気づきのあるネットワーク・サービス:コンセプトの具体化

 クレーム(短文)とネーム(呼称)をもとに、文章としてコンセプトを具体化していく。

Step2:コンセプト編集


●言葉で表現する:


○アイデアを言葉で表現する


クレーム(短文): 通話している時に周囲いる人に気づくことができるネットワークサービス
ネーム(呼称): AwarenessNet(気づきのあるネットワーク)

○6W1Hで表現する


気づきのあるネットワーク(AwarenessNet)とは何か
いつ(When): (知人を指定して)電話で話している時に ⇒「電話をした後に」に訂正
どこで(Where): 通話空間で
誰が(Who): 私が
誰に(Whom): 知人や興味が同じ人に
何をする(What): 話しをする、気づく
なぜ(Why): 新たな出会いのため
どのように(How): 周囲を見渡し近くにいる人を探して

○曖昧な言葉をより明確にする


いつ(When): (知人を指定して)電話で話している時に
 ⇒電話をしている時に気づいても、かけなおせるわけではないので、「電話をした後に」に訂正

なぜ(Why): 新たな出会いのため
 新たに出会って嬉しいのはどのような人か?
 ⇒自分の電話メモに記載されていない知人
 ⇒興味が同じ人

どのように(How): 周囲を見渡し近くにいる人を探して
 近くにいる人の定義は何か?
 ⇒自分の「知人」との重なりが大きいほど近い
 ⇒自分の「興味」との重なりが大きいほど近い

○派生アイデアメモ:


 この段階で思いつく別のサービスやキーワードがあれば、将来役立つかもしれないのでアイデアメモに残しておく。
・現実世界で道を歩いているときに、近くの知り合いを表示
・通話中に通話相手との関係をもとに、知人や同じ興味の人を表示、同時接続

●コンセプトの具体化:

 興味を学習し、興味をフィードバックするメタネットワーク


〇「高速ネットワーク」上での生活はどう変化するのか

通信速度が1Mビット/秒となった時代は生活空間の一部をネットワーク上に移動する。誰もがネットワークにより生活(通話、購入、閲覧)する時代を想定。
・AwarenessNetの出会いの対象も「通話」だけでなく、「購入」「閲覧」も含めて考える。


○「興味」の定義

 サービスの利用者を基点として、距離が近い「ヒト」「モノ」は「興味」が近い。

○「距離」の定義

 AwarenessNetの肝となる「近さ=距離」をどのように求めるのかを具体化する。

1) 友人候補との距離:

・「通話回数が多い通話相手=友人」は、通話回数順に距離が近い。
・他者と友人と比較し、「同じ友人と通話をしている人=友人候補」のうち友人の重なりの多い順に距離が近い。
※現代ならFacebookの「友達かも?」と同様

2.同じ興味の人との距離:

・自分が購入しいる「商品リスト」の中で、「同じ商品を買っている人=興味が同じ人」のうち商品の重なりが多い順に距離が近い。
・Webページの閲覧でも同様。

3.おすすめ商品との距離:

・2)の『「興味が同じ人」が買っている商品=おすすめ商品」』のうち「興味が同じ人」の重なりが多い順に距離が近い。
※2)の「商品リスト」を単品にすると、現代のamazonの「よく一緒に購入されている商品」と同様

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する


■構成要素:
 ・ミクロ: 人、商品、Webページ
 ・コミュニケーション: 通話、購入、閲覧
 ・マクロ: 興味ネットワークにより形成される多重集団
  - 通話:友人の集団
  - 購入:同じ興味の集団
  - Webページ:同じ興味の集団
 ・メタ・ネットワーク: 電話、インターネットをベースにしたメタネットワーク=興味のネットワーク
 ・環境: 興味(アクセス履歴)によって形成される新たな社会・経済
 ・技術・社会背景: 通信速度が1Mビット/秒、誰もがネットワークにより生活(通話、購入、閲覧)する時代を想定。

■ネットワークの特性:
 ・多次元性・多重所属: 人は無数に興味属性を持ち、複数の興味ネットワークにつながっている
 ・フィードバック・ループ: 「通話、購入、閲覧」と「おすすめ紹介」のフィードバックループ
 ・適応・動的特性: 
  - 「通話、購入、閲覧」によって変化する「おすすめ紹介」
  - 「おすすめ紹介」によって変化する「興味の集団」
  ⇒動的に変化する交友関係(商品、Webページを含む)
 ・可塑性と学習: 
  興味を学習し、興味をフィードバックする動的な学習ネットワーク
  - アクセス履歴として形成されるネットワーク関係
  - 興味によって形成されるメタネットワーク
 ・恒常性・保守性:
  新しいサービスとして具体化する際に留意すべき項目
  - 通話履歴のサービス利用に対する反発
  - 通話している周囲の情報をフィードバックすることのわずらわしさ
   ⇒新サービスの利用者に新しいメリットをもたらす必要がある



●コンセプトのまとめ:


 アクセス数や購買数で定義した「距離」をもとに、「友人候補」「お勧めの商品(Webページ)」「お勧めの人」を紹介するネットワークサービス。

協調フィルタリングのイメージ
          AwarenessNetのサービスイメージ[2]


気づきのあるネットワーク・サービス:アイデアの整理
気づきのあるネットワーク・サービス:コンセプトの具体化
気づきのあるネットワーク・サービス:ビジネスの具体化

参考文献:
[1] 市川裕介(2000), "~ECサイトのパーソナライズ化とサービスレベルの向上でOne-to-Oneマーケティングを実現~ :純国産のパーソナライズエンジンAwarenessNet", ITmediaエンタープライズ, 2000年12月19日

