子が激しく暴れる荒ぶる宇宙が広がる。

●水素とヘリウムの原子核が広がる暗黒の宇宙

ビックバンからおよそ3分後,宇宙の温度が10億度に近づくにつれて陽子や中性子に作用する「強い相互作用」「弱い相互作用」の影響が強まり水素とヘリウムの原子核が合成されはじめたころ,宇宙が急速に広がり冷えていきそれ以上の核合成が進む前に水素原子核(75%)とヘリウム原子核(25%)が宇宙空間に拡散する

この広がっていけば,ただ水素・ヘリウムガスが何百光年も穏やかに広がる空間が宇宙となるはずだった。しかし,光子が直進できない暗黒の宇宙の中で,光子と陽子と電子がぶつかり合う激しい運動を繰り返していた。

●初めての原子の誕生

ビックバンの後3000度に冷えた38万年後,陽子と電子の運動がおだやかになり「電磁相互作用」が働くようになると,原子核と電子とがお互いに引きあい,最初の元素である水素原子とヘリウム原子が誕生する。

元素といえば「すいへいりーべー」で覚えた周期表が思い浮かぶ。周期表記載されている元素は最初から宇宙に存在していたわけではなく,ビックバンから38万年後の宇宙に広がる水素とヘリウムをもとに生成されたのだ。原子の誕生とともに,ようやく光子が直進できるようになる。

3.鉄までの元素のつくり方

今私たちがあるのは,初期の宇宙のわずかなゆらぎが水素とヘリウムのネットワーク=ファーストスターを編みだし,離散集合のリズムをきざんで元素の連鎖をつくりだしたからだ

●ファーストスターのつくり方

水素とヘリウムで満たされた宇宙では銀河を作る材料もなく,薄いガスが静かに広がるだけのはずだった。しかし,実際には水素を超える大量のダークマターが宇宙に広がり,重力により影響を与え合っていた。

最初の原子から1億年の時をかけてダークマターの塊にガス(水素とヘリウム)が引き寄せられ,密度の差が濃くなり編み目模様をつくりはじめる。

密度の濃い部分は高温の乱流状態となり,分子どうしが近接して「電磁気相互作用」によって集まり「重力」による収縮が始まる。わずかに回転していた「分子雲」は収縮にともない高速に回転する円盤となり,中央部は「重力」により中央に向かって落下を続ける。やがて重力による「落下する力」と,落下のぶつかり合いがおこした熱による「膨張する力」が均衡して収縮が止まり,内部の熱により輝く「原始星」が誕生し宇宙にかすかな光りをともす

「原始星」へ向けて高速のガスが流れ込み続け,太陽質量の20倍の重さになったときに1500万度を超えて「核融合反応」を繰り返すようになり,太陽の10万倍もの明るさで輝く。この光がまわりのガスを暖め,星にふりつもるガスにブレーキがかかる。さらに7万年後,太陽質量の42倍,表面温度10万度の高温で燃えさかるとき,核融合による大規模な爆発による「膨張する力」と重力による「落下する力」が均衡し,ついにその成長を止めてファーストスターの輝きを宇宙に広げる

●ファーストスター内部で鉄までの元素をつくろう!

周期表の水素とヘリウム以外の元素はどのように創造されるのだろうか。

水素(陽子1),ヘリウム(陽子2),順に陽子を足していけば水素をもとに他の元素をつくることができそうだが,反発し合う陽子どうしは近づくことができない(電磁気相互作用)。かの錬金術師たちが,どのように頑張っても他の元素から金をつくることができなかったわけだ。

ところが恒星内において原子核が超高温・超高圧状態にさらされると,電子と原子がばらばらになり,陽子どうしが衝突できるようになる。陽子どうしがぶつかると陽子過剰となって陽子から陽電子とニュートリノが飛びだして中性子となり(弱い相互作用),陽子と中性子が結合することにより水素原子核(陽子1)⇒重水素原子核(陽子1+中性子1)⇒ヘリウム原子核(陽子2+中性子2)へと形を変えていく(強い相互作用)。いったん,ヘリウム原子核が構成されると,低温低圧状態にもどっても結合がほどかれて水素にもどることはない(強い相互作用)

