気づきのあるネットワーク・サービス:ビジネスの具体化

 コンセプトもとに、収益性のあるビジネスを見定め、商品を具体化する。


コンセプト:
 アクセス数や購買数で定義した「距離」をもとに、「友人候補」「お勧めの商品(Webページ)」「お勧めの人」を紹介するネットワークサービス。

●Step3: ビジネスの具体化


●ビジネスモデルの作成


 開発・現場への営業期間を早急に収益化できるプランが必要であるため、ネット通販でのレコメンデーション(商品紹介)エンジンを軸に、その他のビジネスに展開するビジネスシナリオを構築し、投資にみあう収益があげられるかを検証する。
(実際には投資計画としてマーケティング分析、5年間の投資対効果の算出、保守運用計画、撤退条件などの稟議、予算の獲得を行うが割愛)

1)ターゲティングCM: 顧客を識別して興味のある広告を表示するエンジンとして販売
 ※現代のGoogleの検索広告(AddSense)や街角広告(ディジタル・サイネージ)と同様
2)マーケティング分析ツール: 顧客の興味を分析するためのツールとして販売
3)ビジネス支援: 販促ツールなど
・商品紹介: レコメンデーション・エンジンとして販売、
 ※ネット通販だけでなくスーパー、CDショップ、レンタルショップなど実店舗も視野に、顧客に合わせた商品を提案する。
・検索エンジン補助ツール: 
 - Webページを閲覧している時に関連ページを紹介
 - 検索のキーワードの代わりに複数のWebページを指定して、関連ページを絞り込み
・友人紹介: (SNSが普及していなかった時代だったので見合わせ)

Webレコメンドイメージ
               おすすめ商品の紹介イメージ[2]


●商用化:

〇商用化エンジン開発:


・スペック
 - 100万人、100万商品、1000万履歴で複数アクセスに対してリアルタイムにレスポンス
・超高速ソートアルゴリズム
 前述のスペックを満足するため、2回のループで距離ソーティングできるアルゴリズムを搭載
・高アクセス・ノイズカット
 アクセス履歴のべき乗特性を利用して、人気の商品を自動抽出してノイズとしてカット
 ※「アナ雪」のように皆が購入する商品はあえて紹介する必要がない、今でいうロングテール商品を提案できる。

○反対意見:


 第三者に意見をもらい、ビジネス計画に問題がないかを検証する。これまでにないビジネスを展開する際には反対がつきものでありここで挫けてしまうのは禁物だが、真摯に問題点と向き合うチャンスでもある。

・アクセス履歴を利用するのはプライバシー侵害であるためビジネス化するのは問題がある
 ⇒現代: やりすぎて問題になっているが、当時よりはるかに敷居は低い。人の習慣は変えられるものなので最初からくじけてはいけない。
・サイトの最高アクセス数が1万人であるのに100万人を想定するのはオーバースペック
 ⇒現代: ネット通販は数千万人を超えている。当時で100万はあり得ない数字だったが、1億人の未来を視野に入れていたので、そのギャップに苦労した。

○派生サービス:


 ビジネスとして具体化していくときには、ビジネスモデルや機能をぐーっと絞り込んでいくことになる。一方で、それが普及するような未来には別の展開が見えてくる。

■行動履歴統合ベース・サービスの提供コンセプト(1997年):
・インターネットを多くの人が普通に利用するようになった将来、ネットとリアルを横断した大量の「人の行動履歴」を取得可能という未曽有の世界が構築される。
・行動履歴を活用するビジネスは、プライバシー問題だけでなく一部の企業が独占して全世界に展開される危険がある
行動履歴データをネット/リアルを横断で皆が活用できるよう、安全安心に共有/取引できる場として、公共性をもった「行動履歴統合ベース」の構築が急務
・「行動履歴」というと積分的な分析に目がいきがちだが、瞬時にデータを取得できる将来には「微分行動」の把握と次の行動の予測という視点も必要となってくる(1999年)。

全国行動履歴統合ベース


 全国行動履歴統合ベース・サービスのイメージ


〇サービスの試行運用:


 1998年にポータルサイト上でおこなった試行運用サービス「MagicPocket」は、キーワードで検索した結果から「おすすめページのリスト」を表示する。1年間の試行運用を終えて終了。
 複数のページを選んで絞り込んだり、紹介されたページからさらに「おすすめページリスト」を表示して、どんどん関連ページをたどったりできるので、キーワード検索にはないワクワク体験ができる。特に3つ興味のあるものを選んで、それらを見ている人たちが何を見ているのかという散策方法が秀逸だということがわかる。それなりにリピータもいたのだが継続はされなかった。Googleは、別のアプローチで動的に変化するWebページへのアクセスをもとに、検索エンジンを実現している。

〇商用化(顛末):


 通販サイトはもちろんコンビニなどの実店舗への営業も含めて全国を回り、ICタグを使ってスーパのカゴに商品を入れたとたんに他の商品をお薦めするデモがTVKで紹介されたが、通販サイトなど数本しか売れなかった。

●現代の類似サービス:


・SNSの友達紹介
・amazonやNetflixの「よく一緒に購入されている商品」、購買履歴からの「おすすめ商品」
・GAFA、Netflixはもちろん、ホームコントロール、スマートカー、スマートシティ、ゲーム、バーチャル、通信などあらゆる分野のビジネスが行動履歴を重要な資本財として奪い合いしのぎを削っている。
・周囲の人の会話に気づくという意味では、FacebookやLineグループなどのSNSでの他人の会話もある。

●まとめ:


 AwarenessNetは、知り合いどうしがコミュニケーションするという、電話網の偏在したコミュニケーションを疑問視し、興味の近いものどうしが知り合うというコミュニケーションの拡大を予見することろから出発した。インターネットは人々のコミュニケーションを促すだけでなく、情報や商品とのつながりも拡大すると考えたところから発想はさらに広がる。

 購買も含むアクセス情報空間はN次元に人の興味がからみあう魅惑的な宇宙を形成する。AwarenessNetは、人と情報、人と商品、人と人をミクロな単位とし、相互コミュニケーションを「距離」という値に置換する。その時々の人の興味により「距離」は変化し、動的な「距離」が形成するN次元な「距離」に置換されたコミュニケーションが、マクロな「興味のコミュニケーション集団」を形成し、情報として記憶される。レコメンデーション(興味の紹介)は、興味の視点と、関連情報の提示によるフィードバック・ループを形成するきっかけとなる。「ヒト」がその時々の興味に合わせて複数の「人」「情報」「商品」に注目(指定)すると、そのコミュニケーション関係が変化し、「興味のコミュニケーション集団」の形を変え、「興味の情報空間」が動的に変化する

 AwarenessNetは、興味のコミュニケーションを疑似写像する場を提供することにより、観察可能な「動的に変化する市場(場)」という人類史上初めての領域に踏み込んだとも言えるだろう。商品としてのとしてのAwarenessNetは広大な構想の暫定解だった。後に示す「行動履歴プラットフォーム」「情報を3次元に写像する:InfoLead」とセットとらえると面白い未来が見えてくる。


気づきのあるネットワーク・サービス:アイデアの整理
気づきのあるネットワーク・サービス:コンセプトの具体化
気づきのあるネットワーク・サービス:ビジネスの具体化


参考文献:
[1] 市川裕介(2000), "~ECサイトのパーソナライズ化とサービスレベルの向上でOne-to-Oneマーケティングを実現~ :純国産のパーソナライズエンジンAwarenessNet", ITmediaエンタープライズ, 2000年12月19日
~ECサイトのパーソナライズ化とサービスレベルの向上で   One-to-Oneマーケティングを実現!~:【特集】One-to-Oneマーケティングツール(3/5 ページ) - ITmedia エンタープライズ[2] 高木浩則, 市川裕介, 木原洋一(2003), "書籍ECサイトにおけるレコメンデーションシステム", NTT技術ジャーナル, 2003.11, p30-33
jn200311030.pdf (ntt.co.jp)

tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, ミクロ・マクロ・ネットワーク, 未来, 社会, ネットワーク, 技術, 科学

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佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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