[2] 高木浩則, 市川裕介, 木原洋一(2003), "書籍ECサイトにおけるレコメンデーションシステム", NTT技術ジャーナル, 2003.11, p30-33
jn200311030.pdf (ntt.co.jp)

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, 未来, ミクロ・マクロ・ネットワーク, 未来を読み解く, コンピュータ

気づきのあるネットワーク・サービス:アイデア編集

第三章 1990年から観た未来

  本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。
 

3.1 商品として具体化したもの

パーソナル通信エージェント: CardTerm with Mackun(1988年)
・気づきのあるネットワーク・サービス:AwarenessNet(1995年)

———————————————————————————————-

 インターネット普及前夜の1990年代に未来を読み解き商用化まで展開した事例について3Stepに分けて紹介する。漠然としたイメージを具体化していく際に、当初のイメージから形をかえることが多い、それはアイデアが現実環境に適応していく過程として自然な変化である。

Step1:アイデアの整理
Step2:コンセプトの具体化
Step3:ビジネスの具体化

Step1:アイデア編集



●背景(1995年):


○環境条件

  楽天が発足する5年前、googleが発足する2年前の1995年、通信速度は現在の1万分の1にもみたない、個人や企業の情報発信がこれほど大量となるとは想定できず、Webページへのアクセスも1万件もあればヒットサイトだった。通販やCMがネットでビジネスになるかはまだ皆半信半疑、新聞やTVを超えるのは夢物語だった時代。
 研究所では、通信速度が1Mビット/秒となる光回線を各家庭に配線するという(当事としては)とんでもない目標にむけ、電話に代る通信サービスはどのような変化を迎えるのかを模索していた。

○他の研究動向


・多地点臨場感TV会議、ビデオオンデマンド(Netflixの原型)など高速=動画という発想に注意が向けられている。医療用のレントゲンなどを利用した遠隔医療も考えられているが、1M程度ではまだ実用的ではない。
・オフィス電話や一般の電話交換はすでにディジタル化されていて、1Mビットとなった際にはインターネット上での電話通信も想定する必要がある。


●お題(テーマ): NTT研究所にて

 ⇒最終到達フェーズ: レコメンデーション・エンジンの商品販売
 通信速度は、1Mビット/秒(現在の1000分の1)となり、インターネット普及した将来、電話に代る新しいコミュニケーションサービスを創る。


●材料・素材:


 ○現状把握


・インターネットの通信速度は、早くても128kbpsが限界。
・利用者は極一部のコアユーザのみ。サイトのアクセス数は最大でも1万人に届かない。
・ネット通販のサイトはamazonなど一部で運用されはじめたが普及するかどうか怪しい。
・サイト毎のアクセス数が多くても1万人程度なため、ネット広告の有効性を疑問視する意見が多い。
・企業からの情報発信もされているがあまり閲覧されていない。

○想定するプラットフォーム


・とりあえず電話網を想定


●着想:


○電話における「バーチャルなリアル」とは?


 「バーチャル・リアリティ」をやりたいという声が出発点だった。電話ネットワークにおける「バーチャルなリアル」とは何なのか。現実に置き換えてみて足りない視点はないか、我々は電話網を使って遠隔で世界中の指定した人と通話できているが、それは現実空間のように周囲の雰囲気は伝わってこない。

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルで考えてみる


 ネットワークのつながり:
 ・ミクロ: 人
 ・コミュニケーション: 指定した相手との通話による情報交換
 ・マクロ: 交換機によって繋がった通話(線)の集まり
 ・メタ・ネットワーク: 電話網をプラットフォームとした、メタな通話とは何か? 
 ・環境: ?電話をしている時の周囲の環境ってなんだろう?
 ・技術・社会的背景: 通信速度が1Mビット/秒となった時代に人々の生活はどうなるのだろうか?

 メタな通話への問い:
 ・多次元性・多重所属: 個人が多重に所属する交友関係は電話帳だけで表現できているのか?
 ・フィードバック・ループ: メタ通話におけるフィードバック・ループとは?
 ・適応・動的特性: 
  - その時々に繋がる通話が動的に変化しているが、動的に変化する周囲の交友関係、興味は表現できているのか? 
 ・可塑性と学習: 
  - 動的な繋がりを記憶して活用できていない。通話履歴を記憶して学習して応用できないか?
  - 動的に変化する人の交友関係、興味を学習できるメタ通話とは?
 ・恒常性・保守性:
  - 通話履歴のサービス利用に対する反発
  - 通話している周囲の情報をフィードバックすることのわずらわしさ

※メタな通話: 電話網の上で実現されるより高次元の通話


●言葉で表現する:


○やりたいことをクレーム(短文)とネーム(呼称)で表現する


 電話における通話では、既知の指定した相手とだけし話しをすることしかできない。現実世界では、知り合いが近くを通れば声をかけたり、子供と遊んでいる姿、仲の良い老夫婦などとの出会いがある。電話による通話はリアルではなく、不自然なコミュニケーションだということに気づく。近くにいる人と出会うことはできないか?それが次の発想の分岐点となる。

 ネーム(呼称): AwarenessNet(アウェアネスネット: 気づきのあるネットワーク)
 クレーム(短文): 通話している時に周囲いる人に気づくことができるネットワークサービス