恒星内の中心にヘリウムが蓄積され,さらに高温・高圧状態がすすむと,炭素,酸素,ネオン,マグネシウム,ケイ素,硫黄,カルシウムなどが連鎖的に生成される。より大きな元素番号へと核融合反応が進むにつれてエネルギーを放出して軽くなり結合力が強く働くようになる(強い相互作用)。一方で鉄よりも陽子が多くなると反発が強まり(電磁気相互作用)最も安定した元素=鉄を生成したところで核融合反応が終了する。ファーストスターが誕生してから数百万年かけてようやく鉄までの元素を創造することができた

鉄より重い元素を生成するためには,巨大な恒星内の核融合よりも莫大なエネルギーが必要だ。離散融合を繰り返す宇宙はさらなる元素生成の実験場を誕生させる

4.鉄より重い元素のつくり方

恒星の中での核融合反応が止まると,核融合による「膨張する力」と重力による「落下する力」の均衡がくずれ,鉄の層は中心部に向かって光速の2割ものスピードで落下しはじめる(重力崩壊)。中心部は超高圧のため鉄原子に電子が押し込められ,陽子が中性子に変わり(弱い相互作用)中性子のコアができる。中性子のコアに鉄の層が落下し跳ね返り,激しい高密度の衝撃波が発生する。さらに,中心部のコアの重力崩壊が進み,やがて回転する巨大なブラックホールとなり,周囲を巻き込みながらジェット流にのせて元素をまきちらす極超新星爆発をおこす

この極超新星爆発によってケイ素層や酸素層下部では,衝撃波が通過するときの高温高密度下で鉄を中心とした元素を生成し,重い原子核は大量に生成された中性子を捕獲してさらに重い原子核となる。陽子と中性子の均衡がとれる数に達すると電子を放射して安定した元素となり(弱い相互作用),さらに中性子を捕獲してより重い元素を生成し,鉄より重い元素を生成する連鎖が続く。このようにして元素表にあるさまざまな元素が巨大なブラックホールの周囲から,ジェット流にのって宇宙空間に広がる

ファーストスターのサイズはダークマターの密度の偏りにより異なり,大きなものは太陽質量の6万倍にも巨大化し,最後の超新星爆発とともに中心核からモンスターブラックホールを形成,さらにモンスターブラックホールどうしが合体して太陽質量の10億倍もの超巨大ブラックホールとなり,ファーストスターからまき散らされた元素=星間ガスをもとに数千億の恒星を生みだす「銀河」へと成長してゆく

「銀河」の中では,ばらまかれた星間ガスが集まってさまざまなサイズの恒星が誕生と死を繰り返す。コアが中性子星となり超新星爆発をおこすもの,ゆっくりとした中性子核融合によりプラチナよりも重い元素を生成するもの,中性子星の連星の衝突・合体により金やプラチナなどの重金属を大量に生成するものなど,地球にある豊富な元素が恒星の生と死の振り子のリズムによって徐々に生成されていく

5.元素に富んだ岩石惑星「地球」誕生(45億6000万年前)

豊富な元素を含む「地球」が誕生したのは,宇宙誕生から130億年の銀河の辺境で銀河の衝突が発生したという絶妙なタイミングだった。

●ナイスタイミングで誕生した太陽系

ビッグバン直後からやや減速しつつ膨張し続け,ファーストスターの爆発後に大量の「銀河」が誕生・衝突・統合を繰り返して「天の川銀河」を形成する。やがて,「銀河」の統合により宇宙全体に広がっている銀河どうしの距離が遠くなると宇宙の「膨張する力」と「銀河」の重力により「減速する力」の均衡点を超えて,約60億年前から加速度的な膨張に転じる。そして46億6700万年前,天の川銀河の辺境に生命を誕生させるためにちょうどいい塩梅の元素を集めた「太陽系」が誕生する

●物質大循環と衝突の繰り返しが岩石惑星「地球」を形成

46億6700万年前,「天の川銀河」が矮小銀河と衝突した衝撃波が「分子雲」に到達したことをきっかけに,「核融合反応」により高温で燃え輝き続ける恒星=太陽が誕生する

