知的生産のための道具(2):ヒトとコンピュータの共生

 ディスプレイとキーボードをつないで「コンピュータと対話する」ことが笑われる時代に「ヒトとコンピュータの共生」の実現に向けたチャレンジはじまる。


●ヒトとコンピュータの共生[1]


 ソ連のスプートニック号打ち上げ成功(1957年)を契機に、1958年NASA(アメリカ航空宇宙局)とARPA(アメリカ国防高等研究計画局)が設立され、アメリカの科学技術を大きく加速する。ARPAには、リックライダー(1962年)、エンゲルバート(1962年)、アランケイ(1966年)らが集結し、タイムシェアリング、グラフィックス、人工知能サイバネティックスオペレーティング・システム、プログラム言語、インターネットを生み出していく。
 
 ・リックライダー「ヒト・チームとコンピュータのリアルタイムな共生」を語り(1960年)[2-2]
 ・コージブスキーウォーフ「言語と相互に影響し合うヒトの思考」の提起に続き、マクルーハン「ヒトの五感と脳内の相互作用に与えるメディアの影響」を(1962年)[3]エンゲルバート「ヒトの知能・思考と相互作用・共進化する人間知性増強(オーグメンテーション)のためのコンピュータ環境」を思索する(1962年)[2-3]
 ・サザーランドがライトペンで操作するグラフィカル・ユーザ・インタフェースオブジェクト指向プログラミング、アイデア・オーサリング・システムを搭載し、コンピュータとの試行錯誤対話の先駆けとなるSketchpadを創り(1963)、
 ・エンゲルバートが「グループ全体知性の増強」のためのマシンNLS(oN-Line System)で、マルチウィンドウ、ビットマップ画面、ハイパーメディア、画面共有会議、キーボードとマウスで自在に情報空間を駆け巡るメディアショーで聴衆を魅了し(1968年)、
 ・パパートが子供たちが自発的に問題を考えて解くためのプログラム言語:Logo(1867年)で動くメタファー=タートル(小型ロボットとカーソル)を用いた教育実験を行う。
 
 アラン・ケイは、Sketchpadの開発チームで学び、先駆者たちの思想を吸収し、パパートの子供のためのプログラム教育に衝撃を受けて、鉛筆のように誰でもすぐに使える万能シミュレータ=メタメディアの開発を構想アルダスの小型本(1494年)のように子供でも気軽に持ち運べるダイナミックな本=コンピュータ作品の執筆環境としてダイナブックを考案する[5-1]。ゼロックスのパロアルト研究所で、その思想をAltoに受け継ぎ、オーバーラップ型ウィンドウ、高解像ビットマップ・ディスプレイデスクトップ・メタファーをマウスとキーボードで操作し、オブジェクト指向プログラミング環境SmallTalkによりコンピュータ・リテラシーが何であるかを示した(1973年)[5]
 
    ジミーとベスが相互接続したDynabookで遊ぶ様子
    1972年、Alan Kay, A Personal Computer for Children of All Ages [picture of two kids sitting in the grass with Dynabooks] ©Alan Kay

 そして、Altoを見学した2人のアーティスト、スティーブン・ジョブズビル・アトキンソンらの手により、Lisaをへて、Macintoshとして結実し、ついに「知的生産のための道具」が世に普及することとなる。

年表:

参考書籍:
[1] ハワード・ラインゴールド(2006), "新・思考のための道具 :知性を拡張するためのテクノロジー --その歴史と未来", 栗田昭平監修, 青木真美訳, パーソナルメディア
    - Howard Rheingole(2000), "Tools fot Thought revised edition :The History and Future of Mind-Expanding Technology", MIT Press
[2] 西垣通(1997), "思想としてのパソコン", NTT出版
 [2-2] J・C・リックライダー(1960), "ヒトとコンピュータの共生(Man-Computer Symbiosis)", 西垣通訳, NTT出版
  原文:Man-Computer Symbiosis (mit.edu)
 [2-3] ダグラス・C・エンゲルバート(1962), "ヒトの知能を補強増大させるための概念フレームワーク(A Conceptual Framework For The Augmentation Of Man's Intellect)", 西垣通訳, NTT出版
  原文:https://www.dougengelbart.org/content/view/382/
[3] M.マクルーハン(1986), "グーテンベルクの銀河系 :哲学人間の形成", 森常治訳, みすず書房
    - Marshall McLuhan(1962), "The Gutenberg Galaxy: The Making of Typographic Man", University of Toronto Press
[4] シーモア・パパート(1982), "マインドストーム :子供, コンピュータ, そして強力なアイデア", 奥村貴世子, 未来社
    - Seymour Papert(1980), "Mindstorms :Children, Computers, and Powerfull Ideas", Basic Books, Inc
[5] アラン・ケイ(1992), "アラン・ケイ", 浜野保樹監修, 鶴岡雄二訳, アスキー出版局
 [5-1] アラン・ケイ, アデル・ゴールドバーグ(1977), "パーソナル・ダイナミック・メディア", 浜野保樹監修, 鶴岡雄二訳, アスキー出版局
  原文:26-kay-4web (newmediareader.com)

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, アラン・ケイ, ネットワーク, 未来, Alto, エンゲルバート, Sketchpad, パーソナルコンピュータ

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Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
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