曖昧な要望に応える通信サービスアシスタント(1994年)

第三章 1990年から観た未来
 本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。

3.2 アイデアとプロトタイプで描いたもの
 本節では、商品化にいたらなかったアイデアやプロトタイプについて、「コンセプト編集」に焦点をあてて例示する。
曖昧な要望に応える通信サービスコンサル(1994年)

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●背景:


 日本で初めてのインターネット・サービス・プロバイダーがサービスを開始した2年後の1994年。通信サービスが複雑化するに伴い、通信サービスを利用することが難しい時代となっていく。このため、利用者の曖昧なサービス要求を理解して、通信サービスの提案や操作補助を行うインテリジェントなアシスタントのサポートが必要となる。

●お題: 

 ⇒到達フェーズ:プロトタイプ開発

 通信サービスへの利用者の曖昧な要求を獲得し、提案する


○前提: ヒトの要望は曖昧


 ヒトは、知識不足であることや、言葉の欠落、矛盾、誤りなどさまざまな理由により、自分自身が何を望んでいるのかをうまく表現できないことが多い。

○通信サービスとは:


 通信機能によって、人のコミュニケーションにかかわるエネルギー消費を効率化するサービス

 例えば電話では:

  通話: 「遠距離のコミュニケーション」の効率化
  電話の転送: 「通話のかけなおし」の効率化
  住所録からの発信: 「通話相手の電話番号を探し、入力する行為」の効率化


●言葉で表現する


○アイデアを言葉で表現する


 ・ネーム(呼称): 通信サービス・アシスタント
 ・クレーム(短文): 「通信サービス・アシスタント」は、通信サービスの利用状況をウォッチして、利用者毎に最適な通信サービスの利用や操作を推論して提案する。

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する


■構成要素: 
【技術・社会的背景】
 ・経済のグローバル化、環境変化への即応要求に応える通信サービスの急激な発展と提供、それにともなう通信サービス利用の複雑化

【ミクロなコミュニケーション】 
 ヒトとヒトの通信サービスを介したコミュニケーション

【通信サービスの利用環境】
 社会環境の変化、ユーザ要望の多様化、経済のグローバル化に適応する企業・オフィス環境

【メタ・コミュニケーション】
 通信サービス利用履歴、提案結果をもとに推論ベース群が推定する利用エネルギーを最適化した「理想通信サービス利用ネットワーク」

【フィードバック・ループ、動的適応】
 利用者の「通信サービス利用履歴」、「通信サービス提案要望」、「提案履歴」、それにもとづいて「推論ベース群」が構築する「理想通信サービス利用ネットワーク」イメージ、それにもとづく「通信サービスの提案」、複数の「推論ベース群」の重みづけの調整。

■ネットワークの特性: 
【利用者の通信サービスへの動的な多重帰属】
 通信サービスコンサルの提案により、通信サービスの利用が促進され、各利用者の通信サービスの利用が動的に変化

【通信サービス提案のための記憶】
・短期記憶: 各利用者の通信サービス利用状態
長期記憶: 
 - 通信サービス利用履歴
 - 利用者間距離(同じ通信サービスを利用しているほど近い)
論理記憶:
 - ルールベース
  要求とサービスの対応を重みつきルールで記憶
 - 類似ベース
  通信サービスの利用方法が似ている利用者群を常時分別
 - ニューラルネット
  利用してもらえた通信サービスの提案パターンをニューラルネットにより学習
    
【サービス提案の固定化と変異要素】
 要求に対するルールベースが学習により固定化してしまう可能性があり、変異要素を入れるなど工夫が必要


●サービス・イメージ


1)顧客要望推定
 次の3つの要素を演算した結果を「顧客要望」とする
 ①ユーザ要求入力、②現在の通信サービス利用状態、③通信サービス利用履歴

2)通信サービス提案ロジック
 通信サービス提案は、次の3つの推論ベース群のうちマッチ度の高い論理を適用する。マッチ度は各推論毎に通信サービス提案のヒット率をもとに強化学習。「推論統括」がコントロール。

 (1)ルールベース
  要求とサービスの対応を重みつきルールで記述、通信サービス提供者が初期値を入力、提案結果によるルールを修正
 (2)類似ベース
  通信サービスの利用パターンが似た利用者群をもとに提案、現代のレコメンドエンジンに近いロジック
 (3)ニューラルネット
  提案により利用してもらえた通信サービスをニューラルネットにより学習、未成熟な分野のため参考ロジックとする

3)通信サービス・アシスタントのマンマシン・インタフェース
 - 6W1Hなどの単語選択入力
 - 日本語音声合成
 - 発話表情ができるアバター

通信アシスタントイメージ

      通信サービス・アシスタントのサービスイメージ


●現代の類似サービス:


 iコンシェルにはじまり、スマートフォン操作のSiri、ホームコントロールのアレクサ、ドコモのしゃべってコンシェルなど。他、ミラーワールド、AI、指令AI。

フューチャー・リテラシー :インデックス
「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデル解説

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社会変化に適応するバーチャル・オフィス(1992年)/コ・ワーキング

第三章 1990年から観た未来
 本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。

3.2 アイデアとプロトタイプで描いたもの
 本節では、商品化にいたらなかったアイデアやプロトタイプについて、「コンセプト編集」に焦点をあてて例示する。
動的に適応する仮想コンピュータ(1990年)
社会変化に適応するバーチャル・オフィス(1992年)
曖昧な要望に応える通信サービスコンサル(1994年)

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●背景:


 携帯電話の人口普及率が1.4%[1]、日本で初めてインターネット・サービス・プロバイダがサービスを開始した1992年。インターネットの利用は大学や研究機関がほとんどで、静止画を扱うにも四苦八苦していた時代。


●お題: 

 ⇒到達フェーズ:社内資料

・未来のオフィス像を描く

  オフィス研究を行っていたチームメンバーの各研究を統合して未来に向けた指針を示す。


●言葉で表現する:


○アイデアを言葉で表現する


 ・ネーム(呼称): バーチャル・オフィス
 ・クレーム(短文): 低成長時代において、社会環境の急激な変化や多目的化に自己組織的に適応する「動的企業組織」として「バーチャル・オフィス・モデル」を提案する。

※バーチャル・オフィス 社会環境の変化に対応して、動的に編成して、自由に組み替えできるオフィスのイメージ呼称

〇バーチャル・オフィスの変遷


・Step1: 分散オフィス
・Step2: 協調オフィス
Step3: 自律分散型オフィス(自己組織化オフィス)
・Step4: ボーダレスオフィス
 会社の壁を取り払い、異業務/異業種のオフィス業務を動的に連携することにより社会変化や多様化する要求に対応する。

ここでは、Step3:自律分散型オフィスについて紹介する。

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する


■構成要素:
【技術・社会的背景】
 バブル崩壊を契機にデフレが長期に続く低経済成長時代、ネットワークの高速化(当面は1Mビット/秒をターゲット)  
 ・経済成長の頭を抑えつけられた状態での企業経営は、極端な企業成長が期待できない
 ・衣食住の基本欲求が満たされた顧客は、顧客それぞれの多様な嗜好で商品を選択する

【動的に変化する環境】
 - 顧客要望: 少量多品種な要望
 - 多目的化: 顧客要望の多様化に伴う企業内部での多目的化
 - 激しい製品交替: 激しい競争、新製品や新技術導入のテンポが速く、ライフサイクルが短い
 - 巨大な経済リスク: ブラックマンデー、バブル崩壊のような急激な経済環境の変化

【ミクロなコミュニケーション】
 ネットワーク(電話網、メール、TV会議、蓄積型の情報サービス)を利用して多地点・異時間・多人数で行われる、分業のための情報の交換

【企業内のマクロな構造】 動的組織、散逸的組織構造
 ・散層的組織構造: 部課など縦割りでない権利を分散化した平坦な組織構造 
  - 必要に応じてバーチャル・チームを柔軟に編成
  - 1人の社員が複数のバーチャル・チームに多重所属
 ・時空間分散組織:
  - 国内はもちろん、24時間の時差を活用して世界中分散・分業する組織編成
 ・企業内企業、企業内ベンチャー

【メタ・ネットワーク組織】 
 社会環境変化や、顧客要望の変化に呼応して、組織横断的に動的構築されるバーチャル組織・チームなどのメタ組織
 ・ネットワーク分業: それぞれが自律性をたもちながらも密接な相互作用にある分業
 ・伸縮的分業: 問題状況に応じてしくみを替える分業
 
【フィードバック・ループ】
 環境から社員へ、トップから社員へ、社員からトップへと循環する情報ループと、それをもとに動的・自律的に適応行動する社員
 ・社外環境、顧客の動的情報を社員に提供
 ・トップからの緩いビジョン提示、各社員が現状認識可能な情報の提供
 ・散層的組織やバーチャル・チームの運営情報を集約してトップで収集
 ・散逸的組織やバーチャル・チームの作業情報を編成・チーム内で循環
 ・(電子、リアルな)ティールームによるフリーな情報交換
  
■ネットワークの特性:
【社員・情報の多次元性・多重所属】
 組織編成/解体を積極的に実行、個人が複数のチームや組織に仮想的に所属・参加、それにともなう各種情報のハイパーリンクによる多次元性と多重所属

【動的に適応する企業】
 ・個々の社員が各種情報を取り入れて自律的・動的に行動
 ・企業をとりまく社会環境の変化に社内グループが動的に柔軟に変化するバーチャル組織、バーチャル・チームを編成して対応

【動的に適応する企業における学習】
 環境変化に動的に適応する組織には、各社員が参照できる記憶能力が必要となる
 ・トップのビジョン
 ・社会環境、企業環境の状況を共有
 ・バーチャル・チームのリアルタイムな運営情報、作業情報

【企業の恒常性・保守性】
 企業として存続するラインを維持しつつ、恒常性・保守性をくずす方向へ誘導

【企業変革のための変異要素】
 動的適応のための特異人材のプール、即応体制


●サービス・イメージリスト


 導き出したサービス・コンセプト例を列挙する。
バーチャルオフィス

     バーチャル・オフィスのイメージ

1)物理的な制約(空間、時間)をとりはらう
 時空間を意識せずにアクセスできる通信手段を提供する。

 1-1)空間接続
  メインオフィス、サテライトオフィス、ホームオフィス、移動オフィスの空間的制約をとりのぞく。
 ・高臨場感接続: 大画面スクリーンでサテライト・オフィスをメイン・オフィスに接続、小スクリーンでホームオフィスや移動オフィスを常時接続、瞬間接続可能で「声掛け」することもできる。
 ・多地点ビデオ会議、テンポラリTV会議

 1-2)時差接続
  世界各地での時差を積極的に活用し、24時間のシフト分業を可能とする。
 ・蓄積型コミュニケーション: チャット対話の併用、早送り巻き戻し可能なビデオ会議・通話
 ・エージェント・代理コミュニケーション: 会議代行出席、代理発表、不在時スケジュール調整/業務指示、ノウハウ提供
  ※現代:インターネットによる接続、社内チャット、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

 1-3)空間・時差接続共通
 ・社員状態表示: 在籍、打ち合わせ中、ビジー、接客中など
 ・フレックスタイム・シフトタイム管理
   ※現代:グループウェア・サービスなど

2)グループを組み替え支援
 個人/グループの自律性を保ちながら、組織編成やバーチャル・チームを自由に組み替えできる。
 ・動的組織・グループ編成支援: 電話帳、権限管理、一時参加、グループ編成・個人テンプレート
 ・デスク・フリー: 個人机の廃止、共用端末を個人IDカードでマイ・デスクトップで立ち上げ
 ・協調型共有ファイル: 世界をまたがる時空間ロケーション・バーチャル・チームの多重所属、権限管理
 ※現代:グループウェア・サービス、無線LAN接続など