太陽を形成する「分子雲」は水素やヘリウムを主成分とし,超新星爆発などによって生成されたさまざまな物質(炭素,窒素,酸素,マグネシウム,ケイ素,鉄など)で構成されたガス状の集まりだ。その0.2%が太陽への落下を免れて,太陽の周囲に高速に回転する環を形成する。

円盤から垂直方向にエネルギーが放出されて,徐々に回転を緩め,環の中心面に向かって塵や氷が「沈殿」する。沈殿した塵や氷は乱流の中で「電磁気相互作用」や「重力相互作用」によって集積し合いながら大きくなり,数10Km程度の「微惑星」となって分離する。「微惑星」どうしが衝突・合体を繰り返して巨大化し,同一軌道上の「微惑星」を取り込み終えると太陽を中心として長期にわたり公転する「惑星」となる

太陽に近い軌道では,氷の粒子が蒸発したため微惑星が少なく小型化し「岩石惑星」を,木星の軌道よりも外側では大量の氷の粒子を集めて微惑星がぶつかり合い「太陽風」により飛ばされてきたガスを巻き込み巨大な「ガス惑星」を,天王星の外側の軌道では回転力が弱いため微惑星の衝突がほとんどおきず小さな「氷惑星」を形成する。そして,45億6000万年前に,鉄(32.1%),酸素(30.1%),シリコン(15.1%),マグネシウム(13.9%),硫黄(2.9%),ニッケル(1.8%),カルシウム(1.5%),アルミニウム(1.4%),金銀プラチナなどの重金属,レアアース,ウランなどの元素で構成される岩石石惑星「地球」が誕生する

ウランまでの豊富な元素材料をそろえる「地球」は,分子の実験場としてさまざまな物資を生みだしてゆくこととなる。

6.分子生成の連鎖が,循環する地球システムをつる

水のないドライな「地球」に降り注いだ大量のウェットな隕石がきっかけとなり,化学反応の連鎖がはじまる。分子生成の連鎖はやがて,循環するダイナミックな地球システムをつくっていく。

●ドライな岩石惑星「地球」と月の誕生

45億5000万年前,大気も水もない鉄とケイ酸塩を主成分とするドライな岩石惑星「地球」が誕生し,その直後の微惑星との衝突により月が生成され,やがて鉄などが重力で沈み込み表面を固い地核で覆われる。

●ウェットな隕石が降り注ぎ分子反応を加速する

43億7000万~42億年前,木星と土星の軌道移動の余波で水と炭素を含む大量の隕石が地球に降り注ぎ,地球は灼熱状態となる。地球が冷えてくると大量の二酸化炭素を含む酸性の雨(炭酸水)が降り注ぎ,還元状態の地表と激しく化学反応をおこし,地表の岩と結合してケイ酸塩が流れだし,硫酸,硝酸,塩酸などが溶け込んだ超酸性・超高塩分・重金属元素を大量に含んだ猛毒の海が誕生する。

●地球の急冷が地核の循環系をつくる

40億年前~38億年前,原始海洋が大気中の二酸化炭素を大量に吸収して,地球が急速に冷え始める。地球の冷却と原始海洋の増加の相互連鎖が加速し,1000度から130度までいっきに冷却する。

地球の冷却の影響で,海洋地核の下のマントルが上昇して裂け目(海嶺)をつくり吹きだしたマグマにより海洋地核を形成,マントルがプレートを押し上げプレートの自重で大陸地殻の下にプレートが沈み込むプレートテクトニクスによりプレートの循環が始まる。海中の溶岩がつくる含水鉱物は潤滑油として働くとともに,岩石が溶融する温度を極端に低下させて,酸性のマグマ(二酸化ケイ素)を生じ,地表へと上昇して地球特有の岩石=生命素材を含む花こう岩をつくる

