【閑話】アイデア・プロセッシングのためのツール

 筆者が使っているツールを中心に、アイデア・プロセッシングのためのツールを紹介します。

 アイデア発想本などの多くは、今でも「紙のカード」や「紙の手帳」を利用する方法を推奨しています。紙に手で書くメリットも捨てがたいのですが、自分の書いたノートでも大量に情報を蓄積すれば他人のものとなり、どう工夫してみても「紙のメディア」では探し出すのに限界がある。そこで、「全文検索」ができるノートツールを中心にツールを組み立てることになります

アイデアツール
   アイデア・プロセッシング環境


●「ノート」ツール


 まずは、アイデア・プロセッシングの中心となる「ノート」ツール。

 マイクロソフトのOneNoteか、アウトライン・プロセッサを使ってみて選ぶといいでしょう。OneNoteが使いやすくお薦めで、アウトライン・プロセッサならばDynalistあたりがWindows、Apple、iPhone、Webと連携できて使いやすい
 「全文検索」できることは当然として、配下の階層ごとドラックで気軽に移動できるのがいい。表示をタブで切り替えたり、マルチウィンドウで表示したり、リビングではiPadで修正することもできます。

 筆者は、Linux系のpukiWikiベースの「growi」というツールをdocker-composeの上で使っている。ちょっとマニアックなの構成なのでLinux大丈夫という方しかお勧めはしません。wikiを個人で使いたい方ならばgrowiがいいでしょう。仮想マシンを使ってwindows上でも立ち上げることができます。

 growiのサンプル画面

■growiの気に入ってるところ:
 ◎ドキュメントをタグとして使える
  - 階層表現用のタグがなくドキュメントの下に何層にも階層をつくれるのが重宝しています
 ◎lsxプラグインを使うと階層一覧を何列も表示できる
  - OneNoteやアウトライン・ツールだと1列の表示だけ
 ・全文検索が高速で、データ量を気にせずに使える
  - ビジネス用の検索エンジンelasticsearchを使っている
 ・ページ内の階層表現をテキスト形式(Markdown)で記述できる
 ・Webで編集できる
 ・階層の一括移動もとりあえずできる(後述)

■growiの使いにくいところ:
 ・階層をドラッグで移動できない
 ・バックアップ方法がちょっと面倒

階層一覧
 
               「growi」で階層を表形式で表示


●「メモ」ツール


 筆者がメモするのは、「寝ている時」や「目覚めた時」や「散歩中」が多いので、スマホ(筆者はiPhone)で片手で操作できるのが必須です。

 最近まで、「音声認識+ノート」でメモしていたのですが、あとからコピペしてパソコンと共有する必要があるので最近は「ショートカット」で登録して、音声認識で直接OneNoteに送っています。

音声認識⇒アプリ(OneNote)ショートカットの設定方法(iPhone):
 ・「ショートカット」を起動
 ・「新規ショートカット」で「アクションを追加」
 ・「音声」で検索して、「テキストを音声入力」
   - 「表示を増やす」⇒「聞き取り停止」は「タップ時」を選択。
 ・「+」で「共有」⇒「機能拡張で共有」を選び。
 ・「...」ボタンを押して、「ホーム画面に追加」でホームにショートカットアイコンを置く。


●紙か電子書籍か


 本を購入するときに「紙の書籍」か「電子書籍」は一長一短あって悩むところ、時には両方購入する場合もあります。

■「紙の書籍」のメリット:
 ・書き込みができる

■「電子書籍」のメリット(Kindle):
 ・検索ができる
 ・コピペができる(回数制限あり)
 ・電子辞書で簡単に「意味」や「読み」を確認できる
 

●OCRツール


 「紙の書籍」からの切り貼りは、次のいずれかの手段を使っていて、「紙の書籍」からの誤入力率はいずれの方法でも大差はない。近年のOCRツールや音声認識の精度の高さには驚かされます。

■本からの切り貼り手段:
 ・手入力
 ・スマホのOCRツール
  - カメラで写真をとるように入力できる
  - 認識率が非常に高いTextScan(100円/月)を利用、写真をとるような操作が快適
 ・音声メモ
 ・Kindleからコピペ(回数制限あり)


