「美しい」と感じる能力

ヒトには「美しい」と感じる能力があります。自然のなかで様々な色が交じり合う風景、昆虫や鉱物の模様、さらにヒトが表現する芸術(絵画・音楽・文芸など)が奏でる旋律の中に「美しさ」を見出します。

一方で、芸術作品だけでなく、多くの研究者や技術者、プログラマー、学生たちが、新しい発想や道筋を得た時に「美しい」と感じる瞬間(エウレカ!、Ahaなどの感嘆)を体験しており[1]、暗黙知を活用して正しさを「直感」する能力にもかかわっています。

ヒトの「感情」は、言葉に翻訳していては間に合わない事象に、少ないエネルギーで即座に対応ためのイメージの分類装置として機能します[2]。「感情」の一つである「美しい」もまた、自然から分泌される諸法則を発見する[3]分類装置として進化してきたと考えられます。一方で、その基準は、時代や地域、文化などの周囲の環境に影響を受け、適応し、変化と安定を繰り返しています。

本書のテーマである「ヒラメキ」において、「美しい」と感じる能力は、個人においては、暗黙知というイメージの集合をもとに「問題解決の道筋を見出す」「発見の正当性を感知する」際の直感的な分類装置=発見的評価フィルタとして機能し、「美しさ」の基準を共有する集団においては、新たな発想を受け容れる際にその有用性を選別するための保守的評価フィルタとして機能すると考えられます。

 

今後、「ヒラメキ」における、「美しい」と感じる能力の役割についても整理してゆきたいと思います。


参考文献:

[1] アーサー・ケストラー(1967), "創造活動の理論", 吉村鎮夫訳, ラティス

    Arthur Koestler(1964), "The Act of Creation", Hutchinson 

[2] - アントニオ・ダマシオ(2019), "進化の意外な順序", 高橋洋訳, 白揚社

    Antonio Damasio(2018), "The Strange Order of Things: Life, Feeling, and the Making of Cultures", Pantheon

[3] ロジェ・カイヨワ(1972), "自然と美学 --形体・美・芸術--", 山口三夫訳, 法政大学出版局

    "Roger Caillois(1962), "Esthétique généralisée", Gallimard



目次(案)

フューチャー・リテラシー

-- 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で読み解く過去・現在・未来 --


前編:「相互作用」の歴史に学ぶ

一章 【範・縁】 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」138億年

 物理世界では「相互作用」、生命世界では「コミュニケーション」が「個」を繋ぎ、ネットワークのパターンを描く。「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の視点から宇宙・生命・社会のビッグストーリーを俯瞰する。

 1.1 「宇宙」の形成
 1.2 大量絶滅のたびに急激に進化する「生命」
 1.3 激動の波に適応する「社会・経済」
 1.4 ヒトと共進化する「人工メディアとネットワーク」


後編:【ミクロ・マクロ・ネットワーク】で織る未来 

 「ひらめき」は未来を形成する最初の一歩だ、その一歩を踏み出すからこそ未来が描かれてゆく。「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で読み解く「未来の種」の発想法と具体例について示す。

二章 【型・編】 未来を読み解くための散策法 

 2.1 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデル
 2.2 フィールドワークと情報編集
 2.3 アイデアプロセッシングの道具

三章 【顧・紡】 1990年から観た未来

 3.1  ジャスト・シード

 3.2 「未来の種」を育てる

四章 【活・織】 2010年から描く未来 

 4.1 計画されている「未来の種」
 4.2 コミュニケーション・インフレーション 
 -- 「知」の断片化がもたらすヒトの「未来」--

五章 【環・綾】 螺旋:知の淵を渦巻く振り子


「ヒラメキ」を誘発する「暗黙知」

「暗黙知」は、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」同様に、本書の主題となります。


暗黙知とは

 経験的に使っている知識だが簡単に言葉で説明できない知識[1]