3)情報のフィード・バックループ
 社内情報のフィードバック・ループを形成して外部環境変化への動的適応能力と社員の自律的行動を促進
 ミクロ・マクロ情報共有:
  ・ビジョン共有: トップや組織のビジョンを随時確認
  ・社員用戦略情報共有: 企業や組織・チームのリアルタイムな運営情報を社員が確認
  ・作業状況共有: 個人・チームのリアルタイムな作業状況を経営トップ・管理者・社員で共有
  ・ノウハウ共有: 組織横断的なノウハウの共有ボード
 ※現代:グループウェア・サービス、ナリッジ・ベース、掲示板、社内Wikiなど

4)動的適応性の強化
  個人/グループの自律性を保ちながら、動的でかつ柔軟性のある組織を構成する。

 ・動的情報システム: 外部環境や組織の状況変化に合わせて、臨機応変に情報構成を変更できる情報システム
 ・多次元情報エディティング&ファイリング: データ/処理/リンクを単位とした分散情報のリンク関係を編集して、自由に情報を組み替えるリンクベースのデータ管理
  - フレキシブル情報ビュー: 所属や目的、権限に応じてデータ・アクセス・ビューを自由に切り替えてデータ参照
  - 仮想コネクションメール: データを手元においたままリンク情報だけを送受信
  - 関連情報協調: スケジュール、勤務票、コミュニケーション状態、出張、会議室管理などを連携
  ※現代:社内用Wikiなど

5)創発性の強化
 ・人材プール: 特殊な才能のある人材がをピックアップした仮想チームを編成、必要に応じてテンポラリに実チームにアサイン、または支援
 ・企業内企業、社内ベンチャー: バーチャル・チーム管理にて実現


●現代


 バブル崩壊以降デフレ経済が続き、ワークライフバランスなど、個人生活を大切し、健康に生きることが活力のあるオフィスとして見直されている。会社単位の異業種連携共同体も一部で実施され、ノマドワーカなど企業に所属しない選択も増えてきつつあり、あらためて動的組織論が注目されている[5]
 コロナ禍の時代、ホームオフィスやコワーキングスペースの設置など想定していたコンセプトは個別に具体化され導入されてきているが、組織を超える情報を積極的に連携するフィードバックループ、例えば「工場の現場の場面情報が重役会の場面と結び付き、マーケティングの場面情報が研究開発の場面と連結される」など、すべてを有機的に連携することの意義を理解し、具体化するにはやや時間がかかっている。

参考情報:
[1] 移動体通信(携帯電話・PHS)の年度別人口普及率と契約数の推移
https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/tool/tokeisiryo/idoutai_nenbetu.html

参考書籍:
[2]  今井賢一, 金子郁容(1988), "ネットワーク組織論", 岩波書店
[3] 北矢行男(1985), "ホロニック・カンパニー", TBSブリタニカ
[4] 今井賢一, 金子郁容(1986), "ネットワーキングへの招待", 中央新書
[5] フレデリック・ラルー(2018), "ティール組織 :マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現", 鈴木立哉訳,  嘉村賢州解説

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動的に適応する仮想コンピュータ(1990年)/クラウド

第三章 1990年から観た未来

  本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。

3.2 アイデアとプロトタイプで描いたもの

 本節では、商品化にいたらなかったアイデアやプロトタイプについて、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルによる「コンセプト編集」に焦点をあてて例示する。

動的に適応する仮想コンピュータ(1990年)
社会変化に適応するバーチャル・オフィス(1992年)

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●背景:


  仮想マシン・スーパーバイザーのデファクトであるVMware社が発足する8年前、国内のインターネット・サービスが開始される2年前。オフィスで利用されているコンピュータが、ネットワークに繋がっていないスタンドアローンのデスクトップPCが主流だった1990年10月、バブルが最後の雄たけびをあげた
 研究所では、充分に高速化されたネットワークでのキラー・サービスを模索していた。メインで研究されていたのはビデオオンデマンド(動画配信)やテレビ会議だったが、本当にそれだけなのか?例えば、コンピュータがあの小さい箱におさまったままでいるとは考え難い、それではどのように進化していくのだろうか。

●お題:


 「ネットワークが高速化した未来のオフィス・コンピュータ」についてアイデア企画を考える
  ⇒到達フェーズ: ジャスト・アイデア

 ブラックマンデー、バブル最後の株価の乱高下、これからのオフィスは環境変化に動的に適応しなければならないと直感した。
 とりあえずコンピュータを分散ネットワークにつながれるリソース(メモリ、ディスク、CPU)としてとらえなおしてみる。コンピュータ・ボード上のCPU、メモリ、ストレージをつなぐBUSをネットワークに置き換えることをイメージする。

●コンセプト編集


○アイデアを言葉で表現する


 ・ネーム(呼称): コネクティブ・コンピュータ
 ・クレーム(短文): 人員や用途、社会変化に柔軟に適応できる巨大な仮想コンピュータネットワーク

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する


■構成要素: 
【技術・社会背景(将来)】
 社会: 急激な社会・経済変化に動的に適応するオフィス
 技術(将来): パソコンボード並の速度のネットワーク接続、ロケーションを横断する社内ローカル・ネットワーク構築、コンピュータの高速化

【環境変化】
 社員の増減、リソースの追加(解放)、一時的な演算の必要(経済予測など)