●画像共有


 iPhoneで撮影した画像を共有するのはGoogleドライブでも、Dropboxでもなんでもいいのですが、筆者はGoogleドライブを経由するか、OneNoteに直接貼りつけています。


 以上です。便利なツールが次々と発表されるので、随時ためしてみるといいでしょう。



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アイデア・プロセッシング実施方法(5):シナリオ・物語編集

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アイデア・プロセッシング:
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Step2: 情報散策
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アイデア・プロセッシング用語解説:
・情報素材: 段落などのを単位とする文章で文節、区分けしたテキスト。1枚の画像。1枚の絵。
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 これまで集めた「情報素材」を文章化することにより、直感に従って集め、関係性に注目してグループ化したアイデアの素材から、関係の意味や性質を論理的にとらえなおし、矛盾や誤りを見直すことができる。さらに、自身が着目することの理解が深まり、「情報素材」の捉え方を変え、そして文章化に苦労した部分にこそ新しい発想のチャンスがある。


●4-1)「情報素材」を文章にする

・アウトプット: 文章化した情報素材

・インプット: グループ編集した情報素材

 図、絵、テキストを用いて小規模な文と文脈を具体化するフェーズ。シナリオ、物語として記述することにより、アイデアを整理し、アウトプット可能な「情報素材」を生成する。

〇なぜ文章化するのか


 Step3までは、発想を広げるこをと優先してきた。Step4では、「言葉として記述」することにより論理的な矛盾を排除する。

○どこから文章化するのか


 文章化のきっかけは、アイデアやコンセプトの提案、業務提案や論文化、書籍化、もしくはblogへの執筆などの具体的なアウトプットを求めるときだろう。文章化に着手する初端は、それぞれの経験上気になっている具体化の「肝」となる部分、そこを明らかにしておかなければ先に進めないという手がかりから先にとりかかるといい。

○短い文章にまとめる


 Step3でグループ編集した「情報素材」をみなおし、100~200文字程度の文章にまとめる。前後の段落と連携し「起承転結」を意識して文章化する、図や絵を用いる、表を追加するなど工夫するのもいいだろう。

○続いて、文章化に着手するのはどこか


 ある部分について文章化した後、新たな手がかりをもとめるより先に文章化した段落と関係の深い周囲の「情報素材」からとりかかると、次のステップに進むための足がかりができる。


●4-2)アイデア編集

・インプット:文書化した情報素材
・アウトプット: アイデアのクレーム(短文)、ネーム(呼称)


 「情報素材」をもとに、アイデアを形成するフェーズ。背景、テーマ、材料・素材を書き出し、着想を「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で整理して、クレーム(短文)とネーム(呼称)を生成する。

○課題設定

 与えられている課題、Step1で設定した課題をもとに1文で記述

○背景

 課題の置かれている周囲の環境、なぜその課題が設定されたのか、競合相手など

○材料・素材

 利用できる技術・サービス、想定している動作条件、環境条件、プラットフォームなど

○着想

 「課題」「背景」「材料・素材」を並べてみて思いつくアイデアの出発点、手がかり、実現したいイメージなど

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えてみる

 「着想」を具体化するため「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルで記述してみる。曖昧な部分、欠落箇所は今後の課題であり、とりあえずそのままにしておく。

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の構成要素と特性:
 ・構成要素: ミクロ、コミュニケーション、ネットワーク、マクロ、メタ・ネットワーク、環境、技術・社会背景
 ・特性: 多元性・多重所属、フィードバック・ループ、適応・動的特性、自省作用・創造作用、可塑性・学習、恒常性・保守性、変異要素

○言葉で表現する

 やりたいことをクレーム(短文)とネーム(呼称)で表現する。


●4-3)コンセプト編集

・アウトプット: コンセプトの説明文
 4-2)アイデア編集の「クレーム(短文」と「ネーム(呼称)」を起点に、コンセプトを具体化するフェーズ。6W1Hで表現して曖昧な言葉を具体化し、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で表現してコンセプトを簡単な文章としてまとめる。

○6W1Hで表現する

 コンセプトを6W1Hで表現し、具体化する。

・いつWhen:
・どこでWhere:
・誰がWho:
・誰にWhom:
・何を(する)What:
・なぜWhy:
・どのようにHow:

○曖昧な言葉、キーワードを明確にする

 6W1Hで使用した曖昧な言葉、キーワードのうち曖昧なものを文章で解説する。
  

○派生アイデアメモ

 派生的に思いついた、新しいアイデア、コンセプトのメモを記録しておく。

○コンセプトの具体化

 曖昧なキーワードを、具体的なアルゴリズムや定量表現で定義する。

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で具体化する

 コンセプトを「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルで具体化し、チェックする。曖昧な部分、欠落箇所は極力のこさず、必要ならば課題として明記する。

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の構成要素と特性:
 ・構成要素: ミクロ、コミュニケーション、ネットワーク、マクロ、メタ・ネットワーク、環境、技術・社会背景
 ・特性: 多元性・多重所属、フィードバック・ループ、適応・動的特性、自省作用・創造作用、可塑性・学習、恒常性・保守性、変異要素

○コンセプトを簡単な文章で表現する。

 技術やビジネスの具体化につなげられるよう、コンセプトを簡潔な文章で表現する。

 本書がターゲットとするのはアイデアを創出し、コンセプトとして具体化する「コンセプト編集」までだ。たしかに、新しいコンセプトを生み出すことは、全行程のほんの数パーセントにすぎない。技術の具体化、商品化、商品販売のために、周囲を巻き込み、予算と人員を確保してプロジェクトを推進するという大きな海原がこれから先に控えている。それでも、霧の中で航海するには舵取りもままならない、数十年先の未来に羅針盤を向けとて現在のコンセプトを見定めることが肝要なのだ。

 この後、アイデア・プロセッシングの具体例として、1990年代から現代までと、現代から30年後の未来を読み解くサンプルを例示していく。




参考書籍:
[1] 川喜多二郎, "発想法 -- 創造性開発のために --", 中央公論新社, 1976(改)
[2] 梅棹忠夫(1969), "知的生産の技術", 岩波書店
[3] 外山滋比古(1986), "思考の整理学", 筑摩書房
[4] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫

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アイデア・プロセッシング実施方法(4):グループ編集、離合集散、分類と階層化

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アイデア・プロセッシング:
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Step2: 情報散策
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アイデア・プロセッシング用語解説:
・ノート: ノートツール
・ページ: ノートツール上のページ、分類の単位
・階層構造: アウトライン構造、分類を階層的に表示
・情報素材: 段落などのを単位とする文章で文節、区分けしたテキスト。1枚の画像。1枚の絵。
・1行見出し: グループ、情報素材、分類を1文で表現したタイトル。
 ※「内容」の意味のエッセンスをとらえて圧縮し、できるだけ柔らかい言葉で表現する、過度に抽象化しないこと。
・内容: 「1行見出し」に配置した「情報素材」群
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 情報があふれる近代において、無から突然新しい発想を創造するということはほとんどなく、すでに存在する「情報素材」を結びつけることによって新しい発想が生まれる。つまり、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」ということだ[1]。
 ここでは、アイデアを発想するための下準備として、収集した「情報素材」を編集するための方法について示す。直感思考と論理思考を行き来しながら進めることが肝要だ。

Step3: グループ編集:離合集散、分類と階層化

・インプット: 情報素材
・アウトプット: 分類・階層化した情報素材
 ページ・情報素材を編集して分類・階層化するフェーズ。関係の近いページ・情報素材を集め、グループ化し、「1行見出し」と「概要」をつけて分類、階層化、俯瞰して再編集する。

〇ノートにおける階層表現


 「ノートツール」のページやページ内テキストでの階層構造とは、次のように大中小分類などの階層(アウトライン)で配置することだ。

ページ、ページ内テキストの階層構造の例:

大分類AAA
中分類BBB
小分類CCC
中分類DDD
小分類EEE
大分類FFF
中分類GGG

○二次情報から意味を生み出す、情報をつなぐ、関係づける、離合集散を繰り返す


0)基本方針

・情報をして語らせ、グルーピングを繰り返す
 - 自由にサイクルを行き来しながら繰り返し、情報をして語らせ、情報やグループ間の関係を相互作用させることによりしだいに形づくっていく。必要以上に収束させず、発散的に、ヒトの無意識のフィルタリング能力である「暗黙知」と「美意識」、「類推」と「連想」、アブダクション(仮説推論)を活躍させる。
 - 情報が語ることを聞き、情報自身に編集させ、動的な関係と相互作用を発見的に見出だし、意味を生み出すリズムを繰り返す。
・グルーピングのタイミング
 - スクラップする都度や1週間毎などの定期的な編集タイミングを決めて自分のリズムをつくる。適宜実施していいが、ためすぎると編集が負担になる、情報収集の負担にならない自分のリズムをつくるといい。
・情報素材を移動せずに、リンクやコピーを活用してもいい
 - 必要ならばコンテンツ間でリンクをはってもいいし、いっそのこと同じ文章をコピペてするのもいいだろう。

