未来創造につながる「過去」からの連鎖:ダイジェスト
『フューチャー・リテラシー -- エントロピーに抗う相互作用の歴史からヒトの未来を読み解く --』という書籍執筆のための記事の
『前編:「相互作用」と「コミュニケーション」の歴史
一章 【範・縁】:「ミクロ・マクロ・ネットワーク」138億年』
のダイジェスト
「未来」を読み解くために、なぜ過去の歴史を読み解く必要があるのだろう。
1)「未来」は「過去」からの流れの上にある
未来を読み解くときには現在の注目する事象と変化があり、それが起きた要因は過去に、そしてそれが未来へとつながる。可能性の未来を読み解くには、それにつながる過去からの道筋を読み解くことが近道となる。

2)ネットワークの基本的なパターンをつかむ
物理は化学の、化学は生命の、生命は社会のネットワークを構築してプラットフォームとなり、プラットフォームの上に新たなネットワークを構築する傾向がある。
近年のインターネットも、それが普及する段階でWebページのネットワークが構築され、その上にSNSのネットワークが、さら暗号通貨やメタバースのネットワークが構築されようとている。

そうしたネットワークの構築には特定のパターンがあり、それを活用することが未来を読み解く近道となる。
本書では、このネットワークのパターンを「ミクロ・マクロ・ネットワーク」としてモデル化し、チェック項目として活用できるようにする。
3)メタファーとして使う
よく似たパターンが繰り返されるので過去の事象を「メタファー(隠喩、喩え)」として活用すると、突破口となるアイデアが浮かびやすくなる。

それでは、ヒトにいたる過去から現在をふりかえってみよう。
過去を振り返るときは環境の変化と相互作用に着目して、なぜこのときに起こる必要があるのかという視点で統合的にとらえることが肝心だ。
そして、相互作用(コミュニケーション)によるネットワークの構築と、それをベースとするあらたなネットワークの構築の繰り返しに注目する。
1.1 「宇宙」と「地球」の形成
「宇宙」と「地球」のネットワーク形成と相互作用は、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」の基本的な特性を理解するのに役立つ。

宇宙創造における原子ネットワークの複雑化の繰り返しにより、周期表の元素が徐々につくられていく様子を概観しよう。
宇宙の歴史は、より軽い元素の相互作用による原子ネットワークへの記憶と、元素の集団がつくる圧力の変化、元素の創造の繰り返しとして描かれる。
●宇宙のネットワーク
・4つの相互作用の均衡が宇宙をつくる
・初めての元素の作り方
・鉄までの元素の作り方
・恒星の生と死の繰り返しのなかでつくられた豊富な元素
さまざまな元素が出そろうタイミングと場所で誕生した地球は、分子ネットワークの実験場となった。最初に岩石が集まり次に水が加わると、分子の相互作用が活性化して複雑な分子ネットワークの形成が加速する。
やがて高分子化合物が誕生すると、地球をより複雑なネットワーク循環システムへと変えていく。
●地球のネットワーク
・元素に富んだ岩石惑星「地球」誕生(45億6000万年前)
・分子生成の連鎖が、循環する地球システムをつった
1.2 「生命」、「脳」、「ヒト」
原初の異なる単細胞生物の集団が外部環境の変化に適応するためにつくった電子の市場が、神経ネットワークの発端となる。

脳の歴史を読み解くことは、未来に向けたテクノロジーと脳の共進化のロードマップを読み解くことにつながる。
単細胞のネットワークが絡み合って、多細胞の、臓器のネットワークを構築する。輝く大陸棚における軍拡競争がセンサーと神経回路ネットワークの共振化を加速して、環境変化に柔軟に適応する神経ネットワーク=脳を誕生させる。
●脳誕生への道
・微生物のコミュニティ
・メッセージ物質の相互作用ネットワークがヒトの身体をつくる
・生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか
★五感と脳の共進化
・コミュニケーションするサルへの脳進化

ヒトと文化、集団規模とコミュニケーション手段は相互に影響し合い、その複合的な共進化のサイクルがヒトを世界中に拡散し、さまざまな文明を誕生させる。
●文化との共進化への道
・二足歩行という無謀な選択
・残念な進化と脳の発達
・脳と道具の共進化
★集団、文化、ヒトの共進化
1.3 激動の波に適応する「社会・経済」

なぜ、産業革命があのタイミングで、イギリスで起こったのか?」という問いは、今起ころうとしている産業革命読み解くために役に立つ。
●国家の形成と産業革命
・1万年前になぜ農耕民が誕生したのか
・国家の形成に向けた、専門分業と集落間の生存競争
・古代都市を循環させる貨幣情報ネットワーク
★産業革命はなぜ18世紀にイギリスで始まったのか
★資本主義の閉塞が、新しい産業革命に向けたヒントとなる
●交通・通信インフラとグローバル交易の共進化
・前編:古代~産業革命前
・後編:産業革命~現代
・経済危機に適応する資本主義社会
1.4 ヒトと共進化する「メディアとネットワーク」

1972年、Alan Kay, A Personal Computer for Children of All Ages [picture of two kids sitting in the grass with Dynabooks] ©Alan Kay
★「声の言葉」から「書く言葉」「活版印刷」以降に起きた変化は、「文字を読まない」時代に何が起きるかのヒントとなる。
●「言葉」が変わると考え方も変わるということ
★考えるってどういうこと?
・「コミュニケーション」とともに進化する「言葉」
・言葉使いとともに成長する「意識」
●社会と思考を激変させた「文字」
・伝搬と記憶をアウトソースする文字
・「文字」が古代社会を構築した
●研究は「文字」を書くことによってのみ成立する
★「声の言葉」と「書く言葉」、哲学と数学の誕生
★「書く言葉」で得たこと、失ったこと
★活版印刷と近代的思考法の確立
★「正確な計算を行う機会」の時代に「知的生産のための道具」を生み出した人々の歴史は、未来の常識を生み出す先人たちの歩みだ。
●正確な計算を行う機械
・苦悩の歯車コンピュータ
・エジソンの光がコンピュータとヒトの未来を灯す
●知的生産のための道具
・記憶の拡張装置Memex(メメックス)
★ヒトとコンピュータの共生
・MacとHyperCardが描いた小世界
○【閑話】:ヒトと道具の共生って?メディア論おさらい
オンラインRPGにおけるヒトのふるまいは、未来のメタバース世界でのヒトのあり方のヒントとなる
●ヒトを魅了するゲームという仮想世界
・ロールプレイングゲームという仮想世界
・オンラインRPGという自由物語世界(1997年)