周囲のひとたち
 周囲の人たちと出会う、気づきのあるネットワーク

フューチャー・リテラシー :インデックス
ミクロ・マクロ・ネットワークの解説

気づきのあるネットワーク・サービス:アイデアの整理
気づきのあるネットワーク・サービス:コンセプトの具体化
気づきのあるネットワーク・サービス:ビジネスの具体化

参考文献:
[1] 市川裕介(2000), "~ECサイトのパーソナライズ化とサービスレベルの向上でOne-to-Oneマーケティングを実現~ :純国産のパーソナライズエンジンAwarenessNet", ITmediaエンタープライズ, 2000年12月19日

[2] 高木浩則, 市川裕介, 木原洋一(2003), "書籍ECサイトにおけるレコメンデーションシステム", NTT技術ジャーナル, 2003.11, p30-33
jn200311030.pdf (ntt.co.jp)

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, 未来, ネットワーク, ミクロ・マクロ・ネットワーク, 1990年代, メディア, 技術, 科学

【閑話】未来を読み解くということ

 本書では、最終的に2060年の未来を読み解きたいと考えている。そのために何をすればいいかについて記述していきたいと思う。そんなことより、今何をすべきか、今顧客に提案するにはどうしたらいいかが問題なんだという方も多いだろう。未来を読み解くということは、2つの意味で、現代を読み解くということに通じる

【未来を読みとくことで、現在すべきことを見極める】
・未来に何が起こるのかを見据えて、現状を分析し、線で結ぶと数年先の未来に向けた方向性が明確になる
・時代の変化を先取りすることで、競合他者(社)に先んじる、準備をすることができる

●新しいビジネス・技術を創造するということ


 研究や開発をやっていると、「誰もやっていなくて、儲かるビジネスを創れ」という命が下ることがある。裏にはさらに、その提案が「社内のトップが皆賛成する」ものというオマケがついてくる。いやいや、それって「皆が賛同」している時点で誰もが思いつくよね。と。

「課題解決形の提案」がうまくいく例もあるだろう、それは「課題が明確」なビジネスであり、そこには競合他社がひしめき合って、投資をして、営業をして、戦国時代さながらのフィールドとなっている。もちろん本道として、そこを攻めていくことも大切だ。

 高度成長時代に技術と大量生産を背景にした手法から、少量多品種への転換して、これからは「シーズではなくてニーズ、顧客志向」だとか、「モノではなくコト」などとうたわれたがなかなかうまくいかない。現状分析が足りなくて遅れてるというのは論外として、大抵の場合は提案する側も、使う側も何が足りないのかがわからないのだ。また、闇雲に「新しいイノベーション」を求める姿勢も、ニッチな重箱の隅をつつきがちになる。

ここは、
自分が「面白い」「楽になる」「自然」と思える未来は何か
という創造の原点に立ちかえり、

アイデアというものは大概
・誰もが「すばらしい!」と合意するアイデアはすでに実施されている ⇒くじけない
・本当にすばらしいアイデアならば、同じことを考えている仲間がかならずいる ⇒仲間を探そう
・30年後に普及している技術は、今ここにある ⇒周囲を見回そう
というものだということを再認識することから始めてみよう。

そして本書ではさらに、
「ミクロ・マクロ・ネットワーク」という、過去から未来に至る韻律を読み取って、環境変化に適応する動的ネットワークの視点で、今後実現されていく道筋は何か?を見極める方法を提案したい。

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, 未来, ミクロ・マクロ・ネットワーク, 未来を読み解く

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデル解説(アイデア整理のテンプレート)

  今回は、「未来を読み解く」ために、筆者が使っている思考モデルである、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルを解説する。



 まず、「部分」があり、それらが相互に作用しあって「全体」の情報が作られ、それが再び「部分」に影響をあたえる。部分と全体との創発的な関係を通じて自在に変化しつつ、全体の秩序を形成してゆく。

●「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルの各要素と特性


◯概要説明


 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、未来の物語を読み解く際のアイデア整理において「喩え」て連想するためのガイドラインであり、チェックリストだ。すべてを網羅する必要はなく、臨機応変に適用してもらえればいい。生物進化や経済、脳に「喩え」て考えてみるのもいいだろう。すでに存在するコミュニケーションをベースとして、足りないコミュニケーションやメタ・コミュニケーションを創造するチェックリストとして活躍する。あまり細かいことは気にせずに、何だか違うかもと思っても、ムリヤリでいいので当てはめてみるといい。なんとかうめているうちに、新しい発想が生まれ、抜けているところに気がつくことができる。

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の構成要素とネットワーク特性について、「細胞と人」を例に概説する。

■構成要素:
・ミクロ: 細胞
・コミュニケーション: 細胞間の情報伝達
・ネットワーク: 細胞間のつながり
・マクロ: 人
・メタ・ネットワーク: 臓器のネットワーク、人間社会
・環境: 人間のおかれている外部環境(自然、社会など)
・技術・社会背景: 5万年前にホモ・サピエンスが誕生 

■ネットワークの特性:
・多次元性・多重所属: 地域社会、企業、趣味などさまざまな組織に多重所属
・フィードバック・ループ: 気温など外部環境情報、体温などの内部情報を取得して、動的に適応するなど。
・適応・動的適応: 気温の変化への動的適応、「発汗」「毛穴の収縮」「ふるえ」など
・可塑性・学習: 脳による記憶と学習により後天的に習得する適応能力など
・恒常性・保守性: 内部環境を維持する傾向。体温、血糖、免疫など
・変異要素: 「猿人からの突然変異でヒトが誕生した」など