【ミクロなコミュニケーション】
 実コンピュータのリソース(メモリ、ディスク、CPU)を連携して、リソース・プールを形成するためのコミュニケーション

【ミクロなネットワーク】
 m台の実コンピュータが相互につながった実ネットワーク

【メタ・ネットワーク】
 リソース・プールをもとに編集再構築されたn台の仮想コンピュータ間の仮想ネットワーク

■ネットワークの特性:
【可塑性・学習】
  人員変化、などによりリソース・プールからの最大割当量を配分して設定

【フィードバック・ループ、動的適応】
 仮想コンピュータの利用状況、実リソースの残量を常に把握し、刻刻と変化する状況に最適化してリソース・プールから仮想コンピュータにリソースを割り当て

【多次元性・多重所属】
 実リソースは、仮想コンピュータへの多重所属させ動的に割り当て

【恒常性・保守性】
 一部の実コンピュータが故障しても、仮想コンピュータは問題なく動作する

●サービス・イメージ:


 実コンピュータをネットワークで接続し、ミドルウェアでリソース(CPU、メモリ、ストレージ)をプール=リソース・プールして、必要に応じてリソースを割り付ける仮想コンピュータ&仮想ネットワーク。次のようなメリットを提供するようミドルウェアを構築する。
 ・リソース利用の効率化⇒低コスト化
  リソース利用の最大値を決めて、利用状況によりリソースを割り当て
 ・リソースの追加が容易
  ⇒必要な追加リソースを搭載した実コンピュータを適当なタイミングで追加
  ⇒人員数の変化に柔軟に対応
 ・急な演算の必要、過負荷へのリソース割り当て
 ・実コンピュータが故障しても、仮想コンピュータの利用に影響がない

※ミドルウェア: 
 仮想コンピュータへの実リソースの割り当てを動的行う中間層。現代のハイパーバイザーに相当

仮想コンピュータ

            仮想コンピュータのイメージ

●現代の類似サービス:


 仮想コンピュータを実現・管理するハイパーバイザー(VMwareなど)が利用される。現代では、主にノートPCにドキュメントを置かないなどのセキュリティ対策、災害対策のための地域分散配置、クラウドで活用されている。


 普段から、技術、社会・経済、道具の変化に注力していると、ふとしたタイミングで線でつながり立体化して次の変化の方向性が見える瞬間がある。今回はリーマンショック、バブル末期、オフィスにおけるパソコン利用、ネットワークの高速化がそれだった。



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パーソナル通信アシスタント: CardTerm with Mackun(1988年)

第三章 1990年から観た未来

  本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。

3.1 商品として具体化したもの

・パーソナル通信アシスタント: CardTerm with Mackun(1988年)
気づきのあるネットワーク・サービス:AwarenessNet(1995年)
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 Windows95が発売される7年前、パソコンのマンマシン・インタフェースがUnixのようにコマンドラインだった1988年。Mac PlusとHyperCardから「思考のためのコンピュータ」の新しい風を感じて衝撃を受けていたとき、HyperCardスタック・ウェア・コンテストが開催された。
 人とコンピュータの共生

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用語:
Mackun(マックン): パソコンを擬人化したアシスタントの呼称
HyperCard: Machintoshに標準搭載されたマルチメディア・オーサリング環境
スタック(・ウェア): HyperCardで作成されたファイル
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●お題(テーマ):MacLife誌にて


 HyperCardを利用したスタック・ウェア・コンテストで優勝を狙う
 ⇒到達フェーズ: 日本最初期のオープンソース&シェアウェア販売

CardTerm.jpg

Mackun2.jpg


〇背景(1988年):


■通信環境

  日本で本格的にインターネットが利用される7年前の1988年末、通信速度は現在の1万分の1以下であり、携帯電話はまだ普及していない。通信サービスといえばパソコンからテキストで書き込むメールと掲示板だった。

■HyperCardスタック・ウェア・コンテスト

 MacLife誌において、第一回HyperCardスタック・ウェア・コンテストが開催された。優勝商品は、100万円以上する高嶺の花Macintosh IIだ。HyperCardは1.4章でも紹介した、Apple社のMachintosh上で標準で搭載される開発・実行環境。Webブラウザのような画面に、簡易データベースや画像・音声つきの絵本/百科事典などを素人でも簡単に作ることができ、人とコンピュータとの新しいコミュニケーションの未来を垣間見させてくれるマルチメディア・オーサリング環境だ。ネットワーク通信機能機能は搭載されていないので、通常は1人で利用する。
MacとHyperCardが描いた小世界


〇環境条件


■現状把握

・パソコンへの入力: マウス、キーボード
・パソコンからの出力: ディスプレイ
・マンマシン・インタフェース: 
 - デスクトップ: デスクトップ・メタファー
 - HyperCard: カード・メタファー(カード、ボタン、フィールド)
・ネットワーク・サービス:
 パソコン通信サービス(メール、掲示板:現代の2chやMixi)

■競合相手の予測

 HyperCardが得意とするのは、インタラクティブなマルチメディアアプリやカード型のデータベースであり、次のような応募が予想される。

 ・音声、画像を含むマルチメディア百科辞典
 ・アドベンチャーゲーム、動くインタラクティブ絵本
 ・教材: クリックすると変化するインタラクティブ教材
 ・自分用データベース: CD、本の所有管理など


〇着想:作戦


 皆と同じジャンルで群を抜くのは難しい。パーソナル・メディアの針をちょっと先に動かして「人がコンピュータと共生するコミュニケーション環境の未来を描く」ことにした。


〇「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えてみる


・「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルで、アイデアの不確かな部分を確認する。
⇒省略


〇アイデアを言葉で表現する:


 ・クレーム(短文): 人のパートナーとしてアシスタント=Mackunが支援してくれる生活
 ・ネーム(呼称): ウィズ・マックン(with Mackun)

Mackun(マックン): パソコンを擬人化したアシスタントの呼称

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●コンセプト編集


〇6W1Hで表現する


・いつWhen: 日々の生活
・どこでWhere: 家で
・誰がWho: 人が
・誰にWhom: マックンに
・何を(する)What: 依頼する
・なぜWhy: 手伝って欲しいから
・どのようにHow: 音声で


