生理心理学:脳の仕組みの入門書

 本書の扱う範囲が広いので、ある分野においての基礎理解しを全体を俯瞰する、または書籍を探す手助けとなる羅針盤が欲しくなる。が、なかなかに見つけるのは難しい。高校の教科書では、用語の羅列でしかなく手助けとならず、一般向けの教養書は筆者の見解や、興味のある部分に偏っていることが多く、とりあえず全体を把握したいという用途には向かない。
 ミクロ・マクロ・ネットワークをとらえるにあたって、「脳」内の神経ネットワークは避けることができない。が、例にもえず、なかなかに難物だ。結局のところ何の準備もないままに、「脳の誕生[1]」、「脳の進化[2]」、エンドコンテンツの一つである「進化の以外な順序[3]」、「脳のはたらきのすべてがわかる本[4]」と逆順に格闘することになったりする。
 そんな時にたよりになるのが、放送大学だ。「生理心理学[5]」と聞くと、心理学よりかと思いきや、「脳の仕組み」「神経細胞における信号伝達」「外界の認識」「記憶、学習、情動」と非常に幅広く神経ネットワークの概要を把握することができる。心理学といえど、生体の構造や化学的なイオンのやりとりなど、各分野横断的な視点を避けて通ることはできないということなのだ。
 ヒトがインターネットを創る6億年以上の昔から、生体における神経回路のネットワークは重要な役割をになってきた。特に生物が捕食によりエネルギーを獲得する戦略をとるようになってからは、餌を探すためや、捕食されないために外界からの情報を判断し分析することが必要となり急激な進化をとげた。軸索小丘におけるアナログ-デジタル変換、髄鞘を絶縁体とした高速デジタル通信、活動電位を改めて生成する中継器を備えた高速ネットワーク網がはりめぐらされている。神経ネットワークだけに着目しても生物の進化の創造力は我々をはるかに超えていことがわかる。

岡田隆(2018), "生理心理学", 放送大学出版
  • 難易度:★★
  • おすすめ入門書:★★★★
  • ネットワーク参考書:★

参考文献:

[1] 大隈典子(2017), "脳の誕生 -- 発生・発達・進化の謎を解く", ちくま書房

[2] ジョン・C・エックルス(1990), "脳の進化", 伊藤正男訳, 東京大学出版会

 J.C.Eccles(1989), "Evolution of Brain: Creation of the Self", Routledge, London 

[3] アントニオ・ダマシオ(2019), "進化の意外な順序", 高橋洋訳, 白揚社

 Antonio Damasio(2018), "The Strange Order of Things: Life, Feeling, and the Making of Cultures", Pantheon

[4] ジョン・J・レイティ(2002), "脳のはたらきのすべてがわかる本", 堀千恵子訳, 角川書店

 Johon H.Ratey Md(2001), "A User's Guide to the Brain", Vintage

[5] 岡田隆(2018), "生理心理学", 放送大学出版




プロフィール

佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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