ミクロ・マクロ・ネットワーク(会社)

       会社における「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の例


○詳細説明



 モデルを扱うには詳細な定義が必要という方に向けて、構成要素とネットワーク特性の詳細説明を行う。あまり定義や矛盾にこだわらず、喩えとして必要な時に参照して欲しい。


1.構成要素


1)個、部分(ミクロ):  


・コミュニケーションをする基本単位、コミュニケーションの主体。
まずは、誰かが(何かが)、誰かと(何かと)、つながりって話したがっているというところから始める。
・「個、部分」は個別の状態をもち、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」のなかで、独自の判断にもつづいて「情報」を取得し、発信し、状態を変化させる。
・同種、異種、捕食、上下、受益関係など、互いに異なるものを含む。

 ex. 人、細胞、生物、細菌、免疫細胞
 ex. 身体、組織、企業、国、生物のコロニー、種族

2)コミュニケーション(リンク):  


・二つ以上の「個、部分」や「全体」が情報や物を交換して、互いに影響を及ぼしあうこと
・物理現象においては「相互作用」、生命においては「コミュニケーション」

 ex. 電話で話すこと、Youtubeの動画を介した間接的なコミュニケーション
 ex. 血液にホルモン情報を流すことによる内臓間のコミュニケーション
 ex. 企業間のコミュニケーション

※参考:
 コミュニケーションには、「強いつながり」、「弱いつながり」、「柔らかいつながり」、「直接的なつながりと、間接的なつながり」がある。

3)ミクロ・ネットワーク(略称:ネットワーク):  


・二つ以上の「個、部分」が互いにコミュニケーションをとる経路、つながり、情報交換のためのインフラ。

 ex. インフラ(電話網、交通網、鉄道網、インターネット)
 ex. インフラを構成する交換機、電線、道路、サービスエリア、鉄道、駅、光ケーブル、ルータ、コンピュータなどの総体。
 ex. 宅配・郵便のネットワーク、物流などのインフラを利用したサービス

※参考:
 電話網、交通網、血流に「喩え」るとイメージしやすい。 
 現代のネットワークは動的に変化するものとしてとらえるとよい。ネットワークが使いやすくなるということは質的変化をともない、「個、部分」と「全体」の関係を再構築し、「個、部分」や「全体」のあり方を変える。

4)全体(マクロ):  


・「個、部分」のネットワークを利用したコミュニケーションにより形成される全体秩序、全体構造。
・「全体」は、全体秩序、全体構造を動的に変化する状態として保持する。
・ミクロで安定するシステム(ミクロ・ネットワーク)が、マクロレベルで観測できる性質を示す。

 ex. 人のネットワークによって形成された企業、社会・経済。
 ex. 細胞のネットワークによって形成された人

※参考:
「全体」の境界は固定的なものではなく、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」により常に再定義されるものとしてとらえるとよい。「部分」の性質の単純な総和にとどまらない性質が、「全体」の性質として現れる。複雑系ではこれを「創発」と呼ぶ。

5)メタ・ネットワーク(マクロ・ネットワーク):


・ミクロ・ネットワークをベースに構築される、マクロレベルのコミュニケーションのためのネットワーク
 ex. 組織ネットワーク、企業ネットワーク

6)環境:

  
・「ミクロ・マクロ・ネットワーク」が置かれている周囲の環境。
・「個、部分」と「全体」をとりまく外的な状況であり、「個、部分」と「全体」に「環境」に関する情報を提供する。

 ex. 企業、社会、経済、地球
 ex. 企業状況、社会状況、経済状況、地球環境
 ex. 周囲の気温、湿度、季節、空気

※参考:
 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」が適応する対象、進化モデルにおける環境、時間・空間的に変化する文脈であり、「個、部分」や「全体」の状態変化、ネットワークの変化を「環境」情報として取り込む情報統合の「場」。ミクロ・ネットワークによって形成される「場の情報」もしくは「雰囲気」をフィードバック情報として提供する。

7)技術・社会的背景:


・「ミクロ・マクロ・ネットワーク」でアイデアを整理する際の前提となる技術・社会的背景(技術、インフラ、政治・経済・歴史的な流れ)を想定。


3.特性

 
「ミクロ・マクロ・ネットワーク」を構築する際に、考慮すべき動的特性について解説する。

(1)多次元性、多重所属:  


 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、非常に単純化したモデルである。現実には、「個、部分」が、n次元空間で時間軸のつながりをもち、複数のネットワークに多重に所属する。

・n次元ネットワーク

 しばしば、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、n次元空間のネットワークを形成する。

・時間軸

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、動的に変化する「環境」に適応するため、常にエネルギーが最小となる均衡状態(安定状態)を模索し続ける動的な状態変化としてとらえられる。

・複数のネットワークへの所属

 しばしば、「個、部分」は複数の「ミクロ・マクロ・ネットワーク」に多重に所属する。

 ex. 同じ興味の人どうしをネットワークでつなぐと、人は複数の興味のネットワークに所属することとなる。

※参考:
 AとB,Cが近い関係にあるが、B,Cは非常に遠い関係にあるというように、「部分」間の関係の遠近は自由に設定することができる。
     ミクロ・マクロ・ネットワーク(多重所属)

        複数のネットワークへの多重所属



(2)フィードバック・ループ:  