〇曖昧な言葉、キーワードを明確にする


いつWhen: 日々の生活
 日々の生活といっても、当時は携帯がないのでパソコンに向かっているときや、パソコンと同じ部屋にいるときということになる。

 筆者のパソコンの用途(1988年):
  ・パソコン通信(メール、掲示板)の利用
  ・HyperCardでの作品作成
  ・Actaというアイデア・プロセッサでアイデア収集と編集
  ・ゲーム

何を(する)What: 依頼する
 具体的に依頼したい内容は?
 ・朝起こしてもらう
 ・届いているメールの読み上げ
 ・掲示板に掲載されている内容の読み上げ
 ・カップラーメンの時間など指定した時間が経過したら教えてくれる
 ・プログラミングや作品づくり、アイデア整理の支援。。。。は難しいか?

どのようにHow: 音声で
 「音声認識」技術はまだ未熟なため、今回のコンテストでは「音声合成」のみを使う。
 依頼方法は、キーボードやマウスでトリガーをかけることになるが、連続する動作シーケンスをあらかじめ簡単に「依頼」しておけるようにしたい。


〇「ミクロ・マクロ・ネットワーク」でコンセプトを具体化する


■構成要素:


【ミクロなコミュニケーション】
 ・人がマックンに操作シーケンスを依頼し、マックンが自動操作&音声応答する

【ミクロなネットワーク】
 ・操作シーケンスによってつながる人・マックン・操作の連鎖
 ・マックンを介したパソコン通信ネットワーク
 ⇒マックンの手足はパソコン内から、ネットワークへと伸びていく

【人とマックンの周囲の環境】
 ・人の生活環境、パソコン通信(メール、掲示板)

【メタ・ネットワーク】
 ・人の生活シーケンスをマックンが統合して紡ぐ「新生活」
 ・マックンたちのコミュニケーション・ネットワーク

【Machintoshで使える技術】
 ・英語の音声合成、HyperCardおよび他言語による追加関数

■ネットワークの特性:


【人の生活の多次元性・多重所属】
 ・ヒトの人は複数(通常生活、仕事、趣味など)の生活シーケンスに多重所属する

【フィードバック・ループ、学習、動的適応】
 ・生活シーケンスのサポートをマックンに依頼し、マックンが日常のルーティーンを学習、生活サポートを繰り返すことにより徐々に「新生活」を充実させていく


〇派生アイデア・メモ


・マックンが秘書となって、アイデア整理を手伝ってくれるメモ帳・ノート
・マックンどうしがコミュニケーションして、スケジュール調整や制御シーケンスの有効活用などの情報交換を行うアシスタント・ネットワーク


〇コンセプトを簡単な文章で表現する


 気分は2001年宇宙の旅のHAL!
 「朝、Mackunの声で目覚め、起床とともに届いたメールやスケジュールを読み上げる、Mackunとともにある日常」


〇コンセプト・シナリオ 


()はボタンなどでの操作

 マックン: 「朝です起きて下さい!」
 私: (眠い目をこすりながら目覚めると)
 マックン: 「メールが届いています、読み上げますか?」
 私: (OK)
 マックン: 。。。メールの内容を読み上げる。。。

 マックン: 「今日のスケジュールを読み上げますか?」
 私: (OK)
 マックン: 「今日は、10時に眼科に行く予定です」

 私: (掲示板を読み上げてもらえるかな)
 マックン: (パソコン通信に接続&ログイン)⇒(掲示板を読み上げる。。)


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●応募作品の具体化


〇作成するツール


 次の3つのツールをCardTermとして統合して搭載。

1)カード型パソコン通信環境:CardTerm
 複数のカードを作成・管理、各カードからパソコン通信にアクセスでき、メールや掲示板の表示内容をそのままカードとして保存・管理できる。パソコン通信への自動接続&ログイン機能を搭載。
 ターミナル関数を自作してHyperCardに追加。

2)日本語を読み上げる:Mackun
 漢字、ひらがな、カナ、数字、英語を識別して音声で読み上げる。応募作品は、連続する漢字を音読み、単独の漢字を訓読みするシンプルなもの。CardTermに、「記入したテキスト」「メール」「掲示板」などの読み上げを搭載する。
 英語の音声合成MacinTalkの音素変換をベースに日本語音声合成を自作。HyperCardに追加。英語音素だとアメリカ的カタコト読みになるのはご愛嬌。

3)操作シーケンス記録・再生スケジューラ:OperationRecorder
 録音機のメタファーで、「人の操作」を読み取り、プログラムに変換して記録と再生をすることにより、日常のルーティーンを自動プログラムする。
 記録中の「操作」をHyperCardのプログラムとして記録、後から「操作」を再生できる。ボタンのクリックや、テキストの記入、音をならす、Mackunで日本語でしゃべるなど。再生スケジュールを指定できるので、「オートログイン」「オートダイヤル」「目覚まし」や「メールの自動ダウンロードと読み上げ」「タイマー」を標準搭載。


〇その後


「HyperCard with Makun」がコンテストで優勝
・漢字辞書を追加、登録機能と1万語の辞書を搭載してシェアウェア販売
・MacPower誌コンテストにアイデア・プロセッシング・ノート「HyperNote with Makun」で優勝
・最近までPICやRadberryPiで、音声機能やリモコン機能を搭載してホームコントロールを自作していたが、ついにアレクサに置きかえた。いつか、音声でチェスができるようにしたい。


●現代の類似サービス


 現代のサービスで表現すると、音声認識は搭載していないが次のようになる。
・アレクサ+RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)+カード型通信環境

フューチャー・リテラシー:インデックス 

気づきのあるネットワーク・サービス:アイデア編集
気づきのあるネットワーク・サービス:コンセプトの具体化
気づきのあるネットワーク・サービス:ビジネスの具体化

参考:
[1] "日本語ハイパーカード スタックウェア・コンテスト グランプリ発表!", MAC LIFE No.11, 1989

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【閑話】アイデア・プロセッシングのためのツール

 筆者が使っているツールを中心に、アイデア・プロセッシングのためのツールを紹介します。

 アイデア発想本などの多くは、今でも「紙のカード」や「紙の手帳」を利用する方法を推奨しています。紙に手で書くメリットも捨てがたいのですが、自分の書いたノートでも大量に情報を蓄積すれば他人のものとなり、どう工夫してみても「紙のメディア」では探し出すのに限界がある。そこで、「全文検索」ができるノートツールを中心にツールを組み立てることになります

アイデアツール
   アイデア・プロセッシング環境


●「ノート」ツール


 まずは、アイデア・プロセッシングの中心となる「ノート」ツール。

 マイクロソフトのOneNoteか、アウトライン・プロセッサを使ってみて選ぶといいでしょう。OneNoteが使いやすくお薦めで、アウトライン・プロセッサならばDynalistあたりがWindows、Apple、iPhone、Webと連携できて使いやすい
 「全文検索」できることは当然として、配下の階層ごとドラックで気軽に移動できるのがいい。表示をタブで切り替えたり、マルチウィンドウで表示したり、リビングではiPadで修正することもできます。

 筆者は、Linux系のpukiWikiベースの「growi」というツールをdocker-composeの上で使っている。ちょっとマニアックなの構成なのでLinux大丈夫という方しかお勧めはしません。wikiを個人で使いたい方ならばgrowiがいいでしょう。仮想マシンを使ってwindows上でも立ち上げることができます。

 growiのサンプル画面

■growiの気に入ってるところ:
 ◎ドキュメントをタグとして使える
  - 階層表現用のタグがなくドキュメントの下に何層にも階層をつくれるのが重宝しています
 ◎lsxプラグインを使うと階層一覧を何列も表示できる
  - OneNoteやアウトライン・ツールだと1列の表示だけ
 ・全文検索が高速で、データ量を気にせずに使える
  - ビジネス用の検索エンジンelasticsearchを使っている
 ・ページ内の階層表現をテキスト形式(Markdown)で記述できる
 ・Webで編集できる
 ・階層の一括移動もとりあえずできる(後述)

■growiの使いにくいところ:
 ・階層をドラッグで移動できない
 ・バックアップ方法がちょっと面倒

階層一覧
 
               「growi」で階層を表形式で表示


●「メモ」ツール


 筆者がメモするのは、「寝ている時」や「目覚めた時」や「散歩中」が多いので、スマホ(筆者はiPhone)で片手で操作できるのが必須です。

 最近まで、「音声認識+ノート」でメモしていたのですが、あとからコピペしてパソコンと共有する必要があるので最近は「ショートカット」で登録して、音声認識で直接OneNoteに送っています。

音声認識⇒アプリ(OneNote)ショートカットの設定方法(iPhone):
 ・「ショートカット」を起動
 ・「新規ショートカット」で「アクションを追加」
 ・「音声」で検索して、「テキストを音声入力」
   - 「表示を増やす」⇒「聞き取り停止」は「タップ時」を選択。
 ・「+」で「共有」⇒「機能拡張で共有」を選び。
 ・「...」ボタンを押して、「ホーム画面に追加」でホームにショートカットアイコンを置く。


●紙か電子書籍か


 本を購入するときに「紙の書籍」か「電子書籍」は一長一短あって悩むところ、時には両方購入する場合もあります。

■「紙の書籍」のメリット:
 ・書き込みができる

■「電子書籍」のメリット(Kindle):
 ・検索ができる
 ・コピペができる(回数制限あり)
 ・電子辞書で簡単に「意味」や「読み」を確認できる
 

●OCRツール


 「紙の書籍」からの切り貼りは、次のいずれかの手段を使っていて、「紙の書籍」からの誤入力率はいずれの方法でも大差はない。近年のOCRツールや音声認識の精度の高さには驚かされます。

■本からの切り貼り手段:
 ・手入力
 ・スマホのOCRツール
  - カメラで写真をとるように入力できる
  - 認識率が非常に高いTextScan(100円/月)を利用、写真をとるような操作が快適
 ・音声メモ
 ・Kindleからコピペ(回数制限あり)


●画像共有


 iPhoneで撮影した画像を共有するのはGoogleドライブでも、Dropboxでもなんでもいいのですが、筆者はGoogleドライブを経由するか、OneNoteに直接貼りつけています。


 以上です。便利なツールが次々と発表されるので、随時ためしてみるといいでしょう。



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アイデア・プロセッシング実施方法(5):シナリオ・物語編集

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アイデア・プロセッシング:
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Step2: 情報散策
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アイデア・プロセッシング用語解説:
・情報素材: 段落などのを単位とする文章で文節、区分けしたテキスト。1枚の画像。1枚の絵。
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 これまで集めた「情報素材」を文章化することにより、直感に従って集め、関係性に注目してグループ化したアイデアの素材から、関係の意味や性質を論理的にとらえなおし、矛盾や誤りを見直すことができる。さらに、自身が着目することの理解が深まり、「情報素材」の捉え方を変え、そして文章化に苦労した部分にこそ新しい発想のチャンスがある。


●4-1)「情報素材」を文章にする

・アウトプット: 文章化した情報素材

・インプット: グループ編集した情報素材

 図、絵、テキストを用いて小規模な文と文脈を具体化するフェーズ。シナリオ、物語として記述することにより、アイデアを整理し、アウトプット可能な「情報素材」を生成する。

