動的に適応する仮想コンピュータ(1990年)/クラウド

第三章 1990年から観た未来

  本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。

3.2 アイデアとプロトタイプで描いたもの

 本節では、商品化にいたらなかったアイデアやプロトタイプについて、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルによる「コンセプト編集」に焦点をあてて例示する。

動的に適応する仮想コンピュータ(1990年)
社会変化に適応するバーチャル・オフィス(1992年)

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●背景:


  仮想マシン・スーパーバイザーのデファクトであるVMware社が発足する8年前、国内のインターネット・サービスが開始される2年前。オフィスで利用されているコンピュータが、ネットワークに繋がっていないスタンドアローンのデスクトップPCが主流だった1990年10月、バブルが最後の雄たけびをあげた
 研究所では、充分に高速化されたネットワークでのキラー・サービスを模索していた。メインで研究されていたのはビデオオンデマンド(動画配信)やテレビ会議だったが、本当にそれだけなのか?例えば、コンピュータがあの小さい箱におさまったままでいるとは考え難い、それではどのように進化していくのだろうか。

●お題:


 「ネットワークが高速化した未来のオフィス・コンピュータ」についてアイデア企画を考える
  ⇒到達フェーズ: ジャスト・アイデア

 ブラックマンデー、バブル最後の株価の乱高下、これからのオフィスは環境変化に動的に適応しなければならないと直感した。
 とりあえずコンピュータを分散ネットワークにつながれるリソース(メモリ、ディスク、CPU)としてとらえなおしてみる。コンピュータ・ボード上のCPU、メモリ、ストレージをつなぐBUSをネットワークに置き換えることをイメージする。

●コンセプト編集


○アイデアを言葉で表現する


 ・ネーム(呼称): コネクティブ・コンピュータ
 ・クレーム(短文): 人員や用途、社会変化に柔軟に適応できる巨大な仮想コンピュータネットワーク

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する


■構成要素: 
【技術・社会背景(将来)】
 社会: 急激な社会・経済変化に動的に適応するオフィス
 技術(将来): パソコンボード並の速度のネットワーク接続、ロケーションを横断する社内ローカル・ネットワーク構築、コンピュータの高速化

【環境変化】
 社員の増減、リソースの追加(解放)、一時的な演算の必要(経済予測など)

【ミクロなコミュニケーション】
 実コンピュータのリソース(メモリ、ディスク、CPU)を連携して、リソース・プールを形成するためのコミュニケーション

【ミクロなネットワーク】
 m台の実コンピュータが相互につながった実ネットワーク

【メタ・ネットワーク】
 リソース・プールをもとに編集再構築されたn台の仮想コンピュータ間の仮想ネットワーク

■ネットワークの特性:
【可塑性・学習】
  人員変化、などによりリソース・プールからの最大割当量を配分して設定

【フィードバック・ループ、動的適応】
 仮想コンピュータの利用状況、実リソースの残量を常に把握し、刻刻と変化する状況に最適化してリソース・プールから仮想コンピュータにリソースを割り当て

【多次元性・多重所属】
 実リソースは、仮想コンピュータへの多重所属させ動的に割り当て

【恒常性・保守性】
 一部の実コンピュータが故障しても、仮想コンピュータは問題なく動作する

●サービス・イメージ:


 実コンピュータをネットワークで接続し、ミドルウェアでリソース(CPU、メモリ、ストレージ)をプール=リソース・プールして、必要に応じてリソースを割り付ける仮想コンピュータ&仮想ネットワーク。次のようなメリットを提供するようミドルウェアを構築する。
 ・リソース利用の効率化⇒低コスト化
  リソース利用の最大値を決めて、利用状況によりリソースを割り当て
 ・リソースの追加が容易
  ⇒必要な追加リソースを搭載した実コンピュータを適当なタイミングで追加
  ⇒人員数の変化に柔軟に対応
 ・急な演算の必要、過負荷へのリソース割り当て
 ・実コンピュータが故障しても、仮想コンピュータの利用に影響がない

※ミドルウェア: 
 仮想コンピュータへの実リソースの割り当てを動的行う中間層。現代のハイパーバイザーに相当

仮想コンピュータ

            仮想コンピュータのイメージ

●現代の類似サービス:


 仮想コンピュータを実現・管理するハイパーバイザー(VMwareなど)が利用される。現代では、主にノートPCにドキュメントを置かないなどのセキュリティ対策、災害対策のための地域分散配置、クラウドで活用されている。


 普段から、技術、社会・経済、道具の変化に注力していると、ふとしたタイミングで線でつながり立体化して次の変化の方向性が見える瞬間がある。今回はリーマンショック、バブル末期、オフィスにおけるパソコン利用、ネットワークの高速化がそれだった。



tag : フューチャーリテラシ, 複雑系, メディア, 未来, 発想法, 仮想コンピュータ

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佐藤基

Author:佐藤基
『フューチャー・リテラシー -- 過去・現在・未来、複雑系の未来を読み解く』
を執筆中。

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