「個、部分」と「全体」の間での情報のフィードバック・ループ。「個、部分」が主体的に行動する際に、「全体」の雰囲気や共通意識などのマクロ情報を常に察知しながら自らの行動を調整する。

 ex. 社会情勢に合わせて経営方針をたてる
 ex. 「環境」の変化に適応し、種を生存させるよう進化する
 ex. 「市場」は、情報を保存しフィードバックする「環境」としての側面と、価値の調整プロセス(市場機構)としての側面がある

※参考:
 フィードバック・ループを効率的に運用するためには、「全体」は「個、部分」に対して自身の状態を参照するための「情報交換の場」を設定することが有効である。

ミクロ・マクロ・ネットワーク(フィードバック)

        会社における情報のフィードバック・ループの例



(3)適応・動的特性:


 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、外部の「環境」変化に対して、エネルギーを最小化する動的均衡状態を探り、ネットワークを変更し、「個、部分」と「全体」の状態、ネットワークの接続関係を動的サイクルで調整し続ける。

 ex. 需要と共有のバランスを探る経済活動、環境変化への生物進化による適応

※参考:
 環境の変化が緩やかであり、ミクロ・ネットワークの状態が安定してきているならば、ネットワークの変化は緩やかなものとなる。急激な環境変化は、急激なネットワークの再構築を促す。

(4)可塑性・学習(ネットワークの記憶):  


 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」には、環境への適応に向けた変化をその可塑性により学習し、時空間を越えて継承する。

 - 「個、部分」と「全体」の状態
 - ミクロ・ネットワーク、マクロ・ネットワークの接続関係
 - 「全体」に集約された、「ミクロ・ネットワーク」の雰囲気や共通認識など統合情報

 ex. 脳の記憶、遺伝子の記憶、文化の遺伝子ミーム、道具と脳の共進化

(5)恒常性・保守性(ホメオスタシス):  


 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」が「環境」に対する現状での最適解となる均衡状態に到達すると、「環境」の変化に対して「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の状態を維持しようとする性質。恒常性・保守性を越える大きなエネルギーがネットワークに与えられて時に、新たな状態を創発する。

 ex. 体温維持、地球環境の恒常性

※参考:
 強力に安定したネットワークは、強いエネルギーを与えなければ次の状態に変化することはない。急激な環境変化は、安定したネットワークの保守性の臨界点を超えさせ、爆発的なネットワークの組換えを誘発し、新しいマクロな状態を創発する。
 技術ベースの製品やサービスを市場で「成功」させるための「壁(キャズム)」という表現がある。混沌とした混ざり合いの中で、新しいシステムが出現と消滅を繰り返したすえに、複数の環境変化要因が加えられた際に大転換が発生し、「キャズムを越え」て新しいシステムが急速に優位となるが、古いシステムも残り続ける。

(7)変異要素:


 急激な環境変化に適応するためには、ネットワークの一部に変異要素を発生させることにより、ネットワークの動的適応を促進する効果が期待できる。

ex. 特異エキスパート人材集団のプールと、必要とする組織・チームへの即時アサイン、支援体制の構築

4.革新的変化の視点


 環境に適応すべくさまざまなネットワークを広げるうちに超えることのできない【巨大な壁】につきあたる。【巨大な壁】の内側でネットワークは集散、拡大、刈り込みを繰り返しながら、環境変化に適応しながら【ネットワーク・プラットフォーム】を形成する。あるとき発生した【急激な変化・大災害をきっかけとして、プラットフォームをベースにネットワークの形を変え、【突破口】を捉えていっきに【巨大な壁】をつきやぶり爆発的な速度で新たなネットワークを形成し始め、革新的変化が爆発する
 ex. 生命誕生、産業革命

------------------------------------------------------------------------

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、部分(要素)に還元ようというのではなく、その関係性や動的特性、適応性に着目し、意味を読み取り、全体としてどのように環境に適応するのかという動的コミュニケーションに着目する。ネットワークに記憶し、集団に広め、ミクロとマクロのフィードバック・ループのサイクルが回るようになった時、そのネットワークはプラットフォームとして確立し、次の世代に向けた新しいステップを踏み出すことができるようになる。


参考書籍:
[1] 今井賢一, 金子郁容(1988), "ネットワーク組織論", 岩波書店

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、今井賢一・金子郁容の「ネットワーク組織論』で提唱された「ミクロ・マクロ・ループ」に着想を得て、1992年から修正しつつ利用しているモデルだ。本書における流動的で不安定な関係性のなかで、周囲環境に動的に適応する組織に関する考察は、現代でも十分に役に立つ内容であり、中古で安価に入手できるので一読されることをお勧めしたい。

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, 未来, 社会, ミクロ・マクロ・ネットワーク, 発想法

ミクロ・マクロ・ネットワーク: トマトは誰とどんな話しをしたいのか?

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、未来のサービスや技術を読み解くときに「喩え」て考える際に利用するモデルだ。「トマト」への適用事例で使い方を概観する。

 「トマト」生産は今後どのように変わっていくのだろうか、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」を使ったコンセプト発案の例を簡単に紹介する。アウトプットはサービス・コンセプトだ。

 

●トマトは誰とどんな話しをしたいのか?