〇なぜ文章化するのか


 Step3までは、発想を広げるこをと優先してきた。Step4では、「言葉として記述」することにより論理的な矛盾を排除する。

○どこから文章化するのか


 文章化のきっかけは、アイデアやコンセプトの提案、業務提案や論文化、書籍化、もしくはblogへの執筆などの具体的なアウトプットを求めるときだろう。文章化に着手する初端は、それぞれの経験上気になっている具体化の「肝」となる部分、そこを明らかにしておかなければ先に進めないという手がかりから先にとりかかるといい。

○短い文章にまとめる


 Step3でグループ編集した「情報素材」をみなおし、100~200文字程度の文章にまとめる。前後の段落と連携し「起承転結」を意識して文章化する、図や絵を用いる、表を追加するなど工夫するのもいいだろう。

○続いて、文章化に着手するのはどこか


 ある部分について文章化した後、新たな手がかりをもとめるより先に文章化した段落と関係の深い周囲の「情報素材」からとりかかると、次のステップに進むための足がかりができる。


●4-2)アイデア編集

・インプット:文書化した情報素材
・アウトプット: アイデアのクレーム(短文)、ネーム(呼称)


 「情報素材」をもとに、アイデアを形成するフェーズ。背景、テーマ、材料・素材を書き出し、着想を「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で整理して、クレーム(短文)とネーム(呼称)を生成する。

○課題設定

 与えられている課題、Step1で設定した課題をもとに1文で記述

○背景

 課題の置かれている周囲の環境、なぜその課題が設定されたのか、競合相手など

○材料・素材

 利用できる技術・サービス、想定している動作条件、環境条件、プラットフォームなど

○着想

 「課題」「背景」「材料・素材」を並べてみて思いつくアイデアの出発点、手がかり、実現したいイメージなど

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えてみる

 「着想」を具体化するため「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルで記述してみる。曖昧な部分、欠落箇所は今後の課題であり、とりあえずそのままにしておく。

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の構成要素と特性:
 ・構成要素: ミクロ、コミュニケーション、ネットワーク、マクロ、メタ・ネットワーク、環境、技術・社会背景
 ・特性: 多元性・多重所属、フィードバック・ループ、適応・動的特性、自省作用・創造作用、可塑性・学習、恒常性・保守性、変異要素

○言葉で表現する

 やりたいことをクレーム(短文)とネーム(呼称)で表現する。


●4-3)コンセプト編集

・アウトプット: コンセプトの説明文
 4-2)アイデア編集の「クレーム(短文」と「ネーム(呼称)」を起点に、コンセプトを具体化するフェーズ。6W1Hで表現して曖昧な言葉を具体化し、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で表現してコンセプトを簡単な文章としてまとめる。

○6W1Hで表現する

 コンセプトを6W1Hで表現し、具体化する。

・いつWhen:
・どこでWhere:
・誰がWho:
・誰にWhom:
・何を(する)What:
・なぜWhy:
・どのようにHow:

○曖昧な言葉、キーワードを明確にする

 6W1Hで使用した曖昧な言葉、キーワードのうち曖昧なものを文章で解説する。
  

○派生アイデアメモ

 派生的に思いついた、新しいアイデア、コンセプトのメモを記録しておく。

○コンセプトの具体化

 曖昧なキーワードを、具体的なアルゴリズムや定量表現で定義する。

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で具体化する

 コンセプトを「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルで具体化し、チェックする。曖昧な部分、欠落箇所は極力のこさず、必要ならば課題として明記する。

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の構成要素と特性:
 ・構成要素: ミクロ、コミュニケーション、ネットワーク、マクロ、メタ・ネットワーク、環境、技術・社会背景
 ・特性: 多元性・多重所属、フィードバック・ループ、適応・動的特性、自省作用・創造作用、可塑性・学習、恒常性・保守性、変異要素

○コンセプトを簡単な文章で表現する。

 技術やビジネスの具体化につなげられるよう、コンセプトを簡潔な文章で表現する。

 本書がターゲットとするのはアイデアを創出し、コンセプトとして具体化する「コンセプト編集」までだ。たしかに、新しいコンセプトを生み出すことは、全行程のほんの数パーセントにすぎない。技術の具体化、商品化、商品販売のために、周囲を巻き込み、予算と人員を確保してプロジェクトを推進するという大きな海原がこれから先に控えている。それでも、霧の中で航海するには舵取りもままならない、数十年先の未来に羅針盤を向けとて現在のコンセプトを見定めることが肝要なのだ。

 この後、アイデア・プロセッシングの具体例として、1990年代から現代までと、現代から30年後の未来を読み解くサンプルを例示していく。




参考書籍:
[1] 川喜多二郎, "発想法 -- 創造性開発のために --", 中央公論新社, 1976(改)
[2] 梅棹忠夫(1969), "知的生産の技術", 岩波書店
[3] 外山滋比古(1986), "思考の整理学", 筑摩書房
[4] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫

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アイデア・プロセッシング実施方法(4):グループ編集、離合集散、分類と階層化

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アイデア・プロセッシング:
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Step2: 情報散策
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アイデア・プロセッシング用語解説:
・ノート: ノートツール
・ページ: ノートツール上のページ、分類の単位
・階層構造: アウトライン構造、分類を階層的に表示
・情報素材: 段落などのを単位とする文章で文節、区分けしたテキスト。1枚の画像。1枚の絵。
・1行見出し: グループ、情報素材、分類を1文で表現したタイトル。
 ※「内容」の意味のエッセンスをとらえて圧縮し、できるだけ柔らかい言葉で表現する、過度に抽象化しないこと。
・内容: 「1行見出し」に配置した「情報素材」群
--------------------------------------


 情報があふれる近代において、無から突然新しい発想を創造するということはほとんどなく、すでに存在する「情報素材」を結びつけることによって新しい発想が生まれる。つまり、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」ということだ[1]。
 ここでは、アイデアを発想するための下準備として、収集した「情報素材」を編集するための方法について示す。直感思考と論理思考を行き来しながら進めることが肝要だ。

Step3: グループ編集:離合集散、分類と階層化

・インプット: 情報素材
・アウトプット: 分類・階層化した情報素材
 ページ・情報素材を編集して分類・階層化するフェーズ。関係の近いページ・情報素材を集め、グループ化し、「1行見出し」と「概要」をつけて分類、階層化、俯瞰して再編集する。

〇ノートにおける階層表現


 「ノートツール」のページやページ内テキストでの階層構造とは、次のように大中小分類などの階層(アウトライン)で配置することだ。

ページ、ページ内テキストの階層構造の例:

大分類AAA
中分類BBB
小分類CCC
中分類DDD
小分類EEE
大分類FFF
中分類GGG

○二次情報から意味を生み出す、情報をつなぐ、関係づける、離合集散を繰り返す


0)基本方針

・情報をして語らせ、グルーピングを繰り返す
 - 自由にサイクルを行き来しながら繰り返し、情報をして語らせ、情報やグループ間の関係を相互作用させることによりしだいに形づくっていく。必要以上に収束させず、発散的に、ヒトの無意識のフィルタリング能力である「暗黙知」と「美意識」、「類推」と「連想」、アブダクション(仮説推論)を活躍させる。
 - 情報が語ることを聞き、情報自身に編集させ、動的な関係と相互作用を発見的に見出だし、意味を生み出すリズムを繰り返す。
・グルーピングのタイミング
 - スクラップする都度や1週間毎などの定期的な編集タイミングを決めて自分のリズムをつくる。適宜実施していいが、ためすぎると編集が負担になる、情報収集の負担にならない自分のリズムをつくるといい。
・情報素材を移動せずに、リンクやコピーを活用してもいい
 - 必要ならばコンテンツ間でリンクをはってもいいし、いっそのこと同じ文章をコピペてするのもいいだろう。

1)グルーピングと分類・階層化

 「情報素材」の関係を見極め、グループをつくり、分類と階層化を行う。

1-1)小グループをつくり、1行見出しと概説をつける
・関係の近い情報素材(ページ、情報素材)を集め、その集団に関係の意味を要約して仮の「1行見出し」をつける。この「関係の近い」とは「属性の分類」だけでなく「類似」や「類推」なども含まれる多面的な関係としてとらえる
・むりやりどこかのグループに入れようとせず、はみだしたものは中大グループに入れればよい。

2-2)中グループをつくり、1行見出しと概説をつける
・関係の近い小グループを集めて中グループをつくり、1行見出しと概説をつけ、階層構造(アウトライン)とする。
・むりやりどこかのグループに入れようとせず、はみだしたものは大グループに入れればよい。

1-3)大グループをつくり、1行見出しと概説をつける
・関係の近い中グループを集めて大グループをつくり、1行見出しと概説をつけ、階層構造(アウトライン)とする。
・ツールが許すなら、必要に応じてさらに階層を深くしてもいい。

1-4)整理
・大中小、上下、親子、部分集合などでグループ化し、階層構造で関係づけ再整理する。
・複数のグループに所属する情報素材や小グループがある場合には、リンクやコピーにより多重所属させる。
・このグループがどのようなメッセージを発しているかを見極め、特徴やアイデアなどの気づきなどを追記する。自分の意見には末尾に(自)などのタグを付ける
・アイデア、参考書籍、用語、未分類、宿題、雑記、その他、バックアップ、ゴミ箱などの分類をつくっておく。最初の書き出しを「参考書籍」や「雑記」とし、編集を加える際には「バックアップ」にコピーを残し、いらなくなったページは「ゴミ箱」に保管しおくなど運用を工夫する。

2)新たに発生した関係に気づき、再編集

 1)で分類・階層化したグループを横断的に、俯瞰的に眺めることにより再編集する。
 ・新たな関係に気づく
 ・新たな発想を思いつく
  ⇒1行見出しだけでもいいので書き出して、1)のグループに編成する。
  ⇒自分の発想、意見には「1行見出し」や「内容」記述の末尾に(自)などのタグをつけて区別する。
  ⇒見いだした「新たな関係」や「新たな発想」が新たな構造を生み出す原動力となる。1)で無理やり収束させようとせず、相互作用を働かせ関係を動的に編集する。

3)定期的なみなおし

・書き込んだ内容を1週間、1か月程度でもう一度見返してみると、すでに他人の意見になっていたり、つまらない内容だったということもある。何を意味しているのか、なぜかを問い直し、内容を修正し、「ゴミ箱」などを含め分類の見直しをする。

4)俯瞰する

 ある程度グルーピング・分類・階層化を繰り返していると、全体や部分の傾向が見えてくる。その発する特徴・特性をとらえ、ページ間の関係、ページ内の情報素材やグループの関係を俯瞰し、類似、類推、連想、新たな課題・仮説設定を試みる。


 脳と外部のノートを連携し、情報を意味的な単位に文節し、親近感のあるものを発見してグルーピングして、構造性を殺さない「1行見出し」を選び、時空間的関係と相互作用から意味ネットワークを動的に構築して読み解き、その意味するところに気づき仮説を生み出す能力を総合的に活用して編集する。

 ここまでの編集プロセスを物語に喩えてみよう。読み解く対象は物語の「世界」を、ページは「各シーン」を、情報素材は「キャラクター」を、情報素材の関係は「キャラクター間のコミュニケーション」を、ページ内、ページの並びは「ストーリー」を、そして貴方が「語り手」となり物語を紡ぎだす。




参考書籍:
[1] ジェームズ・W・ヤング(1988), "アイデアのつくり方", 今井茂雄訳, 阪急コミュニケーションズ
[2] 川喜多二郎, "発想法 -- 創造性開発のために --", 中央公論新社, 1976(改)
[3] 梅棹忠夫(1969), "知的生産の技術", 岩波書店
[4] 外山滋比古(1986), "思考の整理学", 筑摩書房
[5] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫


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佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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