「暗黙知」の分類

「暗黙知」は、その活用方法から以下に分類されます。

1)身体知

 例えば、顔の識別、自転車の運転

2)経験知(ノウハウ)

 例えば、職業的な技術の習得

3)発明を促す知識

 日本においては、野中郁次郎の影響もあり暗黙知=経験値ととらえる方も多のですが、本書ではマイケル・ポランニーが主題とする「発明を促す知識」としての「暗黙知」に着目します[2]
 ポランニーは、問題の探究における3つの段階に「暗黙知」が活用されるとします。
1)問題を妥当に認識する
2)問題解決の道筋を見出す
3)発見の正当性を感知する

脳内での「暗黙知」

 「暗黙知」が脳内でどのように蓄積され、活用されるかについては、アントニオ・ダマシオの「進化の意外な順序」で詳細化に記述しています[3]。「暗黙知の次元」「進化の意外な順序」ともに読み解くのが難しい書籍ですが、本書を通してこれらの意図することを理解できるようにしたいと思います。


参考文献:

[1] ウィキペディア, "暗黙知", 2020/4/11

[2] マイケル・ポランニー(2003), "暗黙知の次元", 高橋勇夫, ちくま文芸文庫

        Michael Polanyi(1966), "The Tacit Dimension", London, Routledge

[3] アントニオ・ダマシオ(2019), "進化の意外な順序", 高橋洋訳, 白揚社

       Antonio Damasio(2018), "The Strange Order of Things: Life, Feeling, and the Making of Cultures", Pantheon


小さな書斎1

執筆スペースを整理しました
なんでも形から入るところがあって、まずは執筆環境を整えるところから。
といってもデスク周りだけなんですが。
・必要な本がすぐに取れる
・PC、iPadで編集できる
・立ち/座りがスイッチできる
(本当は、資料を立体的に空中に置けるスペースが欲しいんですがおいおいDIYで)

当面はこんな感じ

1)椅子での執筆
書斎パノラマ


2)立って執筆
書斎立ち2

【閑話】ミクロ・マクロ・ネットワークとは

ミクロ・マクロ・ネットワークとは


「ミクロ・マクロ・ネットワーク」を説明する際に、「ミクロ経済」「マクロ経済」のこと?と聞かれることがあるのですが、とりあえずは、そのようにとらえていただいて結構です。

もう少し説明すると、分子のミクロな(部分の)動的ネットワークが、物質としてのマクロな(全体としての)性質を持ち、また物質どうしのマクロな動的ネットワークを形成します。同様に、物質のネットワークが生命を、生命のネットワークが社会を、社会のネットワークが経済や国家を形成するようなミクロ・マクロな階層構造をなすネットワークを総称して「ミクロ・マクロ・ネットワーク」と呼びます。

ミクロ・ネットワークを構成する「部分」をつなぐ「リンク」は、物質世界では「相互作用」、生命世界では「コミュニケーション」と呼ばれます。また、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」では「創発[1]」という性質が現れます。

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、今井賢一、金子郁容の「ネットワーク組織論[2]」において用いられた「ミクロ・マクロ・ループ」に、さらに源流をたどると清水博の「フィードバック・ループ[3]」、アーサー・ケストラーの「ホロン[4]」に影響を受けています。


ミクロマクロネットイメージ

   「ミクロ・マクロ・ネットワーク」のイメージ



用語: 

創発[1]
創発(そうはつ、英語:emergence)とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。局所的な複数の相互作用が複雑に組織化することで、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される。

 


参考文献:

[1] ウィキペディア, "創発", 2020/4/5

[2] 今井賢一, 金子郁容(1998), "ネットワーク組織論", 岩波書店

[3] 清水博(1990), "生命を捉えなおす", 中公新書

[4] アーサー・ケストラー(1983), "ホロン革命", 田中光彦, 吉岡桂子訳, 工作舎




プロフィール

佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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