トマトネットワーク


【ミクロなコミュニケーション】

 トマトは誰と話しをしたいのか?
 ・同じ畑の仲間のトマト
 ・野菜たち
 ・生産者、消費者
  - 生産者からの水・肥料やり、その時刻
 ・ドローン、ロボット
 

【どんな内容を話すのか?】

 n次元のつながり、時間軸、複数ネットワークを考慮する。
 ・トマトの健康状態: 害虫、病気、腐敗、傷、葉の色
 ・トマトの栄養状態: 硝酸イオン濃度、窒素栄養状態
 ・トマトのうま味指標: 糖度、糖酸比
 ・トマトの栄養素含有量: リコピン、グルタミン酸、リノール酸、ポリフェノール、他
 ・トマトから生産者へ: 寒い、苦しい、他
 

【トマトの置かれている環境】

 トマトのおかれている状況、周囲の環境。
 ・ビニールハウス内の環境:
  - 大気; 温度、湿度、炭酸ガス濃度、酸素濃度
  - 土壌の状態; 灌水、栄養、菌土
 ・ビニールハウス外の環境:
  - 天候、季節
  - 害虫、病気
 ・販売関連:
  - 販売ルート、ターゲット顧客
  - 全国のトマト生産量
  - 市場状況、経済状況、国内情勢、グローバル情勢
 

【マクロ:トマトが集まると】

 トマトのコミュニケーションから出現するものを俯瞰。
 
 ・トマトが植えられているビニールハウス
 ・生産者が管理する他のビニールハウス
 ・地域・全国のビニールハウス
 ・トマトがつくる国、経済、進化に「喩え」てみる
 

【メタ・ネットワーク】

 ・トマトの品質・特性のコミュニケーション
 ・トマトの育成ノウハウのネットワーク
 ・トマトの植付け、生産、宅配、調理家電、レシピ連携
 ・ビニールハウスのネットワーク
 ・トマトの品種群のネットワーク
 ・トマト生産地のネットワーク
 

【フィードバック・ループ、動的特性】

 ビニールハウス、生産者、消費者の動的な情報を集約して各々にフィードバックし、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」に動的に適応。
 最適な育成方法、出荷状況、品種改良のための情報共有、分析結果の共有によるノウハウ情報のフィードバック・ループを形成し、環境条件、顧客要望の変化に動的に適応。
 

【技術的背景】

・使えそうな技術:
 - 通信装:WiFi、ブルートゥース、インターネット、携帯
 - マイクロコンピュータ: 各種スモールPCボード
・道具・機械(詳細な調査要):
 - 防雨、防湿、防寒
 - ビニールハウス管理システム
 - ドローン、カメラ搭載ロボット
 - AI、ビッグデータ分析ソフト
 - インターネットに接続された調理家電

【社会的背景】

・人口減少
自動化コストが小規模農家には高額
  

●サービス・コンセプト例

  「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルから導く、サービス・コンセプトを例示する。

1)生産管理自動化、遠隔管理(生産者向け)
 - 複数の生産者が集まり集中管理センターを設け、トマトのビニールハウスの状況変化をモニタして、リアルタイムに酸素濃度、二酸化炭素濃度、温度、湿度をコントロールする。
 - 調査要:トマトの健康状況をリアルタイムに検査する技術、遠隔コントロールできる環境条件
 
2)ロボット、ドローンにより観察、作業の自動化(生産者向け)
 - 規格化された栽培ロボットネットワークによるノウハウの共有、集団学習
 
3)ノウハウネットワーク(生産者や品種改良者向け)
 - 全国のビニールハウスの出荷履歴、トマトの品質(健康、品質、旨味、栄養素)などと連動して、最適な環境コントロール条件をフィードバック。生産者間で共有、分析した結果を共有する。
 - 出荷情報:製品品質のサンプリング調査・葉による品質調査、販売状況(価格、出荷数、など)
 
4)仮想的な生存競争の導入(品種改良者向け)
 品質や人気、購買力が高い「トマト」が生き残れるという仮想的な生存競争を設定し、生き残った「トマト」のグループのフィードバック・ループ、AI分析、品種改良の自動化
 
5)顧客とのコミュニケーション(顧客向け)
 顧客(個人・スーパー)の満足状況をモニタし、顧客毎に適当な「トマト」を提案、生産情報とともにおすすめ度をスマートフォンに表示

6)生産から調理までのワンストップ化
 トマト生産をロボット制御工場化し、植付け⇒生産⇒収穫・出荷⇒宅配⇒調理家電までの流れ、支払いをワンストップ化、ネットによるコントロールの他、顧客の好み(価格x品質)、調理のレシピなどのユーザ向けのノウハウもサポート

7)プラットフォーム化⇒バーチャル化(顧客向け)
 - バーチャル家庭菜園:
 遠隔で栽培するトマトを決め、栽培方法を相談・指定しながら育て、収穫する。自分では育てないが、育てた気分を味わいつつ、新鮮なトマトをゲット(購入)できる。
 - ゲーム内収穫:
 ゲーム内で収穫すると実物が送付される。育てる過程すらバイパスして、ゲーム感覚で育てた気になって、トマトを収穫(購入)する。
 - バーチャル販売:
 バーチャル世界で収穫したトマトを、バーチャルで取引して実際のトマトを販売する。


 ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えるということは、情報の流れを明確にし、記憶・学習し、循環させて環境変化に動的に適応させるシステムを組む方法を考えるということだ。新しいサービス・コンセプトは、既存のネットワークをプラットフォームとして利用し、メタ・ネットワークを構築する方向に進んでいく。

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, ネット, 未来, ミクロ・マクロ・ネットワーク ネットワーク, 発想法

【閑話】後編『ミクロ・マクロ・ネットワーク】で織る未来』サマリー

 これからしばらく、過去編をお休みして、しばらく後編の『【ミクロ・マクロ・ネットワーク】で織る未来』について書いていきます。三章、四章の実例では、筆写の専門分野のコンピュータネットワークサービスやコミュニケーションサービスについて例示します。