1)グルーピングと分類・階層化

 「情報素材」の関係を見極め、グループをつくり、分類と階層化を行う。

1-1)小グループをつくり、1行見出しと概説をつける
・関係の近い情報素材(ページ、情報素材)を集め、その集団に関係の意味を要約して仮の「1行見出し」をつける。この「関係の近い」とは「属性の分類」だけでなく「類似」や「類推」なども含まれる多面的な関係としてとらえる
・むりやりどこかのグループに入れようとせず、はみだしたものは中大グループに入れればよい。

2-2)中グループをつくり、1行見出しと概説をつける
・関係の近い小グループを集めて中グループをつくり、1行見出しと概説をつけ、階層構造(アウトライン)とする。
・むりやりどこかのグループに入れようとせず、はみだしたものは大グループに入れればよい。

1-3)大グループをつくり、1行見出しと概説をつける
・関係の近い中グループを集めて大グループをつくり、1行見出しと概説をつけ、階層構造(アウトライン)とする。
・ツールが許すなら、必要に応じてさらに階層を深くしてもいい。

1-4)整理
・大中小、上下、親子、部分集合などでグループ化し、階層構造で関係づけ再整理する。
・複数のグループに所属する情報素材や小グループがある場合には、リンクやコピーにより多重所属させる。
・このグループがどのようなメッセージを発しているかを見極め、特徴やアイデアなどの気づきなどを追記する。自分の意見には末尾に(自)などのタグを付ける
・アイデア、参考書籍、用語、未分類、宿題、雑記、その他、バックアップ、ゴミ箱などの分類をつくっておく。最初の書き出しを「参考書籍」や「雑記」とし、編集を加える際には「バックアップ」にコピーを残し、いらなくなったページは「ゴミ箱」に保管しおくなど運用を工夫する。

2)新たに発生した関係に気づき、再編集

 1)で分類・階層化したグループを横断的に、俯瞰的に眺めることにより再編集する。
 ・新たな関係に気づく
 ・新たな発想を思いつく
  ⇒1行見出しだけでもいいので書き出して、1)のグループに編成する。
  ⇒自分の発想、意見には「1行見出し」や「内容」記述の末尾に(自)などのタグをつけて区別する。
  ⇒見いだした「新たな関係」や「新たな発想」が新たな構造を生み出す原動力となる。1)で無理やり収束させようとせず、相互作用を働かせ関係を動的に編集する。

3)定期的なみなおし

・書き込んだ内容を1週間、1か月程度でもう一度見返してみると、すでに他人の意見になっていたり、つまらない内容だったということもある。何を意味しているのか、なぜかを問い直し、内容を修正し、「ゴミ箱」などを含め分類の見直しをする。

4)俯瞰する

 ある程度グルーピング・分類・階層化を繰り返していると、全体や部分の傾向が見えてくる。その発する特徴・特性をとらえ、ページ間の関係、ページ内の情報素材やグループの関係を俯瞰し、類似、類推、連想、新たな課題・仮説設定を試みる。


 脳と外部のノートを連携し、情報を意味的な単位に文節し、親近感のあるものを発見してグルーピングして、構造性を殺さない「1行見出し」を選び、時空間的関係と相互作用から意味ネットワークを動的に構築して読み解き、その意味するところに気づき仮説を生み出す能力を総合的に活用して編集する。

 ここまでの編集プロセスを物語に喩えてみよう。読み解く対象は物語の「世界」を、ページは「各シーン」を、情報素材は「キャラクター」を、情報素材の関係は「キャラクター間のコミュニケーション」を、ページ内、ページの並びは「ストーリー」を、そして貴方が「語り手」となり物語を紡ぎだす。




参考書籍:
[1] ジェームズ・W・ヤング(1988), "アイデアのつくり方", 今井茂雄訳, 阪急コミュニケーションズ
[2] 川喜多二郎, "発想法 -- 創造性開発のために --", 中央公論新社, 1976(改)
[3] 梅棹忠夫(1969), "知的生産の技術", 岩波書店
[4] 外山滋比古(1986), "思考の整理学", 筑摩書房
[5] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫


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アイデア・プロセッシング実施方法(3):本に意見を求める読書

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アイデア・プロセッシング:
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Step2: 情報散策
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 未来を読み解くとき、基礎知識として多くの本を読むことは避けられない。大量の書籍の中から良書を探し、効率よく読み進めるためには読書のテクニックが必要となる。

Step2: 情報散策


●本に意見を求める読書


○効率よく本を読むということ


 読書は「始めから終わりまでじっくりと読む」、「何度も読み返す」ことが必要だという考え方がある。本と向き合い、著者の伝えたい内容を理解するために、自身の中で熟成するために必要なプロセスだ。

 一方で、世の中に大量の本が存在し、良書も悪書も混在している状況で、まずは数をこなすことから始めみるのは悪くない。そして、時間がなくてなかなか本を読むことができない方に、本によって読み方を変える読書をお勧めしたい。最初から最後まで熟読しなお何度も読み返す本もあれば、必要な部分を参考意見として流し読みする本がある。途中でダメだと思えば「つん読」や「捨読」に回してしまっていい。自分なりの強弱をつけて、取捨選択する読書だ。

 読む姿勢を変えてみることも必要だ。「自身の問いと仮説をもって主体的に本に意見を求め、考えを掘り下げることを目的とする」読書では、主体的に「問い」や「仮説」をたて、意見、解説、反論を求めて著者と議論を繰り返し、「気になる」情報を積極的に収集して、自身の思考を拡張する

 本の読み方を、「読前」「読中」「読後」「再読」という4つのフェーズに分けて解説する。「読前」で本の内容の仮説をたて、「読中」で議論を繰り返し、「読後」にふりかえり切り貼りしてノートに落とし込み、ときをおいて「再読」する。

○「読前」フェーズ (拾い読み、下読み、読書エネルギーの最小化)


 「読前」は、本の概要をつかみ「読後に得られるもの」の仮説を描いて、「読中」の読み方に強弱をつけてテンポ良く読み進めるためのフェーズだ。面倒なようだが、全体的な読書のスピードと理解が圧倒的に変わってくる。さらに、amazonの書評を拾い読んでおくのも、複数の感想・要約によってポイントがつかめるのでお勧めしたい。

1)時間: 30分以内

2)目的: 著者との間に関係を築く、「読中」に向けた感覚をつかむ

3)視点
・自分
 - 自分が期待する内容、何をつかみたいと思っているかを探索
 - 面白そうだと思った目次やキーワードを確認
・著者
 - 著者が執筆した狙いや動機を推測
 - 何について書いたものであるか、構成、部分とのつながり(ネットワーク)を把握

4)組織的な拾い読み
・タイトル、目次
 - 大見出し、中、小の順に確認する
 - 本の構造と概要、関係を把握する

・索引
 - キーワード、専門用語を確認する

・まえがき、あとがき、各章の最初や最後
 - 気になった部分を拾い読む

5)気になった部分をノートに記入
・キーワード: 内容を代表する言葉
・補足: 「キーワード」の言い換え・補足、概要説明
・連想: 自分の解釈から生じる新たな言葉・概念・連想(末尾に「(自)」などの記号をつけておく)

6)仮説を描く: 「読後に得られるもの」の仮説を書き出しておく


○「読中」フェーズ


  「読前」に全体の構成を理解しているのでサクサクと読み通せる。

1)時間: 30分~1時間(徐々に30分に近づくように)、熟読する場合でも数時間で終わらせる。

2)ざっと一読
・好みと直感でテキストを選び、ざっと一読
・気になったテキストにマーカー、キーワードに○、重要な段落の上に横線を記入
・メモを記入; 重要なポイントの要約、疑問、思いついたこと、意見、用語説明など
・「読み返し方」を決める
 - つん読: 「読前」で中断
 - 速読: 流し読み、必要なポイントを切り貼る(30~1時間)
 - 抜読: 重要な個所を熟読
 - 熟読: 全体を熟読

3)読み返し
・ラインやメモ、目次を羅針盤にして読み返す
・重要なテキストや図をノートに切り貼る(必要なら数ページにわたるボリュームでもいい)
・構造(見出し、概説)をつかみノートに記述する
・キーワードの理解を深め説明、補足、意見をノートに記述する
・自身で追加してノートに記述する
 - 疑問、分かったこと、意見
 - 類推する、連想する、仮説をたてる
・6W1H+Rをノートに記述する
 - Where,When:どのような環境や背景か、発生条件はなにか、いつ、どこで
 - Who:誰が、何が
 -  Whom:誰に、何に
 - What:何を(する)
 - Why:なぜ
 - How:どのように
 - Result:どうなるのか、どうなったか
                
4)あえて寄り道をする
 本を読んでいると、何かを思いついたり、他の本が気になったりすることがある。そういうときは我慢せずに、寄り道を積極的にすると発想が広がる。

○ 「読後」フェーズ


 「読中」を振り返り、気がついたことをノートにメモする。

1)時間: 適宜

2)読前・読後比較
 「読前」の仮説を振り返り、自分の問題意識を読前、読後で比較する。

3)自分のテーマへの置き換え
・アナロジーによる連想、似たものを探す
・自分のテーマを振り返り、得られたことをノートに記述する
・他の本との関係を俯瞰し、必要に応じてリンク、コピーを付け加える
・新たに生まれたアイデアの断片の周辺に範囲を広げ、もしくは深くもぐるため、情報探索範囲を横に、縦に、斜めに広げ収集する

4)書籍情報の記録
 読んだ本は、引用書式で記録しておく。
    ex. 著者名(出版年), "タイトル", 翻訳者, 出版社

5)新たな「本の散策」へ
・ 関連する本を探す
・ 新たな疑問、新たな仮説をたてて、新たな「本の散策」へ

○「再読」フェーズ


 読んでいるときの状況や得られた知識によって、まったく違った感想、示唆が得られることが多い。都度、再読し、ノートを再整理するといい。

・1ヵ月、半年、1年後に読み返す
・何回も読み返す
 自分のテーマに重要な影響を与える本は何回も読み直すことが多い。特に含蓄の深い本は、再読のたびに見え方が変わってくる。本書でいえば、「銃・鉄・病原菌」「グーテンベルクの銀河系」「進化の意外な順序」「知の編集工学」などがそれだ。

 本の読み方を工夫することにより、本の散策を効率化するだけでなく、理解を深め、そしてなにより本に興味がわいてくる。本書を執筆するにあたり、「本を読む本[1]」、「探究型読書[2]」を再確認すること、特に「読前」フェーズを見直すことが非常に役にたった。面倒でも、できるところから少しづつトライしてみることをお勧めしたい。




参考書籍:
[1] M.J.アドラー, C.V.ドーレン(1997), "本を読む本", 外山滋比古, 槇未知子訳, 講談社
[2] 編集工学研究(2020), "探究型読書", インプレス
[3] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫


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アイデア・プロセッシング実施方法(2):情報散策における「本の探し方」

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アイデア・プロセッシング:
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Step2: 情報散策
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 未来を読み解くとき、異なる知識をベースにして「類推」と「連想」、「アブダクション(仮説推論)」により仮説を設定して読み解いていく。アスリートにおける基礎体力と同様に、「知識」・「暗黙知」の質と量をバランス良く鍛え続けることが必要となる。そのための手段が「書く言葉」である本との対話だ。

Step2: 情報散策


●本の散策


 「本の散策」では、「著者の意図を理解し、知識を吸収する」のではなく、自身の問いと仮説をもって主体的に本に意見を求め、考えを掘り下げることを目的とする。本書では、複雑な世界に対応するヒトの能力を「ヒトエンジン」と呼び、ヒトエンジンを活用する方法の一つが「本の散策」だ。何かそこにヒントがあると直感した本を手にとり、「発見」のための触媒として本を利用し、積極的にヒトエンジンを活用する。

○「本」における「ヒトエンジン」の活用


 個人で取得できる知識には限界がある、そうかといって自分だけの調査チームを編成することや、おかかえのシンクタンクを用意することは難しい「本」には、筆写や編集チームがついやしたデータ収集、編集、構成の時間、ヒトエンジンのフィルタを通して体型づけられた情報がつめこまれている。自身の表現能力よりも、著者が悩んで選び出した言葉の方が適切で分かりやすい場合も多い。表現したいもの、実現したいものを見極め、それを具体化するためならば他人の力を積極的に利用する。それにより、限られた時間の中で自分の限界を大きく広げることが可能となる。

 「本の散策」で得た知識や知恵や発想を「ノート」にスクラップすることにより、仮想的にヒトエンジン・チームを編成して、複数の視点で議論させたり意見を聞くことが可能となる。「本を散策」している時々の視点、立場を切り替えて、分身をつくり意見を交わす。

ヒトエンジンを活用する「本の散策」:

・著者の言葉や考え方を借りながら、自分の中にある問題意識を発見する
・著者の言葉や思考を「仮の器」として使わせてもらう
・自身の仮説に対する意見を求める

○本の探し方


 過去から現在までの様々な分野の本に、広く編集的に意見を求める。個々の専門分野はもちろんだが物理や生命などの自然科学、社会・経済、未来予測や複雑系の捉え方(ときに哲学、宗教、芸術)などの幅広いジャンルに意見を求めるといい

 「何か気になる」、「好みだ」、「ピン!とくる」という直感をもとに、本を散策し選んでいく

1)手にとって確認する
 本を散策する際には、実際に手にとって確認できる図書館や書店を利用できるといい。図書館にない場合でも、大抵は市内・県内のネットワークから取り寄せてくれるので活用したい。

2)散策するための軸をたてる
 積極的に自分で「本の散策」の「軸」をたてて、その周辺を探る

 ・「問い」を探る
  教科書では、見逃しがちなテーマにあえて「なぜ」と問うてみる。

  例えば:
   - なぜ、共産主義よりも資本主義の方が経済的に優位にたてたのか
   - なぜ、農業は1万年前というタイミングで始まったのか
   - なぜ、産業革命は18世紀イギリスから発生したのか

 ・「ルーツ」を探る
  何かをテーマとして定め、それが起きたもととなる歴史を探る。

  例えば:
   - 知的生産性のためのコンピュータのルーツ
   - ヒトと道具・メディアとの関係のルーツ

 ・「仮説」を探る
  自身で「仮説」をたて、それを補強し、解説し、反証して広げてくれる本を探る。

  例えば:
   - 産業革命の背景には、「大きな壁」、壁の内側で広がる「ネットワーク」、「急激な変化」と「突破口」となる要因があったのではないか。

3)キュレーターに聴く
 本を探すときには、ヒトエンジンのフィルタをぜひ活用したい

 ・気に入った本の参考書籍
 ・Webページ
  - 千夜千冊、松岡正剛の千夜千冊 (isis.ne.jp)
  - Wikipediaの参考文献
  - 自分が良書であると思う本を紹介しているWebページ
 ・amazonのお勧め、書評
  - あなたへのおすすめタイトル、この商品に関連する商品
  - amazonの書評内での別本の紹介
 ・推薦本
  気に入った著者のお勧め本など、紹介者の概説などを参考に

  例えば:
   - 本書の「お勧めの10冊」
   - 池上彰の「世界を変えた10冊の本」

4)自身の直感に聞く
 ある程度、本を読み込んでいくと、タイトル、概要や目次を見るだけで、自分が探している本かどうかということが直感で分かるようになってくる。そうなればしめたもので、自分の感性に従ってピン!とくるものを泳ぐように散策できる。

5)評価を参考にする
 amazonの商品説明、書評を事前に確認しておくと参考になる。

 ・書評は★5つが必ずしもいいわけではないが3.5以下で良書に出会える確率は低い、また★3や★1~2の書評を参考になぜ低評価をするのかを確認する。
 ・可能ならば、学術的にどのような欠陥があるか、どのように期待外れだったか確認しておくといい。




参考書籍:
[1] M.J.アドラー, C.V.ドーレン(1997), "本を読む本", 外山滋比古, 槇未知子訳, 講談社
[2] 編集工学研究(2020), "探究型読書", インプレス
[3] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫

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プロフィール

佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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