道具との共進化への道(4):「脳」と「道具」の共進化
生命は環境変化に対処し、世代を超えて記憶する手段として「遺伝子」と「進化」の仕組みを構築した。そして、ヒトは環境変化に対処し、世代を超えて記憶する手段として「道具」と「道具とヒトの共進化」の仕組みを構築した。
●「脳」と「道具」の共進化
「好奇心」が新たな環境への進出を促し、変化する環境に「道具」を使って適応する。「道具」は環境変化に適応する手段としてだけでなく、世代を超えて受け継ぐ記憶手段でもある。「道具」の利用方法は、「道具」を介して大人から子供に受け継がれ、また「道具」を利用するものによって「再構築」「改良」される。
「道具」はヒトの能力を拡張するとともに、エネルギーを効率的に利用するために「身体」の進化を促す。特に、「道具」をより良く活用し、新しい「道具」を生み出す「脳」の仕組みを獲得したものが、新しい地域で豊富な栄養を獲得して生存する。「脳」は生存のために有益な、内外情報の統合・翻訳・編集・フィードバックのための「感情」、「知性と論理」、「愛情」、「創造と美意識」「記憶」を徐々に獲得し、「道具」を使って得たエネルギーがそれを支える。
「脳」が獲得した能力は、新たな「好奇心」を生み行動領域を拡大し、新たな「道具」を生み出す。「愛情」・「感情」がそれを欲し、「創造と美意識」がそれを発想し、「知性と論理」がそれを構築し、それの利用方法を「記憶」する。「道具」と「脳」の共進化がやがて家族への愛情を深め、集団での狩りを効率化し、ついには宗教や音楽や会話によって団結力することとなる。
参考書籍:
[1] アントニオ・ダマシオ(2019), "進化の意外な順序", 高橋洋訳, 白揚社