 

後編のサマリーです。

 

二章 【型・編】:未来を読み解く散策法

 「未来を読み解く」ための散策方法について記述します。


 前半のビッグヒストリーから一転して、「未来を読み解く」へとステージをうつします。商品開発では、「アイデアの創出」⇒「コンセプト整理」⇒「プロトタイプ開発」⇒「商品開発」⇒「商品販売」⇒「販売の継続」へとステップアップする毎にコストも期間もかかり、また周囲を巻き込みながら予算や人員を獲得してゆかなければならず、成功者となるのはごく一握りとなります。より良いものであるほど競合相手が同時に発生し、ステップを上がるにつれて選択と絞り込みが行われるということです。一方で、多くの人々は、初期の闘いに参戦せずに、成功者の後からニッチの領域で闘いをくりひろげています。後編の主題は、より先んじて「未来を読み解く」ことにより、より早く先頭を走る、もしくは未来の動向予測をふまえ先んじて準備・行動することにあります

 

 この方法を使えばすぐに「未来を読み解ける」わけでも、短期で解決する発想法を提示するわけでもない、地道な努力が前提となる。ある特定の分野に絞るのではなく、より広い視野で材料を集め、整理し、思考を組み立て、読み解くための方法について提案します。

 

2.1 ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデル


 未来を読み解く際に利用する「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとは何かについて説明。個々のパーツを定義していくと面倒な感じになりますが、さらっと流してもらって、実際には臨機応変に適用することになります。使い方については、三章以降の実例で感覚をつかんでもらいます。

 

2.2 フィールドワークと情報編集


 実際にフィールドワーク(野外調査)をしてもいいですが、ここでは専門分野にこだわらない書籍などの散策もフィールドワークとしています。マクルーハンの時代(1986年)から書籍などの印刷情報爆発が指摘されていますが、インターネットの時代になって指数関数的に増大しています。国会図書館の所蔵数は4492点、書籍だけで1154万点、読み切れません。新規のアイデアや考え方と思っていても、大抵のことは先人の知恵として執筆されているわけです。研究でも、ビジネスでもそうですが、オリジナリティを追求するあまり、ともすると専門分野にとらわれ視野が狭くなりがち。先人の知恵である書籍には筆写の歴史がつまっており、書籍化することで世間の荒波にもまれている。これを活用しないのは時間の無駄。インターネットの時代である今日、ネット情報も併用しつつ先人の知恵=ヒューマンエンジンを使って、材料を集め、整理し、思考を組み立て、物語として読み解いていく編集方法を提案します。


 筆写が普段から実践してきた方法に近いものを書籍に求めると、ありますね、KJ法で有名な川喜田二郎の「発想法」、これを主軸にして、松岡正剛の「知の編集工学」、梅棹忠夫の「知的生産の技術」、外山滋比古の「思考の整理学」などを参考にまとめます。

 第三の推論法「アブダクション」や「非意識」・「暗黙知の活用」、「メタファー」や「アナロジー」なども組み込んでいく予定。

 

2.3 アイデアプロセッシングの道具


 かつてはカードにまとめる技法が情報編集を行うために便利でしたが、なんといっても全文検索で串刺しにできるコンピュータが便利。アイデアプロセッシングの道具としてコンピュータアプリケーション、携帯との連携を中心にどのようなものが必要となるかについて、要件と自分が使っている環境を紹介。筆写が使っていないアプリケーションについてもバリエーションとして紹介したいと考えています。

 

三章 【顧・紡】:1990年から観た未来

  ここでは、1990年代に考えて製品化、プロトタイプ、ジャストアイデアについてミクロ・マクロ・ネットワークとの対応を例示します。日本で初めてインターネットサービスプロバイダーがサービスを開始したのが1992年、インターネット利用が定着する以前から直後の話となります。


CardTerm with Mackun(シェアウェア)・1988

・情報オブジェクトとメタ情報(プリプロトタイプ)・1989

・リソース変化に適応する仮想巨大コンピュータ(ジャストアイデア)・1990

・自律分散するバーチャルオフィス(構想)・1992

・曖昧なヒトの要求を獲得して提案する(プリプロトタイプ)・1994

・モノとマネーを仮想化するゲーム環境(ジャストアイデア)・1995

・近くにいるヒトに気づきを与えるレコメンドエンジン(製品販売)・1995

・行動履歴プラットホーム(プロトタイプ)・1996

【閑話】情報空間を3次元に写像する・1999

 

四章 【活・織】:2020年から描く未来

 いよいよ現代から未来の読み解きにとりかかります。


4.1 計画されている「未来の種」


 10年後、30年後としてすでに計画されているものを紹介します。インターネットやAIのおかげで、SF的なものが全部できる気になっていて、結構沢山あるものをどうまとめるか悩みます。しかし、これをベースに次を考えなければいけないので。

 

4.2 コミュニケーション・インフレーション 

 -- 「知」の断片化がもたらすヒトの「未来」--


 未来を具体的に読み解いてみます。まだあまり考えていないけれどなんとかなるかな~と直感。超未来のゴールとしては、高野和明の「ジェノサイド」やテッド・チャン「あなたの人生の物語(映画:メッセージの原作)」のように複雑系を思考できるヒトの進化があるとして、そのための30年後ってどうなるのか?というのがあります。

 ここに入る前に、過去編で「神経と脳」「錯覚と推論」「資本主義」あたりにもどります。


五章 【環・綾】 螺旋:知の淵を渦巻く振り子


 螺旋というのは当初からタイトルだけおいてあります。最後に書いておかなければならないことがあるように直感するからです。暗黙知と形式知、ミクロとマクロ、非線形コンテンツの螺旋をグルグルと回します。