●プレートテクトニクスが海を浄化

38億年前~35億年前,風化によって陸上から中性の砂や泥が海中に堆積して超酸性の海水と反応して中和し,海底の裂け目(海嶺)から噴出する熱水と岩石の反応により重金属鉱床となり,プレートテクトニクスによりマントルの地下深くに運ばれて重金属イオンが除去され,海がしだいに浄化されていく。海の浄化とともに,温泉や海嶺近くに自己複製する高分子ネットワーク(生命)が誕生する

●磁場バリアが太陽風から地上を守る

32億年前,鉄などの重い物質は重力によりコアを形成,プレートテクトニクスが原初大陸を破壊してコアの上部に運んだウランの発熱により液体化した金属がコアの周りを対流して地球磁場を発生させる。しだいに強くなる磁場がバリアとなり,ふりそそぐ宇宙線,太陽風,紫外線から地表を守る

海面に降り注ぐ太陽風や紫外線の減少にともない,海面近くの太陽光を使った光合成により海中の二酸化炭素を吸収し酸素を放出する生命=シアノバクテリアが誕生する

●冷却と秩序化の営みが循環する地球ネットワークを構築する

27億年前,海底の冷たいプレートがマントルに沈みこむことにより,地球がしだいに冷えていくとマントルの対流が激しくなり,地球磁場が急激に強くなる。有害な光線が減った海面近くでシアノバクテリアが大量発生して,海中の二酸化炭素を大量に消費し,放出した酸素が磁鉄鉱となり海中に大量に沈殿して黒い海は「青い海」へと変化する。


地球の冷却と秩序化の営みが,新たなプラットフォームとメタな秩序化の営みを生みだす


シアノバクテリアが地球上に大量の酸素をもたらし,酸素を呼吸する巨大生命を生み,オゾン層が宇宙線から地球を守り,生命が地上に広がる。プレートテクトニクスの活動が大陸を,そして超大陸をつくり,大陸移動,山の生成,火山,地震につながる地球システムの活動がスタートする。大陸の離合集散,風化の増減,雨の増減,生物死骸の地下への移動と火山噴火,生命と地球が相互に連鎖しあいながら地球システムの恒常性を形成して,酸素濃度と気温を一定の範囲に保つこととなる。



【参考書籍】

[1] 佐藤勝彦(2015), "宇宙137億年の歴史 :佐藤勝彦 最終講義", KADOKAWA
[2] 吉田直紀(2018), "地球一やさしい宇宙の話 :巨大ブラックホールの謎に挑む!", 小学館
[3] 和南城伸也(2019), "なぞとき 宇宙と元素の歴史", 講談社
[4] 谷口義明(2019), "宇宙はなぜブラックホールを造ったのか", 光文社
[5] 谷口義明(2019), "宇宙の誕生と進化", 放送大学市教育振興会
[6] 丸山茂樹(2020), "最新 地球と生命の誕生と進化 :[全地球史アトラス]ガイドブック", 清水書院
[7] 丸山茂徳, 磯崎行雄(1998), "生命と地球の歴史", 岩波書店
[8] 丸山茂徳(2018), "地球史を読み解く", 放送大学教育振興会
[9] デイヴィッド・クリスチャン監(2017), "ビッグヒストリー大図鑑 :宇宙と人類 138億年の物語", 秋山淑子, 竹田純子, 中川泉, 森富美子訳, 河出書房新社
[10] 大森聡一, 鳥海光弘(2016), "ダイナミックな地球", 放送大学教育振興会
[11] 森山茂(1998), "自己創成するガイア -- 生命と地球は強制によって進化する--", 学習研究社

tag : フューチャーリテラシ,ミクロ・マクロ・ネットワーク,歴史,宇宙誕生,地球誕生,書籍紹介

【閑話休題】「脈動する宇宙」を「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の視点で読み解く

 無限の多元宇宙(マルチバース)の中で138億年間続いたこの宇宙は、4つの相互作用の絶妙なバランスにより、停滞・霧散することなく複雑化しながら新たな構造をつくり続ける。


●ミクロ・マクロな宇宙のネットワーク


 陽子(+)と電子(-)が出合ってゼロにならず、水素をつくるだけでは終わらず、中性子を介して反発する複数の陽子をつなぎとめ、弾け散り、集まり、燃え、新たな元素を生成し、爆発し、さらに多くの元素をまき散らし、恒星を、惑星をつくり、ブラックホールとなり、銀河を銀河団の誕生と死と再生を繰り返す。安定することのない宇宙環境と、それに適応して均衡状態のバランスを探りながら新たな構造をつくり、永遠の均衡が存在しないがゆえに新たな均衡を模索し続ける。


 本書は、複雑系の過去・現在・未来を「ミクロ・マクロ・ネットワーク」というモデルを通して、物語として読み解く宇宙環境の変化への元素の適応をミクロ・マクロ・ネットワークの視点から整理すると3つの仕組みとして俯瞰できる。


宇宙環境適応の仕組み】

 ①ネットワーク適応:

  ③の相互作用の安定する均衡状態(ex.元素、恒星)をさぐる仕組み。

 ②ネットワーク構造の記憶・維持:

  均衡状態(ex.元素)を記憶し保持しようとする仕組み。

 ③ミクロ・マクロ相互作用:

  ①②で構築された均衡状態を構成単位(ex. 元素、恒星)とした、構成単位毎および宇宙環境との相互作用。


ミクロ・マクロ・ネットワーク(宇宙)


 宇宙の専門家ではない読者が、ビッグバンから銀河・惑星誕生までの仕組みを読み解くとき、宇宙の環境変化に対して、どのような相互作用が働き、どのようなエネルギーなどの均衡=安定状態をとり、またその状態はどのような環境において安定・不安定であるかという視点で探ると、様々な宇宙論の中からバランスの良いものを選び、理解し、物語を組みたてることができる。次々に浮かぶ疑問をそのまま放置しておかないことが肝心だ。調べてみると、それが以外と今ホットな話題だったりする。そして、誰か一人の言だけを信じず、なにかを直感したら、なぜそう思うのかをネットや他の書籍を散策して確認することだ。


例えば、

・電子はなぜ原子核の引力によって原子核に落ちないのか

・超新星爆発の際に恒星内でつくられた元素は破壊されてないのか

・地球にはなぜこれほど多くの元素が存在するのか。その存在比は宇宙において一定のものなのか

・生命が誕生するために適切な元素比はあるのか、あるとしたらなぜそれが地球に集まったのか

・60億年前に始まった宇宙の加速膨張と、46億年前の地球や生命誕生との関係は


 元素というプラットフォームを得て、地球という惑星をつくった宇宙は、地球を実験場として新たな相互作用を創造しながらメタな構造を次々とを組み立てていくことになる。


フューチャー・リテラシー:インデックス

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元素に富んだ岩石惑星「地球」誕生(45億6000万年前)

 豊富な元素を含む「地球」が誕生したのは、宇宙誕生から130億年の銀河の辺境で超新星爆発が発生したという絶妙なタイミングだったからだ。


●ナイスタイミングで誕生した太陽系[1]


 宇宙は、膨張が進みすぎれば銀河を形成する間もなく膨張し続け、逆に収縮に転じる速度が早ければつぶれてしまう。ビッグバン直後からやや減速しつつ膨張し続け、ファーストスター爆発の後、大量の銀河が誕生・衝突・統合を繰り返し、太陽系が存在する「おとめ座超銀河団」の「天の川銀河」を形成した。そして、銀河の統合により宇宙全体に広がっている銀河同士の距離が遠くなると「膨張する宇宙」と銀河の重力により「減速する力」の均衡点を超え、約60億年前から加速度的な膨張に転じた。そして、天の川銀河の辺境に、ウランまでの元素を集め、岩石惑星をそして生命を誕生させるためにちょうどいい塩梅の46億6700万年前というときに「太陽系」を生み出す。

 

●物質大循環と衝突の繰り返しが岩石惑星「地球」を形成[1][2][3]


 456700万年前が矮小銀河と衝突し、爆発的に星が形成される「スターバースト」の騒乱が渦状腕の近くに分布する「分子雲」に到達し、周囲にあった「星間物質」に濃淡をつくる。重力と恒星内の爆発の均衡のなかで「核融合反応」により高温で燃え輝き続ける恒星=太陽が誕生した。


 太陽を形成した「分子雲」は、水素(97%)やヘリウム(8.9%)を主成分とし、超新星爆発などによって生成された様々な物質(炭素、窒素、酸素、マグネシウム、ケイ素、鉄など:0.1)で構成されたガス状の集まりだ。「太陽」にその99.8%が吸収され、残りの0.2%が太陽を中心として「回転する力」と重力により「落下する力」の均衡により太陽への落下を免れ、太陽の周囲に高速に回転する環を形成する。太陽の近くでは、太陽の高温にさらされて水分が蒸発し、ドライな物質だけが残った。太陽風に吹き飛ばされた水分などの揮発成分は、火星と木星の間を境界線とする「スノーライン」の内側には水蒸気を、外側には氷や有機物などのより低温で安定な物質とともに残留した。


 円盤から垂直方向にエネルギーが放出され、徐々に回転を緩め、環の中心面に向かって固体分子(塵や氷)が「沈殿」する。沈殿した固体分子は乱流の中で静電気力や重力相互作用によって集積し合いながら大きくなり、数10Km程度の「微惑星」となって分離する。100億の「微惑星」どうしは、さらに衝突・合体を繰り返して巨大化し、同一軌道上の「微惑星」を取り込み終えると、太陽を中心として長期にわたり公転する「惑星」を形成する。


 太陽に近い軌道では、氷の粒子が蒸発したため微惑星が少なく小型化し「岩石惑星」を、木星の軌道よりも外側では大量の氷の粒子を集めて微惑星がぶつかり合い「太陽風」により飛ばされてきたガスを巻き込み巨大な「ガス惑星」を、天王星の外側の軌道では回転力が弱いため微惑星の衝突がほとんどおきず小さな「氷惑星」を形成する。そして、456000万年前、(32.1%)、酸素(30.1%)、シリコン(15.1%)、マグネシウム(13.9%)、硫黄(2.9%)、ニッケル(1.8%)、カルシウム(1.5%)、アルミニウム(1.4%)[4]、金銀プラチナなどの重金属、レアアース、ウランなどの元素で構成される岩石石惑星「地球」が誕生した。


 ウランまでの豊富な元素材料をそろえる地球は、分子の実験場として様々な物資を生み出してゆくこととなる。


フューチャー・リテラシー:インデックス


参考書籍:

[1] 佐藤勝彦(2015, "宇宙137億年の歴史 :佐藤勝彦最終講義", 角川学芸出版

[2] 吉岡一男(2017, "初歩からの宇宙の科学", 放送大学教育振興会

[3] 丸山茂樹(2020,"最新 地球と生命の誕生と進化:[全地球史アトラス]ガイドブック", 清水書院

[4] 英語版Wikipedia, "Earth", Earth - Wikipedia



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恒星の生と死の繰り返しのなかでつくられた豊富な元素 -- 鉄より重い元素をつくろう!

●恒星の生と死の繰り返しのなかでつくられた豊富な元素  -- 鉄より重い元素をつくろう!


 元素表の元素を生成するためには、巨大な恒星内の核融合よりも莫大なエネルギーが必要だ、離散融合を繰り返す宇宙は、さらなる元素生成の実験場を誕生させた。

 恒星の中での核融合反応が止まると、核融合による「膨張する力」と重力による「落下する力」の均衡がくずれ、鉄の層は中心部に向かって光速の2割ものスピードで落下しはじめる(重力崩壊)。中心部は超高圧のため鉄原子に電子が押し込められ、陽子が中性子に変わり(弱い相互作用)中性子のコアができる。中性子のコアに鉄の層が落下し跳ね返り、激しい高密度の衝撃波が発生する。さらに、中心部のコアの重力崩壊が進み、やがて回転する巨大なブラックホールとなり、周囲を巻き込みながらジェット流にのせて元素をまきちらす極超新星爆発をおこす。


 この極超新星爆発において、ケイ素層や酸素層下部では、衝撃波が通過するときの高温高密度下で鉄を中心とした元素を生成、重い原子核は大量に生成された中性子を捕獲し、さらに重い原子核となる。陽子と中性子の均衡がとれる数に達すると電子を放射して安定した元素となり(弱い相互作用)、さらに中性子を捕獲してより重い元素を生成し、鉄より重い元素を生成する連鎖が続く。このようにして元素表にあるさまざまな元素が巨大なブラックホールの周囲から、ジェット流にのって宇宙空間に広がった。


 ファーストスターのサイズは、ダークマターの密度の偏りにより異なり、先に示した太陽質量の40倍程度のものから、大きなものは短期間に6万倍にも巨大化し、その最後に超新星爆発とともに中心核からモンスターブラックホールを形成、さらに周囲の星間ガスをとりこみ、モンスターブラックホールどうしが合体し太陽質量の10億倍もの超巨大ブラックホールとなり、ファーストスターからまき散らされた元素=星間ガスをもとに数千億の恒星を生み出す銀河へと成長してゆく。

 銀河の中では、ばらまかれた星間ガスが集まってさまざまなサイズの恒星が誕生と死を繰り返す。コアが中性子星となり恒星表面に到達した衝撃波により超新星爆発をおこすもの、超新星爆発をおこさずゆっくりとした中性子核融合によりプラチナよりも重い元素を生成するもの、連星系による核爆発型の超新星爆発により炭素、酸素、ケイ素そして鉄を大量に生成するもの、中性子星の連星の衝突・合体により金やプラチナなどの重金属を大量に生成するものなど、現在に地球にある豊富な元素は恒星の生と死の振り子のリズムから徐々に生成されていったのだった。


フューチャー・リテラシー:インデックス


参考書籍:

[1] 佐藤勝彦(2015, "宇宙137億年の歴史 -佐藤勝彦 最終講義-", KADOKAWA

[2] 和南城伸也(2019, "なぞとき 宇宙と元素の歴史", 講談社

[3] 谷口義明(2019, "宇宙はなぜブラックホールを造ったのか", 光文社

[4] 谷口義明(2019), "宇宙の誕生と進化", 放送大学市教育振興会


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ファーストスターが銀河の種をまきちらした --- 鉄までの元素をつくろう!

●ファーストスター内部で鉄までの元素をつくろう!


 周期表の水素とヘリウム以外の元素はどのように創造されたのだろうか。水素(陽子1)、ヘリウム(陽子2)、順に陽子を足していけば水素をもとに他の元素をつくることができそうだが、お互いにプラスのため反発し合う陽子同士は近づくことができない(電磁気相互作用)。かの錬金術師たちが、どのように頑張っても他の元素から金をつくることができなかったわけだ。

 ところが恒星内において原子核が超高温・超高圧状態にさらされると、電子と原子がばらばらになり、陽子同士が衝突することができるようになる。陽子どうしがぶつかると陽子過剰となって陽子から陽電子(プラスの電荷)とニュートリノが飛び出して中性子となり(弱い相互作用)、陽子と中性子が結合することにより水素原子核(陽子1)⇒重水素原子核(陽子1+中性子1)⇒ヘリウム原子核(陽子2+中性子2)へと形を変えていく(強い相互作用)。いったん、ヘリウム原子核が構成されると、低温低圧状態にもどっても結合がほどかれ水素にもどることはない(強い相互作用)。恒星内の反応としては、水素からヘリウムへの核融合の期間がもっとも長い。

 恒星内の中心にヘリウムが蓄積され、さらに高温・高圧状態がすすむと、炭素、酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、硫黄、カルシウムなどが連鎖的に生成される。より大きな元素番号へと核融合反応が進むにつれてエネルギーを放出しているため軽くなり結合力が強く働くようになる(強い相互作用)、一方で鉄よりも陽子が多くなると反発が強まり(電磁気相互作用)、最も安定した元素=鉄を生成したところで核融合反応が終了する。ファーストスターが誕生してから数百万年かけてようやく鉄(元素番号26)までの元素が創造することができた。


フューチャー・リテラシー:インデックス


参考書籍:

[1] 佐藤勝彦(2015), "宇宙137億年の歴史 :佐藤勝彦 最終講義-", KADOKAWA



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佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
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