 

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, ミクロ・マクロ・ネットワーク ネットワーク, 未来, 技術

●生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか

 宇宙と地球と生命の相互作用が大量絶滅と突然変異のうねりをつくり、数十種だった大型の生物がいっきに1万種以上に広がる「カンブリア爆発」が起こった。

 

●急激な生命進化の3つのパターン

 

 急激な環境変化に伴う生命進化には3つのパターンがある[1]

 

 1)それまでに繁栄していた生物を一掃する大量絶滅

 2)大陸の分裂に伴う遺伝子変異による進化(冠進化)

 3)大陸の衝突で出会った同一種間での交雑による進化(茎進化)

 

 カンブリア紀直前の1.5億年間に3つのパターンのすべてが絡み合う急激な環境変化が微生物を襲った。

 

76億年前: 全球凍結と超大陸の分裂が引き金となる生命の大進化

 

全球凍結

 銀河衝突による超新星爆発の影響で磁場が弱体化し、大量に降り注いだ放射能の影響で地球全体が凍りつき(全球凍結)大量絶滅を引き起こす。

 極寒期と極暑期の繰り返しが、光合成を行うシアノバクテリアの大量絶滅と大繁殖の波をつくり、酸素濃度を乱高下させながら現代の値(大気の20%)に近づいていく。

 

超大陸ロディニアが分裂

 放射性マグマ地溝帯の周辺に生命の素材となるリン酸塩の鉱床が発生し、突然変異した生物を量産する。この影響はカンブリア爆発の直前まで続き、分裂した各大陸で種の多様化が進む。

 

●浅い海に巨大生物の楽園が誕生

 

 全休凍結が終了した直後に、酸素の増加による酸化や浅瀬が増えたことにともなって豪雨や風化浸食が促進され、大陸から海中へ生命の栄養塩が大量に流れ込む。

 

6.3億年前:巨大多細胞生物

 カイメンなど、単細胞真核生物の100万倍の多細胞生物が現れる。

 

5.85.5億年前:エディアカラ動植物群

 ディッキンソニアなどのエディアカラ動植物群が現れる。その多くは海水を濾過してバクテリアを捕食、群内に捕食者がいないため「エディアカラの楽園」と呼ばれる。


●小氷河期と超大陸の形成が生物の大爆発を加速

 

5.8億年前: 小氷河期
5.4億年前: 大陸が集まり超大陸ゴンドワナを形成

 

 小氷河期が終わるとともに、大陸から海中へ生命の栄養塩が大量に流れ込み、超大陸の形成がそれを加速する。

 - 大陸辺縁地下のマントルの温度低下により、海水(含水鉱物)がマントル深部へ運ばれるようになり、海水量が低下し陸地と大陸棚を広げ、

 - 異なる大陸が合体した部分で近縁種間での交雑が進む

 

5.4億年前: カンブリア爆発

 大陸棚の大量の太陽光のもとに自らエネルギーやタンパク質合成する光合成生物を獲物として、エネルギーや生体物質を搾取する草食動物の誕生が軍拡競争の始まりとなる。草食動物は、植物よりも多くのエネルギーを必要とするため、より多くの餌を確保する「移動能力」と「口」や「内臓」を進化させたのが最初のブレークスルーとなる。

 

 草食動物は、植物よりも多くのエネルギーとタンパク質を保持するため、これを餌とする肉食動物という戦略が生まれる。肉食動物は、移動する草食動物を捕獲するためにより性能の高い「移動速度」が必要となり、それを維持するためにより多くのエネルギーを獲得する「牙」や、太陽光を利用して獲物を探す「眼」を進化させたのが次のブレークスルーとなる。そして、肉食動物間でも捕食競争が発生し、軍拡競争がよりいっそう激化する。

 

 草食動物は少量のエネルギーを使う防衛戦略を生み出す。移動する影を感知して敵の襲来から逃げる「眼」や、地下に逃げ込む短距離の「瞬発移動能力」だ。肉食動物も捕食されないための強固な殻」をまとい、そのエネルギーを稼ぐための「高速移動能力」と殻を食い破るための「強力な牙」を得る。

 アノマロカリス

図. アノマロカリス

(ウィッキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/アノマロカリス)


 1.5億年の間に起きた、宇宙放射線、全球凍結、酸素の乱高下と急増、超大陸分裂と新たな超大陸形成という環境変化の連鎖が、大量絶滅と爆発的な生物進化のうねりを生んだ。新たに広がった大陸棚は、生物の軍拡競争、眼・筋肉・武器と鎧の工夫を強要し、現代に続く動物グループの系統を網羅することとなる。これ以降の時代、獲得した構造をプラットフォームとして改造しながら環境変化に適応変化してゆくこととなる。


フューチャー・リテラシー:インデックス

生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか


参考書籍:

[1] 丸山茂樹(2020),"最新 地球と生命の誕生と進化:[全地球史アトラス]ガイドブック", 清水

書院

[2] 山下美紀, いとうみちろう(2017), "地球のあゆみえほん :46億年のれきし", 丸山茂徳監, PHP

[3] NHKスペシャル「生命大躍進」政策班(2015), "教養・文化シリーズ NHKスペシャル 生命大躍進", NHK出版


tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, 未来, 生命, 進化, ネットワーク,

プロフィール

佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
ブロとも一覧
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR